第8戦カナダGP「厄介者を味方につけたマクラーレン」【F1 2010 続報】

2010.06.14 自動車ニュース
前戦トルコGPに次ぐマクラーレン1-2フィニッシュ。ルイス・ハミルトン(右から2番目)は、ジェンソン・バトン(同3番目)を従えて今年初のポール・トゥ・ウィンを達成した。3位にはフェルナンド・アロンソ(一番右)。実は登壇者3人ともワールドチャンピオン経験者というのは珍しいことで、1991年アメリカGP以来の出来事とか(ちなみにこの時は1位アイルトン・セナ、2位アラン・プロスト、3位ネルソン・ピケだった)。(写真=Ferrari)
第8戦カナダGP「厄介者を味方につけたマクラーレン」【F1 2010 続報】

【F1 2010 続報】第8戦カナダGP「厄介者を味方につけたマクラーレン」

2010年6月13日、カナダはモントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットで行われたF1世界選手権第8戦カナダGP。ストレートを疾走し急減速、またスピードを上げてはダウンを繰り返す“ストップ&ゴー”のモントリオールで、トップスピードが伸びるマクラーレンと、自身初優勝を飾ったこの地を得意とするルイス・ハミルトンが勝利した。対するレッドブルは勢いを失い4-5位。勝敗は、“厄介者”とどう付き合うかによって分かれた。

厄介者のソフトタイヤを真っ先に片付けるというマクラーレンの作戦が奏功した。ハミルトン(写真)はポールポジションから早々にタイヤをソフトからハードにスイッチ。その後コース上でアロンソを抜くなどアグレッシブな走りで2連勝し、チャンピオンシップでもトップに躍り出た。(写真=McLaren)
厄介者のソフトタイヤを真っ先に片付けるというマクラーレンの作戦が奏功した。ハミルトン(写真)はポールポジションから早々にタイヤをソフトからハードにスイッチ。その後コース上でアロンソを抜くなどアグレッシブな走りで2連勝し、チャンピオンシップでもトップに躍り出た。(写真=McLaren)
トルコで8位と精彩を欠いたフェラーリとアロンソ(写真)。予選で4位、決勝でもトップを争うほど復活してきたが、2回も前車を抜くタイミングを誤りハミルトンとバトンにかわされてしまった。チャンピオンシップではハミルトン、バトン、ウェバーに次ぐ4位。いっぽうこの週末前にフェラーリとの契約を延長した僚友フェリッペ・マッサは予選7位からスタートで他車と接触し、最後はミハエル・シューマッハーと当たりピットに駆け込んで15位完走。この際ピットレーンスピード違反で20秒加算されているが順位変動はなし。(写真=Ferrari)
トルコで8位と精彩を欠いたフェラーリとアロンソ(写真)。予選で4位、決勝でもトップを争うほど復活してきたが、2回も前車を抜くタイミングを誤りハミルトンとバトンにかわされてしまった。チャンピオンシップではハミルトン、バトン、ウェバーに次ぐ4位。いっぽうこの週末前にフェラーリとの契約を延長した僚友フェリッペ・マッサは予選7位からスタートで他車と接触し、最後はミハエル・シューマッハーと当たりピットに駆け込んで15位完走。この際ピットレーンスピード違反で20秒加算されているが順位変動はなし。(写真=Ferrari)

■強敵は身内にあらず

前戦トルコGPでのショッキングな同士討ちで注目を集めたレッドブル勢。トップのマーク・ウェバーを抜かんと2位セバスチャン・ベッテルが勝負に出て両車接触、という事件を、チーム分裂という最悪のシナリオに発展させないように、チームはユニティ(統一)を内外に強く意識させて北米にやってきた。

今年最速マシンを擁するこのチームにとって、カナダでの手強い敵は身内にあらず。ライバルのマクラーレンが目の前に立ちはだかった。
究極のダウンフォースマシンであるレッドブル「RB6」にとって、高速コーナーがなくストップ/ゴーをひたすら繰り返すモントリオールはあまり得意とはいえないコースだった。直線スピードにたけるマクラーレン「MP4-25」がその間隙(かんげき)を突き、開幕戦以来続いたレッドブルによるポールポジション連続獲得記録を「7」で止めた。

