BMW、クルマと環境のシンポジウム開催

2010.06.16 自動車ニュース
2011年から日本の道でも実証実験が開始される、電気自動車「MINI E」。
BMW、環境シンポジウムを開催

未来のクルマ社会はこうなる! BMWが環境シンポジウムを開催

BMWジャパンは2010年6月16日、東京ビッグサイトで開催中の「BMW Mobility of the Future - Innovation Days in Japan 2010」において、「環境対応車普及による未来の社会」と題したシンポジウムを行った。

BMW AGの渉外担当グレン・シュミッド氏。「MINI E」の欧州における実証実験の報告や、今後のEVの展望について話した。
BMW、環境シンポジウムを開催
BMWは数年前まで、次世代パワートレインの有力候補として水素エンジンをプッシュしていたが、今ではその主役は、EVおよびハイブリッド車へと移っている印象を受けた。
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■法の力でEV普及を

約1時間半にわたるシンポジウムでは、電気自動車(EV)を軸に未来のクルマ社会について意見が交わされた。

シンポジウムの前半には、独BMWにて「MINI E」の開発に従事してきたグレン・シュミッド氏が「未来のモビリティ」をテーマに講演を行った。
BMWは、前日のプレスカンファレンスで、日本でも「MINI E」の実証実験を行うことを明らかにしているが、「マスコミの報道を見ていると、将来、EVが現在のエンジン車にとってかわり、また、数年後にはたくさんの人がEVに乗るという印象を持つ人も多いでしょう。もちろん、ほとんどの自動車がEVに変わるのは確実ですが、それがいつ実現するかというのは、意見が分かれるところです」とシュミッド氏は語る。同社としては、現在はエンジンを改良した従来型の自動車やハイブリッド車の普及段階にあり、近い将来には大都市圏でEVが、さらにその先には水素を燃料とした自動車が登場するとしている。つまり、この先しばらくはさまざまなタイプの自動車が混在し、「自動車の世界はもっと多様化する」というのが彼らの見方だ。

しかし、未来の自動車においてEVの役割が徐々に増していくのは確実であり、「EVをフル活用することでCO2排出を最低限にすることが必要」と述べる。そこで、シュミッド氏はEV普及のための仕掛けとして、CO2排出量を基準とした税制の導入を求めている。現にEUでは27カ国中16カ国がなんらかの形でCO2排出量を基準とした税制を採用しており、CO2排出の少ない自動車にメリットのある政策こそが、EVの普及を後押しするという意見だ。ただし、CO2排出量を算出するにあたり、走行中の排出量だけを見るか、あるいはエネルギーの生成段階までを含めて見るかにより、EVの評価は変わってくる。EV普及の立場からは、課税の基準とする数字は走行中の排出量とし、EVなら0kg/kmとすべきと主張する。

この日のパネルディスカッションに参加した、パネラーの面々。写真左から、須田恵里子氏(環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課)、宮田秀明氏(東京大学大学院工学系研究科)、姉川尚史氏(東京電力 技術開発研究所 電力推進グループ)、グレン・シュミッド氏(BMW AG)、ウルリッヒ・クランツ氏(BMW AG)。
BMW、環境シンポジウムを開催
「MINI E」の次の世代のEVとして研究開発中の「BMWコンセプトアクティブE」。
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■充電器は“適材適所”で

後半のパネルディスカッションでは、パネリストからさまざまな意見が述べられた。

最初のテーマは「環境対応車が人々に受け入れられるために必要なことは?」。環境に敏感な人だけでなく、一般の人も環境対応車を購入するようにするには何が必要かについて、環境省 水・大気資源局の須田恵理子氏は、「2009年はエコカー補助金として4000億円が投入され、国内で一番売れたクルマはプリウスでした。これだけの補助金を今後も積めるわけではありませんから、この先どうしていくか、本気で考える段階に来ています」と語る。そして、「EVは航続距離が短いと思われていますが、実際は十分な距離を確保しており、それを(多くの方が)認識すれば、普及のきっかけになるのではないかと思います」。「航続距離の不安を解消するために急速充電器を整備したり、また、将来燃料電池車が普及するときに備えて、インフラの整備を先行して進める必要もあるでしょう」と続けた。

