第5戦スペインGP「4分の1の4強関係」【F1 2010 続報】

2010.05.10 自動車ニュース
1-2は幻となったが、終わってみればレッドブル1-3フィニッシュ。マーク・ウェバー(右から2番目)は今季初、昨年のタイトル決定戦ブラジルGP以来となる自身通算3勝目をあげた。2位はスペインのヒーロー、フェルナンド・アロンソ(同3番目)、3位セバスチャン・ベッテル(同1番目)。(写真=Red Bull Racing)
第5戦スペインGP「4分の1の4強関係」【F1 2010 続報】

【F1 2010 続報】第5戦スペインGP「4分の1の4強関係」

2010年5月9日、スペインのサーキット・デ・カタルーニャ(4.655km)で行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。前戦中国GPから3週間のブレーク中に各チームはさまざまなアップデートを実施してきたが、ふたを開けてみれば(やはりというべきか)レッドブルの速さが突出していた。
今季3度目のフロントロー独占から今年2度目の1-2フィニッシュを目指したレッドブルだったが、それは幻に終わった。

第3戦マレーシアGPのようなスタートミスなく、ウェバー(写真先頭)がポールポジションからトップを守った。優勝争いはこの時点で決したといっていい。(写真=Red Bull Racing)
第3戦マレーシアGPのようなスタートミスなく、ウェバー(写真先頭)がポールポジションからトップを守った。優勝争いはこの時点で決したといっていい。(写真=Red Bull Racing)
序盤のレッドブル1-2体制は長続きせず。2位ベッテル(写真後ろ)は、ミクスチャーを調整しエンジンレブをあげてもいい、というチームからの“許し”が出ても、トップのウェバー(同前)に追いつけないばかりか徐々に引き離されてしまった。終盤、ブレーキが限界寸前にまですり減りスローダウン。しかしチームのリタイアの決断に待ったをかけ、しぶとく走り切って3位の座をもぎ取った。(写真=Red Bull Racing)
序盤のレッドブル1-2体制は長続きせず。2位ベッテル(写真後ろ)は、ミクスチャーを調整しエンジンレブをあげてもいい、というチームからの“許し”が出ても、トップのウェバー(同前)に追いつけないばかりか徐々に引き離されてしまった。終盤、ブレーキが限界寸前にまですり減りスローダウン。しかしチームのリタイアの決断に待ったをかけ、しぶとく走り切って3位の座をもぎ取った。(写真=Red Bull Racing)

■抜けないコースとマシン、そしてレッドブルの速さの関係

カタルーニャは、バルセロナの温暖な気候もさることながら、低中高速コーナーをバランスよく取り入れたキャラクターが好まれて、冬のテストコースとして重宝されている。

そして、ここでのオーバーテイクは至難の業であることもよく知られている。その理由は、昨今のF1マシンと同じで、空力に極めてシビアだからである。カタルーニャは名うてのエアロ・コースであり、空力を突き詰めた今日のF1マシンは前車が巻き起こす空気の乱流の影響で挙動が不安定になり、レースの醍醐味である追い抜きを困難なものにしている、というわけだ。

スペインでレッドブルが他を圧倒する速さをみせつけたのも、奇才エイドリアン・ニューウェイが手がけた「RB6」が特に空力特性に優れているからといえる。

そのレッドブルが実力を遺憾なく発揮した予選では、マーク・ウェバーがただ一人1分19秒台に突入し今年2度目のポールポジションを獲得。僚友セバスチャン・ベッテルはおよそ0.1秒差で2番グリッドについたが、予選3位のルイス・ハミルトンは、ウェバーから遅れること約0.8秒と、1秒近くの大差をつけられた。

過去4戦中3戦のリザルトに意外性をもたらした雨は、この日曜日の予報にはない。となると、最前列から弾丸のごとく飛び出した“猛牛2頭”を止めるものはいないだろう─レース前にライバルを含む多くが予想していた結末は、今回、半分は当たり、半分ははずれた。

当たったのは、いうまでもなくウェバーの見事なまでの圧勝。ミスなく、レース中は最速タイムをたたき出しながらもタイヤをいたわり、文句のつけようのないパーフェクトウィンを達成した。
これでベッテルが2位でフィニッシュできたら予想通りで、チームとしても万々歳だったのだが、ベッテルのレース序盤の不調、ピット作業での若干の遅れと、またしても襲ったマシントラブル、そしてハミルトンとマクラーレンの健闘がそれを阻んだ。