予選Q3で最速タイムを計時したハミルトンは、目の覚めるようなアタックで2007年のデビュー以来3連続(2009年はレースなし)となるカナダでのポールシッターとなり、予選2位にポイントリーダーのウェバー、3位ベッテル、4位フェルナンド・アロンソ、5位ジェンソン・バトンらを従えて、デビューイヤーで成し遂げたポール・トゥ・ウィンを目指した。

そして迎えた決勝日、勝敗のカギを握ったのはタイヤだった。レース中2種類のコンパウンド使用が義務付けられているが、このうちソフト側のタイヤがもろくデリケートで各車が手を焼いていた。
このソフトタイヤをいつ、どんなタイミングで使うか、という命題が戦略のバリエーションを生み、おなじみのセーフティカーがなくとも意外性に富んだレース展開をもたらした。

レッドブルには不向きとの下馬評が当たったか、モントリオールではマーク・ウェバー(写真)、セバスチャン・ベッテルとも苦戦。序盤をハードタイヤで戦った2台だったが、ウェバーは2連続ハードでトップを守り切れず5位、ベッテルはマシントラブルと格闘し4位でゴールした。(写真=Red Bull Racing)
レッドブルには不向きとの下馬評が当たったか、モントリオールではマーク・ウェバー(写真)、セバスチャン・ベッテルとも苦戦。序盤をハードタイヤで戦った2台だったが、ウェバーは2連続ハードでトップを守り切れず5位、ベッテルはマシントラブルと格闘し4位でゴールした。(写真=Red Bull Racing)
カナダで7勝、6回のポールポジションという記録を持つミハエル・シューマッハー(写真)は、予選13位からスタート。ルノーのロバート・クビサとコースをはみ出るくらいの丁々発止を繰り広げたが、タイヤの状況がどのマシンよりも悪かった。3回もピットに駆け込んだがペースは低調、最後はかつての子弟マッサのフェラーリと接触する場面もみられた。ラップダウンの11位完走に往年の記録もかすむ。(写真=Mercedes Benz)
カナダで7勝、6回のポールポジションという記録を持つミハエル・シューマッハー(写真)は、予選13位からスタート。ルノーのロバート・クビサとコースをはみ出るくらいの丁々発止を繰り広げたが、タイヤの状況がどのマシンよりも悪かった。3回もピットに駆け込んだがペースは低調、最後はかつての子弟マッサのフェラーリと接触する場面もみられた。ラップダウンの11位完走に往年の記録もかすむ。(写真=Mercedes Benz)
ザウバーの小林可夢偉は、予選Q1どまりの18位と出だしでつまずいたものの、決勝スタートで一気に10位までジャンプアップ。期待を抱かせたが、オープニングラップの最終コーナーの“魔の壁”にヒットしリタイア。チームボスのペーター・ザウバーには「楽観的すぎた」とダメ出しされてしまった。(写真=Sauber)
ザウバーの小林可夢偉は、予選Q1どまりの18位と出だしでつまずいたものの、決勝スタートで一気に10位までジャンプアップ。期待を抱かせたが、オープニングラップの最終コーナーの“魔の壁”にヒットしリタイア。チームボスのペーター・ザウバーには「楽観的すぎた」とダメ出しされてしまった。(写真=Sauber)

■マクラーレンとアロンソ、ソフトに賭ける

不向きなコースとしても、相手はこれまで予選で圧倒されレースでも3勝しているレッドブルだ。マクラーレンの2台は勝利のため、タイヤ選択で賭けに出た。厄介者のソフトタイヤで予選を戦い、それを履き決勝スタートを切り、そしてこのコースでは珍しくないセーフティカーがあわよくば早々に導入されればハードにスイッチしよう、という魂胆だった。

