中国メーカーのブース紹介(その2)【北京モーターショー2010】

2010.04.30 自動車ニュース
「上海汽車・栄威350」
中国メーカーのブース紹介(その2)【北京ショー2010】

【北京モーターショー2010】中国メーカーのブース紹介(その2)

中国メーカーの2回目は、大手国有メーカーの注目モデルを紹介しよう。中国には大小合わせて100を超える自動車メーカーがあるが、なかでも規模、実力ともに群を抜いているのが「三大国有メーカー」と呼ばれる上海汽車(シャンハイチーチェー)、第一汽車(ディーイーチーチェー)、東風汽車(トンフォンチーチェー)だ。

「栄威350」のインテリアは、デザイン、質感ともに上々。
中国メーカーのブース紹介(その2)【北京ショー2010】

■上海汽車「栄威350」、中国車もここまできた!

三大国有メーカーは、外資メーカーとの合弁会社で海外ブランド車を現地生産するとともに、4〜5年前から自社ブランド車の開発にも力を注いでいる。上海汽車はフォルクスワーゲン(VW)やゼネラルモーターズ(GM)との合弁会社を持ち、乗用車では中国の最大手。2005年に経営破綻(はたん)した英ローバーの主力車種の知的財産権を買収し、三大メーカーの先陣を切って自社ブランド車に参入した。

北京ショーで初公開された75台もの中国車のうち、実は筆者が最も気になった1台が上海汽車の小型セダン「栄威350」だった。写真をご覧いただけばわかるように、ぱっと見は無国籍風のごく普通の乗用車である。ボディサイズは全長×全幅×全高=4521×1788×1492mmと、「ホンダ・シビック」や「マツダ・アクセラ」よりわずかに大きい程度。これを自社開発の可変バルブ機構付き1.5リッターエンジンで走らせる。

だが、驚いたのはデザインやスペックではなく、栄威350の作りの良さだ。一般的に、中国車は内外装の質感や細部の仕上げがやや粗雑で、ユーザーから「遠くから見れば10万元、近くで見れば5万元」と揶揄(やゆ)されている。ところが、栄威350の質感は下手な外資系メーカーの現地生産車をしのぐほどだった。内装のデザインにも高級感があり、木目風パネルの使い方も洗練されている。クルマとしての出来栄えは運転してみないとわからないが、少なくとも見た目に関しては「中国車もここまで来たか」と感じた。

ただ、栄威350の価格は9〜12万元(約120〜160万円)と、中国車としては安くない。ほぼ同額で、同じクラスのベストセラーである「ヒュンダイ・エラントラ」や「ビュイック・エクセル」が買えてしまう。中国の消費者が果たして栄威350を割高と感じるかどうか、今後の売れ行きが注目される。

「第一汽車・紅旗CA7600」
「第一汽車・紅旗CA7600」
「一汽轎車・奔騰B50」
「一汽轎車・奔騰B50」

■第一汽車、中国最大メーカーのメンツ

第一汽車は、その名の通り中国最初の自動車メーカーだ。乗用車と商用車を合わせた販売台数では中国最大。乗用車ではVWやトヨタと合弁しており、マツダとも提携関係にある。

その展示ブースで一番目を引いたのは、全長6mを超える巨大リムジン「紅旗CA7600」だ。先に紹介した吉利の「帝豪GE」はコンセプトカーだったが、紅旗CA7600は実走が可能。2009年10月の中国建国60周年記念の軍事パレードで、胡錦濤国家主席を乗せてデビューした。クラシックカー風の外観は、中国初の国産乗用車として1958年に誕生した、初代「紅旗」をモチーフにしている。

乗用車の自社開発では上海汽車より数年遅れているといわれ、北京ショーでも一般向けのクルマで筆者の目を引いたのは、グループの一汽轎車(イーチーチャオチェー)が昨年発売した小型セダン「奔騰B50」くらいだった。しかし最大メーカーのメンツにかけて、今後は乗用車のラインナップを確実に増やしていくだろう。

「東風汽車・風神H30クロス」
「東風汽車・風神H30クロス」
設計専門会社の同捷科技が手がける「超級平台」。
設計専門会社の同捷科技が手がける「超級平台」。

■東風汽車、最後発で乗用車に参入

東風汽車は、かつては大型トラックが中心の商用車専業で、乗用車には最後発で参入した。2009年4月の上海モーターショーで初の自社ブランドの小型セダン「風神S30」を発表。その後、ハッチバック版の「H30」を追加し、北京ショーではSUV風クロスオーバーの「H30クロス」をデビューさせた。

上海汽車の栄威350と比べれば、S30/H30のデザインはどことなくやぼったい。しかし、昨年参入したばかりであることを考えれば、他の中国メーカーにとっては脅威だろう。日本では中国車というと吉利や奇瑞のイメージが強いが、今後は三大国有メーカーの存在感が増していくと筆者は見ている。

蛇足だが、最後にもう1つ、クルマの設計専門会社の大手である同捷科技(トンジエクージー)のブースを紹介しておきたい。中国メーカーが驚くほど短期間で新車を開発できる裏側には、メーカーに代わって(あるいは共同で)クルマを開発する設計専門会社の存在がある。もちろん、メーカーが一から自分で設計した中国車もあるが、設計会社から図面を買ってきただけのクルマも少なくないのが実態とされる。

同捷科技が展示していたコンパクトカー「超級平台」は、直訳すると「スーパー・プラットフォーム」。つまり、売っているのはクルマではなく、外からは見えない車台(プラットフォーム)である。「内外装のデザインはメーカーのニーズに合わせて自由に変えられます」と、柔軟性の高さをアピールしていた。中国車には、メーカーが違うのにそっくりなクルマが時々あるが、実は同じ設計の車台を使った兄弟車なのだ。

(文と写真=岩村宏水)

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