第9戦ヨーロッパGP「独英対決、ドイツに軍配」【F1 2010 続報】

2010.06.28 自動車ニュース
セバスチャン・ベッテル(中央)が2カ月ぶりにポディウムの頂点に立ち、今季2勝目をマーク。ルイス・ハミルトン(左)はドライブスルーペナルティを受けながらも順位を落とすことなく2位フィニッシュ、ジェンソン・バトン(右)はレース後リザルトに5秒加算されるが十分なマージンがあり3位をキープできた。(写真=Red Bull Racing)
第9戦ヨーロッパGP「独英対決、ドイツに軍配」【F1 2010 速報】

【F1 2010 続報】第9戦ヨーロッパGP「独英対決、ドイツに軍配」

2010年6月27日、スペインのバレンシア市街地コースで行われたF1世界選手権第9戦ヨーロッパGP。かつてヨットのアメリカズカップで使われた海岸沿いのストリートコースは、過去2戦とも追い抜き、アクシデントなどアクションの少ないレースが展開されたが、今年はマーク・ウェバーの大クラッシュと、それにともなうセーフティカー導入により様相を大きく変えることとなった。

過去2年間、バレンシアでまったくいいところのなかったレッドブル。過去2戦、マクラーレンの後塵(こうじん)を拝してきたレッドブル。ここから本格採用の「Fダクト」のおかげもあって、ベッテル(写真)のドライブでチームは今季8回目のポールポジションを獲得し、そしてバレンシアにおけるチーム初優勝(&初ポイント)を手に入れた。マーク・ウェバーの大クラッシュがなければ、今年3回目の1-2も夢ではなかった。(写真=Red Bull Racing)
過去2年間、バレンシアでまったくいいところのなかったレッドブル。過去2戦、マクラーレンの後塵(こうじん)を拝してきたレッドブル。ここから本格採用の「Fダクト」のおかげもあって、ベッテル(写真)のドライブでチームは今季8回目のポールポジションを獲得し、そしてバレンシアにおけるチーム初優勝(&初ポイント)を手に入れた。マーク・ウェバーの大クラッシュがなければ、今年3回目の1-2も夢ではなかった。(写真=Red Bull Racing)
バレンシアはもともとマクラーレン向きのコースと言われていたが、マシンアップデートを次戦に持ち越したせいか、3戦ぶりにレッドブルに最速の座を奪われたマクラーレン。セーフティカーを追い越したことによるハミルトン(写真)へのドライブスルーペナルティは、その発令の遅れと小林可夢偉の健闘により有名無実となり、2位のままフィニッシュすることに成功。いっぽうセーフティカーのタイミングが絶妙だったジェンソン・バトンは、終盤小林がピットに入ったことで3位に上がりゴール。レース後のペナルティも順位に影響せず、双方運も味方した格好となった。(写真=McLaren)
バレンシアはもともとマクラーレン向きのコースと言われていたが、マシンアップデートを次戦に持ち越したせいか、3戦ぶりにレッドブルに最速の座を奪われたマクラーレン。セーフティカーを追い越したことによるハミルトン(写真)へのドライブスルーペナルティは、その発令の遅れと小林可夢偉の健闘により有名無実となり、2位のままフィニッシュすることに成功。いっぽうセーフティカーのタイミングが絶妙だったジェンソン・バトンは、終盤小林がピットに入ったことで3位に上がりゴール。レース後のペナルティも順位に影響せず、双方運も味方した格好となった。(写真=McLaren)

■マシンアップデート、続々と

今季の全戦ポールポジション獲得記録を前戦カナダでマクラーレンにより阻止されたレッドブルは、今回、大幅なマシンアップデートを実施してきたチームのひとつだった。

シーズン当初にマクラーレンが先鞭(せんべん)をつけた「Fダクト」(前面から空気を取り入れマシン内部を通しリアウィングに当てることで直線でのアドバンテージを得る仕組み)を遅ればせながら本格採用し、セバスチャン・ベッテルは第4戦中国GP以来のポールポジション奪取に成功。マーク・ウェバーもフロントローにつけ、ここ2戦マクラーレンにやられっぱなしだったレッドブルが復活の狼煙(のろし)をあげた。

フェラーリも「ブロウン・ディフューザー」なる新機軸をトライした。こちらはレッドブルが先んじて取り入れたもので、排気されたガスの流れをマシン後部のディフューザーで利用しダウンフォースを得ようというアイデア。フェルナンド・アロンソは4番グリッド、フェリッペ・マッサは5番グリッドに並び、開幕戦以来ごぶさたとなっている勝利に向けて準備を整えていた。