実際、オープニングラップで小林可夢偉のザウバーが悪名高い“最終シケインの壁”の餌食となり、マクラーレンの思惑通りセーフティカーが導入されそうになったが、結局さにあらずでレースは続行した。
ソフトで走り続けるマクラーレン、そして同様の作戦をとったアロンソは、タレはじめたタイヤでペースをあげられず、8位まで後退していたバトンは7周目、トップのハミルトンと3位アロンソは翌周に早くもピットへ飛び込みハードへとチェンジした。

コースに復帰するピットロードでサイド・バイ・サイド状態からアロンソがハミルトンをかわすことに成功。だがハミルトンは持ち前のアグレッシブな走りで数周の後アロンソを抜き返し、勝利へ一歩前進することになる。

その前方では、ハードタイヤで序盤を戦い差を広げようと考えていたレッドブルの1-2フォーメーションが早々に完成していた。タイヤをまだ変えていないベッテルが1位、ウェバー2位。ここ数戦爆発的な速さで他を圧倒していた2台が後続を引き離しにかかることは、カナダではなかった。アロンソ、ハミルトン、そしてバトンがニュータイヤで先頭2台に食らいつき、独走を許さなかったのだ。
14周目にベッテル、翌周ウェバーがピットイン。レッドブルは、ベッテルにソフトを、ウェバーにはまたハードを履かせるという変則的な作戦に打って出た。レッドブルとて、タイヤという不確定要素と格闘していたのだ。

ハード-ハードのウェバーは、もう1回ピットに入りソフトを試さなければならない。厄介者ソフトを携える前に、とにかく十分なギャップを築く必要があったのだが、この日のポイントリーダーにはその力はなかったようだ。

第2スティントをなるべく長く、すなわちソフトで周回する時間をなるべく短くしたかったトップのウェバーは、最大10秒以上のマージンを手にしたが、70周のレースの39周あたりからハードももたず、50周目にはコース上でハミルトンにリードを奪われピットへ。最後に装着したソフトタイヤでフィニッシュラインを通過し、結局5位に終わった。

レッドブルのもう1台、ベッテルはマシントラブルとの応戦に追われ、上位を狙えずに4位でゴール。実はウェバーもスタート直前にトランスミッションを交換しており5グリッド降格で7番グリッドからレースに出ていたのだが、おそらくはベッテルも同じような問題に直面していたと思われる。だがトラブルを差し引いたとしても、この日の“紅い猛牛”に、トルコまでの猛々しさがなかったことは明白だった。

2009年はカレンダーから外れていたカナダGPが復活。モントリオールという大都市にあるジル・ビルヌーブは人気GPとして名高く、今年のチケットはソールドアウトだったという。(写真=Ferrari)
第8戦カナダGP「厄介者を味方につけたマクラーレン」【F1 2010 続報】

■5人目のチャンピオンシップリーダー

レース終盤、優勝争いは1位ハミルトン、2位アロンソ、3位バトンの3人に絞られたが、残り15周という時点で周回遅れに一瞬手こずったアロンソを前年チャンプのバトンがオーバーテイク。最終局面はチームメイト同士の争いとなった。
ここでハミルトンはバトンにファステストラップを立て続けにお見舞いし、勝負あり。ハミルトンは、3年前の初優勝の地で、自身60戦目を最良のカタチで締めくくった。

2010年シーズンは、これまでに5人のチャンピオンシップリーダーが誕生している。
開幕戦ウィナーのアロンソ、続いてフェリッペ・マッサ、バトン、ウェバーときて、今回ハミルトンがトップに躍り出た。

マクラーレンは2連続1-2で波に乗り、そしてトルコでは惨めな結果しか残せなかったフェラーリ&アロンソは復調の兆しをみせる。前者は2戦後の地元イギリスGPで、後者は次のヨーロッパGPでマシンアップグレードを予定している。混迷の度合いを深めつつある今シーズンは、まだ半分以上も残っている。

次戦はバレンシアのストリートコースが舞台。決勝は6月27日に行われる。

(文=bg)

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