今年のフェルナンド・アロンソ(写真)は不思議とついている。4強の真ん中程度のマシンパフォーマンスで開幕戦優勝。今回も予選4位から押しも押されもしない4位独走、その後ベッテルとルイス・ハミルトンのトラブルに乗じて2位表彰台を手に入れた。地元の熱狂的なファンは2006年に優勝したときと同じように大興奮。チャンピオンシップではトップから3点差の2位につけた。チームメイトのフェリッペ・マッサは予選9位から6位完走とぱっとせず。(写真=Ferrari)
今年のフェルナンド・アロンソ(写真)は不思議とついている。4強の真ん中程度のマシンパフォーマンスで開幕戦優勝。今回も予選4位から押しも押されもしない4位独走、その後ベッテルとルイス・ハミルトンのトラブルに乗じて2位表彰台を手に入れた。地元の熱狂的なファンは2006年に優勝したときと同じように大興奮。チャンピオンシップではトップから3点差の2位につけた。チームメイトのフェリッペ・マッサは予選9位から6位完走とぱっとせず。(写真=Ferrari)
予選でレッドブルに1秒近い大差をつけられ3位に甘んじたマクラーレンのハミルトン(写真)。レースペースは好調で、ピットストップのタイミングでベッテルを抜き2位に昇格したのだが、ゴール目前にホイール起因と思われるタイヤバーストに見舞われクラッシュ。18点とチャンピオンシップ2位の座を逃がした。チームメイトのジェンソン・バトンは、ミハエル・シューマッハーに先行されてから終始メルセデスに抑えられ結果5位。(写真=McLaren)
予選でレッドブルに1秒近い大差をつけられ3位に甘んじたマクラーレンのハミルトン(写真)。レースペースは好調で、ピットストップのタイミングでベッテルを抜き2位に昇格したのだが、ゴール目前にホイール起因と思われるタイヤバーストに見舞われクラッシュ。18点とチャンピオンシップ2位の座を逃がした。チームメイトのジェンソン・バトンは、ミハエル・シューマッハーに先行されてから終始メルセデスに抑えられ結果5位。(写真=McLaren)

■ウェバーの勝負所

このレースは、ウェバーにとってとても重要な意味を持っていた。10歳以上若いベッテルに過去3戦でポールポジションを奪われ、シーズン初勝利をもっていかれ、チャンピオンシップでも先を越されていた彼は、これ以上チームメイトにやられっぱなしではタイトル争いはもちろん、今後のチーム内の立場も危うくなってしまう。

第3戦マレーシアGPで、ウェバーはポールポジションからスタートで不用意にスペースをあけ、ベッテルに先行を許し優勝をさらわれた苦い経験があった。今回は、この最大の関門を難なくこなし、ベッテルを抑えてウェバーがトップで最初のターンに進入した。事実上、ここで優勝争いは決まっていたといっていいだろう。

ウェバーを先頭に、2位ベッテル、3位ハミルトン、4位フェルナンド・アロンソ、5位ジェンソン・バトン、6位ミハエル・シューマッハーと、上位は予選順位のままオープニングラップを終了。これでレッドブルの2台が後続を引き離しにかかるかと思われたが、2位ベッテルがトップについていけず、逆に3位ハミルトンに追われる展開となる。

ウェバーはファステストラップでチームメイトを振り払い、8周でベッテルに対し2.1秒、10周で2.8秒、11周で3.1秒、13周で3.4秒とギャップをジワジワと拡大。その後方のベッテルは17周目にピットへと駆け込むのだが、若干タイヤ交換作業に手間取り、翌周ピットインしたハミルトンに2位の座を明け渡してしまった。

その後、2位ハミルトンはトップのウェバーに勝負を挑んだが、マシンの力量の差に加え、十分なマージンで既にレースをコントロールできる立場にいたウェバーには歯が立たず、ウェバーはチェッカードフラッグまで首位の座を守り切ることに成功した。

レース中盤、トップの3台が先頭集団なら、アロンソは誰にも邪魔されない孤独な4位を走っていた。そしてピット作業で遅れをとったバトンを抜き、シューマッハーが5位にポジションアップを果たしていた。復帰後予選で初めてチームメイトを上回り波に乗るシューマッハーだったが、タイヤ交換後にペースが停滞し、背後のバトンはいら立ちを募らせた。そしてストレートスピードにたけるマクラーレンであっても、結局最後まで遅いメルセデスを抜けないでレースは終わった。F1を取り巻く空力の問題はやはり深刻である。