マクラーレンは、ルイス・ハミルトンが予選3位、ジェンソン・バトンは同7位。トルコ、カナダと過去2戦のペースセッターは、ライバルより1戦遅い次の母国イギリスGPでアップデートを予定しており、ややギャップを広げられた感があった。

各チーム、厳しいテスト規制のなかさまざまなパーツや機構を持ち込んできたバレンシア。2008年にはじまったここでのヨーロッパGPは、アクシデントらしいものは過去に1度だけでセーフティカーも未経験、ストップ/ゴーのコースではオーバーテイクも少なく、“行列のレース”とまで言われるほど動きに乏しいのが特徴だった。

実際、今年もドライバーは追い抜きに難儀していたが、地中海の美しい景色以外おもしろみの少なかったコースで、ひとつの大クラッシュを機にドラマが次々と生まれだした。
スタートで大きく順位を落としたウェバーのレッドブルが、追い上げ中に前を走るヘイキ・コバライネンのロータスに激突、ウェバーのマシンは宙を舞い上下逆さまとなりながら着地、弾みで上下は戻ったがそのまま勢いよく滑ってタイヤウォールにしたたかにヒットして止まった。

幸いドライバーは無傷だったが、この大クラッシュ自体ではなく、その後に導入されたセーフティカーと、それにともなうスチュワードの判断が各人の明暗を分けることとなった。

「ブロウン・ディフューザー」を投入したフェラーリは、予選でフェルナンド・アロンソ4位、フェリッペ・マッサ5位と好位置につけたが、セーフティカー導入のタイミングが悪くアロンソは10位、マッサは17位までドロップ。結果8位と11位というリザルトしか残せなかった。目の前で違反をおかしながらほぼ無傷に終わったライバルのハミルトンに納得いかず、レーススチュワードの決断の遅さに苦言を呈した。(写真=Ferrari)
「ブロウン・ディフューザー」を投入したフェラーリは、予選でフェルナンド・アロンソ4位、フェリッペ・マッサ5位と好位置につけたが、セーフティカー導入のタイミングが悪くアロンソは10位、マッサは17位までドロップ。結果8位と11位というリザルトしか残せなかった。目の前で違反をおかしながらほぼ無傷に終わったライバルのハミルトンに納得いかず、レーススチュワードの決断の遅さに苦言を呈した。(写真=Ferrari)
このレースでもっとも健闘したのは小林可夢偉(右)だろう。予選ではQ1で敗退、18番グリッドと下位に沈んだが、レースではセーフティカー中にピットインしないという奇策に打って出て、残り4周まで3位を守り続けた。その間、背後にバトンを従えて落ち着きある走りを披露し、さらに唯一のピットイン後には、フレッシュなタイヤを武器に残り2周でアロンソ、ブエミを抜き7位フィニッシュ。チーム代表のペーター・ザウバー(左)らから称賛の言葉を浴びせられた。(写真=Sauber)
このレースでもっとも健闘したのは小林可夢偉(右)だろう。予選ではQ1で敗退、18番グリッドと下位に沈んだが、レースではセーフティカー中にピットインしないという奇策に打って出て、残り4周まで3位を守り続けた。その間、背後にバトンを従えて落ち着きある走りを披露し、さらに唯一のピットイン後には、フレッシュなタイヤを武器に残り2周でアロンソ、ブエミを抜き7位フィニッシュ。チーム代表のペーター・ザウバー(左)らから称賛の言葉を浴びせられた。(写真=Sauber)

■レースを決めたセーフティカー

快晴の決勝日。スタートでトップを守ったベッテルの背後にハミルトンが迫った。両車は一瞬接触、レッドブルは挙動をやや乱し、マクラーレンはフロントウィングを破損したが、それ以上の大事にはならずに済んだ。
一大事に見舞われたのは予選2位のウェバーだった。シグナルが変わると次々と抜かれ、1周終えるころには9位まで後退してしまった。

オープニングラップのトップ10は、1位ベッテル、2位ハミルトン、3位アロンソ、4位マッサ、5位ロバート・クビサ、6位バトン、7位ルーベンス・バリケロ、8位ニコ・ヒュルケンベルグ、9位ウェバー、そして10位セバスチャン・ブエミ。
ウェバーは最悪の出だしから挽回しようと、7周目に早々にピットに入りタイヤを交換、後方から追い上げをはかろうとしていた9周目に、くだんの大クラッシュを起こした。

直後にバレンシア初のセーフティカー出動。これに乗じてピットに飛び込むマシンが続出するいっぽうで、4位マッサまでは既にピットロード入り口を過ぎており、絶好のタイミングを逸してしまった。

