中国メーカーのブース紹介(その1)【北京モーターショー2010】

2010.04.26 自動車ニュース
「吉利 帝豪GE」
中国メーカーのブース紹介(その1)【北京ショー2010】

【北京モーターショー2010】中国メーカーのブース紹介(その1)

北京モーターショーで75台もの新型車を初公開した中国メーカー。その注目モデルを2回に分けて紹介する。
中国メーカーは、その歴史や成り立ちから大きく2つに分けられる。まず、外資メーカーとは手を組まず、自社で開発した自社ブランドの車だけを生産販売する「自主開発メーカー」。そして、外資との合弁会社を傘下に持ちつつ、自社開発の自社ブランド車も手がける「大手国有メーカー」だ。
前者の代表と言えるのが、吉利(ジーリー)、BYD、奇瑞(チェリー)の3社。最初にそのブースから見ていこう。

「吉利 帝豪EC7」
中国メーカーのブース紹介(その1)【北京ショー2010】

■吉利、独自性を世界にアピール

自主開発メーカーの中で、今回最も勢いを感じさせたのが吉利だ。2010年3月、スウェーデンの「ボルボ」の買収で米フォードと正式合意し、注目を集めたのが記憶に新しい。北京ショーでは、14モデルもの新型車を一挙に公開。世界に向けて「技術の吉利」をさかんにアピールしていた。

吉利ブースの正面中央にデンと鎮座していたのは、高級サルーンのコンセプトカー「帝豪GE」。全長×全幅×全高=5433×1882×1585mmの巨体を、2.4リッターの直4エンジンとモーターで駆動するハイブリッドカーで、2015年の市販を目指している。そのネーミングやデザインは洗練されているとは言い難いが、少なくとも独自性を出そうとする意気込みがひしひし伝わってくる。

「帝豪」は昨年から展開を始めた吉利のサブブランドだ。同社はもともと低価格のコンパクトカーを主力にしてきたが、今後は外資系メーカーの牙城である中高級車にシフトする戦略を打ち出している。ブースには昨年11月に発売した第一弾の小型セダン「帝豪EC7」や、まもなく投入する中型セダン「帝豪EC8」、その派生車種のSUV、ミニバン、クーペなどを多数展示していた。

吉利は1998年に自動車に参入した中国初の民営メーカーで、前身は冷蔵庫やオートバイを作っていた。初めての製品は、板金職人が「ダイハツ・シャレード」を分解して手作業でコピーした車体に、メルセデス風のグリルをつけた激安車だった。現在もまだコピーメーカー的な要素は残るものの、当時を思えば長足の進歩に驚かざるを得ない。

「BYD S6」
「BYD S6」
「BYD i6」
「BYD i6」

■BYD、確信犯的コピーの真意

ある意味で吉利とは対極的な印象を受けたのが、BYDのブースだった。初公開の新車は3台だけで、うち2台は既存車種のビッグマイナーチェンジと言えるもの。残る1つはBYD初のSUV「S6」だが、これはどう見ても「トヨタ・ハリアー」のコピーだ。独自性を派手にアピールした吉利に比べ、地味な印象は否めない。

実は、BYDには「確信犯的コピーメーカー」とでも呼べる一面がある。事情に詳しい業界関係者によれば、ぱっと見は明らかにコピーでも、細部のデザインを部品レベルで微妙に変えることで、訴訟リスクを巧みに回避しているという。

完全オリジナルの新車の開発には膨大なコストがかかる。BYDは確信犯的なコピーによって開発コストを抑え、浮いた資金を品質向上や販売網整備に回す戦略で急成長を遂げた。主力車種の「F3」は「トヨタ・カローラ」のコピーとされるが、車格の割に安い価格とそこそこの品質が支持され、2009年は中国で最も売れた乗用車となった。

北京ショーで初公開した中型セダン「i6」は、「ホンダ・アコード」のコピーと言われる「F6」の改良版だが、内外装のデザインは独自色を強めている。コピーをベースに改良を重ねることで、オリジナリティと収益性の両立を図る作戦だろう。BYDはもともと1995年に電池メーカーとして創業し、リチウムイオン電池の技術をめぐって日本や欧米メーカーとの特許訴訟をくぐり抜けてきた。その“ノウハウ”を、2003年に参入した自動車事業に生かしているようだ。海外メーカーにとっては侮りがたい存在といえる。

「奇瑞 風雲2」
「奇瑞 風雲2」
「奇瑞 風雲2」のインテリア
「奇瑞 風雲2」のインテリア

■奇瑞、自主開発のパイオニアの悩み

中国メーカーの自主開発ブームのパイオニアは、吉利でもBYDでもなく奇瑞である。1997年の創業時はコピー車からスタートしたが、独自の内外装に加えて車台やエンジンの自社開発にいち早く乗り出すなど、技術志向の強いメーカーと言われている。

しかし、奇瑞の動向を6〜7年前からウォッチしてきた筆者にとって、今回の北京ショーは同社の悩みが表れているように感じた。奇瑞は過去2回の北京ショーでそれぞれ10車種を超える新型車を初公開したが、今回は小型セダンの「G5」のみ。これとて既存の「A5」のビッグマイナーチェンジ版だ。

背景には、巨額の開発費を投じた新型車が思うように売れていない現実がある。コピー車の価格に慣れてしまった中国の消費者は、開発費がかかっているぶん割高なオリジナル車種より、安いコピー車かブランド力のある外資系メーカーを選ぶ傾向があるのだ。実際、奇瑞で最も売れているコンパクトカー「QQ」は、7年前に発売したコピー車である。

そこで奇瑞は、オリジナル車種の品質向上とコストダウンに力を入れている。北京ショーのブースで筆者の目に止まったのは、2009年10月に発売した「風雲2」というモデル。1.5リッターで5万元台後半(80万円弱)という価格のわりには、内外装ともそこそこの品質を実現しているように見えた。北京の路上でも走っている実車を何度か見かけたから、かなり売れているのだろう。トライアンドエラーを繰り返しながらも、奇瑞は着実に進化していると見た。

(文と写真=岩村宏水)

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