中国クルマ事情早わかり(その3)〜クルマ選びのポイントは?【北京モーターショー2010】

2010.05.03 自動車ニュース
とある日産ディーラーの店内。
中国クルマ事情早わかり(その3)〜クルマ選びのポイントは?【北京モーターショー2010】

【北京モーターショー2010】中国クルマ事情早わかり(その3)〜クルマ選びのポイントは?

日本ではファミリーカーといえばミニバンだが、モータリゼーションが始まって日の浅い中国では、かつての日本のようにセダンの人気が高い。とはいえ、セダンならなんでも売れるのかというと、決してそうではない。人気のクルマには、中国の消費者に選ばれるそれなりの理由があるのだ。

一汽フォルクスワーゲン「ジェッタ」
一汽フォルクスワーゲン「ジェッタ」
中国名物、黒い「メルセデス・ベンツSクラス」。
中国名物、黒い「メルセデス・ベンツSクラス」。

■クルマ選びのポイントは?

前々回と前回で見たように、中国市場のボリュームゾーンは1.6リッタークラスの小型車である。そこで人気を得るための条件は何だろうか。最大のポイントは、ずばり「コストパフォーマンス」、別の言い方をすれば「お買い得感」である。

中国ではまだ、新車の購入者の6〜7割が初めてクルマを買う人だ。彼らにとっては不動産に次ぐ大きな買い物であり、1元だってムダにしたくない。だから、限られた予算の中で、なるべく車体が大きく、立派に見えるデザインで、室内も広く、本革シートやサンルーフ、バックソナーなどの豪華装備がてんこ盛りのモデルを選ぶ。購入後のランニングコストに直結する燃費、品質、アフターサービスへの関心も高い。しかし動力性能ははっきり言って二の次。日本のクルマ好きから見れば平々凡々なセダンが販売ランキングの上位に並ぶ背景には、こんな事情がある。

もう1つ、中国で人気車になるために不可欠な条件が、ユーザーの“クチコミ”だ。日本なら、ニューモデルの販売は発売から数カ月がピークで、徐々に減っていくのが普通。ところが中国では、ブランニューのクルマは発売直後はなかなか売れない。というのも、中国人は親族や友人のクチコミを何より重視するからだ。まだ周囲に買った人がいない初物は、購入をためらうケースが多いのである。

逆に言えば、クチコミで高い評価を確立したクルマは、尻上がりに販売を伸ばし、長年にわたって売れ続ける。同じ車種の旧型と新型を併売している場合、旧型の方が人気が高いケースも珍しくない。たとえばフォルクスワーゲンの「ジェッタ2」は「ジェッタ5」(中国では「サジター」という車名で販売されている)より売れているし、マツダの「Mazda6(アテンザ)」も販売の主力は旧型だ。

こちらも中国名物の、黒い「ポルシェ・カイエン」。
こちらも中国名物の、黒い「ポルシェ・カイエン」。
軍ナンバーを掲げる、黒い「アウディQ7」。
軍ナンバーを掲げる、黒い「アウディQ7」。

■クルマ好きの人気車は?

「クルマが大好き」「趣味はドライブ」という中国人はたくさんいるが、好みのクルマを数年おきに買い換えたり、一家に2台以上所有できる人はまだ少ない。webCG読者のようないわゆる「クルマ好き」は、前回も触れたお金持ち層にほぼ限定されてしまう。

お金持ちに人気の高級車は、やはりメルセデス、BMW、アウディというドイツの御三家が強い。特にアウディは、1990年代から政府の公用車として現地生産されていることもあり、メルセデスやBMWよりもずっとたくさん走っている。米国留学組が多い金融業界やIT業界のヤングエグゼクティブにはレクサスも人気だ。

高級車のボディカラーは圧倒的に黒が多い。これは、政府要人が乗る公用車の影響と言われている。要するにデカくて豪華でエラそうに見えるクルマがいいのである。その意味では、お金持ちも庶民も、クルマ選びのポイントは似ていると言えそうだ。

スポーツカーブランドではポルシェの人気が圧倒的。ところが、実は販売台数の8割はSUVの「カイエン」が占めている。ホンダが日本市場ではミニバンメーカーであるように、ポルシェは中国ではSUVメーカーというのが実態なのだ。人気のボディカラーはもちろん黒。北京の街角で真っ黒なカイエンを見かけると、装甲車みたいでちょっとコワイ。

路上は無法地帯……。
路上は無法地帯……。
北京最北端の風景。
北京最北端の風景。
内モンゴル自治区もドライブが楽しい地域だ。
内モンゴル自治区もドライブが楽しい地域だ。

■運転は恐くない?

コワイといえば、旅行や出張で中国へ行ってタクシーに乗り、コワイ思いをした経験のある読者もおられるだろう。日本に比べれば、中国の路上はほとんど無法地帯だ。車線変更はウインカーなし、路地から幹線道路への合流は一時停止なしが“デフォルト”。交差点では、信号が赤でも自転車、電動バイク、歩行者が飛び出してくる。急発進、急ブレーキの連続で、せわしないことこのうえない。

ところが、実際に自分で運転してみると、たしかに最初はコワかったものの、一週間ほどで慣れてしまった。その理由は、クルマの流れの遅さにある。東京なら、片側2車線の幹線道路でも空いていれば時速80km/hくらいで平気で流れている。ところが、北京では片側4車線でもせいぜい60km/hどまり。他のクルマや自転車やヒトが横から飛び出してくるのを前提に、皆が無意識に安全マージンをとっているのだろう。

ちなみに、中国は国際免許のジュネーブ条約を批准していないため、外国人は中国の免許証を取らなければ運転できない。筆者は昨年まで北京に住んでいたため、その間に取得した。長期滞在ビザと母国の免許証を持っていれば、実地試験は免除。しかし学科試験は受けなければならない。公安局で売っている問題集の500問からランダムに100問が出題され、90点以上で合格となかなか厳しい。

交通マナーの悪さ、免許取得の煩雑さ、そして事故のリスクなどから、中国に長期滞在している日本人でも免許を取る人は少ない。しかし中国のクルマ事情は、やはり自らハンドルを握ってみないとわからないことが多いのも事実だ。たとえば北京の郊外は、ガイドブックには全く出ていない知られざるドライブ天国だ。筆者はそれを、免許を取った後で初めて知った。この話題は、また機会をあらためてしたいと思う。

(文と写真=岩村宏水)

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