2位走行中のハミルトンは、セーフティカーがピットロードからコースに入ろうとするほんの一瞬にセーフティカーを追い抜いて先を急いだ。ベッテルはセーフティカー前にピット出口を通過していたため、この2台は徐行運転せずに翌周ピットインし、再スタート後もトップ2のポジションをキープできた。だがハミルトンのセーフティカー追い抜きは明らかな過失であり、ハミルトンはドライブスルーペナルティを受けることになる。ここで問題となったのが、再スタート後10周もたった時点でペナルティが発令されたことだった。

この10周で2位ハミルトンは後続に対し12秒という大きなマージンを築いてしまった。まだピットに入っていない3位の小林可夢偉がフタをしてくれたおかげで、ハミルトンはペナルティ後も2位で復帰できることができ、結果その順位のままゴールすることに“成功”した。

メルセデスにとっては最悪の週末。ペースがまったく上がらず予選ではニコ・ロズベルグ12位、ミハエル・シューマッハー(写真)15位とQ2どまり。スタートの混乱をうまく抜けたシューマッハーだったが、セーフティカーラン中にピット出口で集団通過を待たねばならず、以降はテストランをかねての走行となり15位完走。ロズベルグはブレーキに問題を抱え、地味に周回を重ね、レース後9人が5秒ペナルティを受けたことにより順位が繰り上がり10位1点を獲得した。(写真=Mercedes)
第9戦ヨーロッパGP「独英対決、ドイツに軍配」【F1 2010 速報】

■納得のいかないフェラーリ

おもしろくないのはフェラーリ勢だ。3位アロンソ、4位マッサは、ハミルトンがセーフティカーを追い越して視界から消えていくのを目の前で見ながら、自分たちはルールを守ってセーフティカー後方でスロー走行に徹した。翌周ピット作業を終えると、アロンソ10位、マッサ17位と優勝を諦めざるを得ない順位まで落ちてしまっていた。

結局アロンソは8位、マッサは11位というリザルトを残したが、違反しながら事実上何も失わなかったハミルトンは2位表彰台である。フェラーリにとってセーフティカー導入のタイミングが悪かったとはいえ、人為的にすら感じられるこの結果には納得がいかないのも理解できる。

レース後、アロンソは「アンフェアだ」とスチュワードを非難するコメントをもらし、フェラーリはペナルティ発令の遅さにセーフティカーにまつわるレギュレーションの改善を訴えた。

ゴールの後、セーフティカーラン中のスピード超過で9人ものドライバーが「リザルトに5秒加算」というペナルティを科せられた。9位でチェッカードフラッグをくぐっていたアロンソは順位をひとつあげたのだが、5秒加算という中途半端な処分では大きな順位変動は起こらなかった。

1958年モナコGPでデビューしたロータス。今年復活したチームは中身こそまったく新しくなったが、かつて天才コリン・チャップマンが興した名門の名は記念すべき500戦目を迎えた。バレンシアでは、予選でヤルノ・トゥルーリが19位と新興3チームのトップに立ったが、スタート時の接触で遅れ最後尾21位完走。ヘイキ・コバライネン(写真)は、出遅れたウェバーを抑えようとしたが追突されリタイア。記念レースでは別の意味でクローズアップされてしまった。(写真=Lotus)
第9戦ヨーロッパGP「独英対決、ドイツに軍配」【F1 2010 速報】

■ベッテル、タイトル争いに復帰

例年になく動的だったバレンシアでのレースは、ハミルトンへのペナルティも手伝って、ベッテルの復活劇として締めくくられた。
スタートでのハミルトンとの接触と、再スタート直前に挙動を乱した以外は危なげなく、4月のマレーシアGP以来となる2勝目を手に入れ、チャンピオンシップでも5位から3位に浮上。ポイントリーダーのハミルトンとは12点差という好位置につけた。

2010年前半、ベッテルは僚友ウェバーに勝てないという、かつてない状況に追い込まれていたが、この勝利によりタイトル争いに再び名乗りを上げた。

くしくも同日に行われたサッカーのワールドカップ決勝トーナメント、ドイツはイングランドに快勝し8強に駒を進めた。F1界のドイツ=ベッテルは、次なるラウンドでさらなる高みに立つことができるか? 敗れたイングランド(ハミルトン、バトン、マクラーレン)は、待望の新マシンでリベンジを果たせるか? そして今回じだんだを踏んだフェラーリは逆襲に転じることができるか?
次戦イギリスGPは7月11日だ。

(文=bg)

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