急速充電器の設置に関しては、東京電力・技術開発研究所の姉川尚史氏から興味深い話が聞かれた。
同社が横浜にEVを導入した際、東西15km、南北8kmの担当エリア内であれば十分な航続距離が確保できていたにもかかわらず、ひと月の走行距離はわずか200kmだった。ところが、エリア内に急速充電器を設置すると、走行距離は1400kmと、ガソリン車を超えるレベルに急増したという。「しかし、急速充電器はほんの数回しか使われませんでした。万一バッテリーがなくなったときの不安を解消する意味で、急速充電器は非常に有効ということがわかったのです」。
充電は家庭や会社で行われることがほとんどであり、さほどスピードが求められないことを考えると、そういった場所にはコストの安い低速充電器を設置。一方、急速充電器は街中に「それほど数は要らないが適切な数」を設置すればいいという意見である。

沖縄でEVレンタカーの普及を目指す東京大学大学院の宮田秀明教授も「ほとんどのEVは夜間に低速充電されます。充電インフラが必要なのは遠出するときだけ。レンタカー利用者の行動をシミュレーションすると沖縄県のどこに充電スタンドがあればいいかわかってきますが、もしも、EVの性能がどんどん良くなって、航続距離がいまの160kmから300kmに伸びれば、沖縄に充電スタンドはほとんど要らなくなる」と指摘する。

ドイツ・ベルリンにおける実証実験では、航続距離についてのユーザーアンケートも実施。(EVの航続距離は)「200kmで十分」「250kmあれば理想」という“控えめな”答えは、メーカーにとっても意外なものだったという。
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■社会の電力源にもなるEV

最近よく耳にする「スマートグリッド」(送電の拠点を発電所以外に分散し、需要側と供給側の両方から効率的に電力をやりとりする次世代電力ネットワーク)。これに関連して、「スマートグリッドとの連携で期待されるクルマの役割と課題」といった話題も採り上げられた。
スマートグリッドプロジェクトも手がけている宮田氏は言う。「いままで電気は貯められないものでしたが、リチウムイオン電池の進化により、電気が貯められるものになりました。これは、スマートグリッドとEVの両者に大きな影響を与えるはずです。たとえば『MINI E』に貯められる電気量は一般家庭で消費する量の3日分です。しかも、クルマは止まっていることがほとんどですから、(大型電池として)いろいろな使い道が考えられます。“電気は貯められる”というパラダイムシフトが、産業革命のように世の中を変えていくでしょう」。

気がかりなのは、クルマを走らせる以外に電気を使うと、バッテリーの寿命に悪影響を与えかねないのではないかということ。これに関して「MINI E」のプロジェクトを手がける独BMWの執行役員であるウルリッヒ・クランツ氏は、「バッテリーの寿命についてコメントするにはまだ経験が十分とはいえませんが、『MINI E』の経験からいえば、さほど影響は大きくないようです」と言及。さらに、スマートグリッドとEVについては、「再生可能エネルギーを活用するには、電気を貯蔵する必要はあります。それはクルマの中かもしれませんし、また、EVで使ったバッテリーをリサイクルするかわりに、風力発電機やソーラーパネルのそばに設置すれば、それが“バッファ”となって、いつでも電気が利用できるようになると思います」と語る。

このように、EVは未来の自動車という枠を超えて、社会に必須のアイテムに発展する可能性を秘めている。とはいえ、まだまだ発展途上の技術だけに、いたずらに普及を急がず、その進化を冷静に見守ることが、いまの私たちには求められるのではないだろうか?

(文=生方聡)

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