4年ぶりにカムバックしたミハエル・シューマッハー(写真)の復活を印象付ける1戦。これまで僚友ニコ・ロズベルグがランキング2位と善戦した陰で、元チャンピオンは精彩を欠く走りで結果を残せていなかった。今回初めて予選でロズベルグを上回り6番グリッドを獲得。モディファイを受けたメルセデスのマシンと、相性のいいシャシーへのスイッチで勢いに乗りたかったのだが、タイヤ交換後のペースが思わしくなく4位に終わった。ロズベルグは8番グリッドからスタートでコースオフ、ピットで時間がかかり、13位でレースを終えた。(写真=Mercedes Benz)
4年ぶりにカムバックしたミハエル・シューマッハー(写真)の復活を印象付ける1戦。これまで僚友ニコ・ロズベルグがランキング2位と善戦した陰で、元チャンピオンは精彩を欠く走りで結果を残せていなかった。今回初めて予選でロズベルグを上回り6番グリッドを獲得。モディファイを受けたメルセデスのマシンと、相性のいいシャシーへのスイッチで勢いに乗りたかったのだが、タイヤ交換後のペースが思わしくなく4位に終わった。ロズベルグは8番グリッドからスタートでコースオフ、ピットで時間がかかり、13位でレースを終えた。(写真=Mercedes Benz)
好調だった冬のテストから一転、シーズン突入後に苦戦をしいられていたザウバーは、スペインでようやく帳尻が合ってきた。小林可夢偉(写真)は予選Q3進出で10番グリッド獲得。予選12位の地元のベテラン、ペドロ・デ・ラ・ロサとともに上位を狙ったが、2人とも運が味方してくれなかった。小林はスタート直後にロバート・クビサと接触したことで順位を落とし、その後はビタリー・ペトロフに抑え込まれ結果12位完走。デ・ラ・ロサもセバスチャン・ブエミと当たりタイヤを痛め、早々にリタイアをきっした。(写真=Sauber)
好調だった冬のテストから一転、シーズン突入後に苦戦をしいられていたザウバーは、スペインでようやく帳尻が合ってきた。小林可夢偉(写真)は予選Q3進出で10番グリッド獲得。予選12位の地元のベテラン、ペドロ・デ・ラ・ロサとともに上位を狙ったが、2人とも運が味方してくれなかった。小林はスタート直後にロバート・クビサと接触したことで順位を落とし、その後はビタリー・ペトロフに抑え込まれ結果12位完走。デ・ラ・ロサもセバスチャン・ブエミと当たりタイヤを痛め、早々にリタイアをきっした。(写真=Sauber)

■“予選番長”レッドブル

終始ドライの開幕戦バーレーン同様、順位は硬直ぎみで推移。動きがあったのは、66周レースの53周を過ぎた頃だった。

3位ベッテルが突如コースオフ、その直後にピットへと飛び込んだことで、目立たぬ走りのアロンソが表彰台圏内の3位に浮上した。ベッテルはフレッシュなタイヤに履き替え、しばらくは速いタイムで周回を重ねたが、その後ブレーキが限界寸前でペースを極端に抑えざるを得ない状態に陥った。後続のシューマッハーとのギャップが十分にあったため、これ以上順位を落とさずに済んだのは不幸中の幸いだった。

ベッテルにとって幸いだったのはそれだけではない。残り2周という時点で、健闘中の2位ハミルトンが長い高速ターン3でタイヤをブローさせクラッシュ、3位の座が戻ってきたのだ。

幸いついではアロンソで、2位に繰り上がったことでサーキットはまるで地元のヒーローが優勝したかのような歓声に包まれた。

だが本当の勝者はもちろんウェバーである。勝負所をちゃんとおさえての完勝で、ドライバーズランキングでは首位バトンの17点後方、3位ベッテルを7点先にみる4位にあがってきた。

カタルーニャが空力コースだったとはいえ、“第2の開幕戦”でのレッドブルのアドバンテージは目を見張るものだった。全19戦の4分の1を終えて、予選で圧倒的に速くレースでも(壊れなければ)逃げ切れるレッドブル(ベッテル、ウェバー1勝ずつ)、レースペースは決して悪くないマクラーレン(バトン2勝)、可もなく不可もないフェラーリ(アロンソ1勝)、やや力量不足のメルセデス、という4強の関係がみてとれる。

次はきわめて特異なモナコGP。難攻不落の超低速コースでは予選でのポジションがどこよりも重要だ。これまで5戦すべてでポールポジションを獲得している“予選番長”レッドブルに一日の長があるのか? 決勝は5月16日に行われる。

(文=bg)

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