第4戦中国GP「静のバトン、動のハミルトン」【F1 2010 続報】

2010.04.19 自動車ニュース
雨で読みづらくなったコンディション、2度のセーフティカー、すべてを味方につけたジェンソン・バトンが優勝。4戦2勝でチャンピオンシップトップに躍り出た。ちなみに2004年からF1カレンダーに名を連ねる中国GPで2度優勝したものはまだいない。(写真=McLaren)
第4戦中国GP「静のバトン、動のハミルトン」【F1 2010 続報】

【F1 2010 続報】第4戦中国GP「静のバトン、動のハミルトン」

2010年4月18日、上海インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第4戦中国GP。予選でまたも無敵の速さをみせつけフロントローを独占したレッドブルだったが、雨に見舞われた決勝日の主役は、またしても天候とタイヤを味方につけたワールドチャンピオンだった。

予選5番手からスタートしたバトン(写真)は、各車が早々に浅溝ウェット用のインターミディエイトタイヤへと交換するのを尻目にドライタイヤに賭け、2位にジャンプアップ。その後ニコ・ロズベルグを抜きトップに立つと、今季2勝目までまっしぐら。チームメイトのルイス・ハミルトンは、序盤のタイヤ交換で順位を落としたが、セバスチャン・ベッテルやミハエル・シューマッハーらをオーバーテイクし見事2位表彰台。マクラーレンは久々の1-2フィニッシュを達成した。(写真=McLaren)
予選5番手からスタートしたバトン(写真)は、各車が早々に浅溝ウェット用のインターミディエイトタイヤへと交換するのを尻目にドライタイヤに賭け、2位にジャンプアップ。その後ニコ・ロズベルグを抜きトップに立つと、今季2勝目までまっしぐら。チームメイトのルイス・ハミルトンは、序盤のタイヤ交換で順位を落としたが、セバスチャン・ベッテルやミハエル・シューマッハーらをオーバーテイクし見事2位表彰台。マクラーレンは久々の1-2フィニッシュを達成した。(写真=McLaren)
マレーシアに続き3位でゴールしたメルセデスのニコ・ロズベルグ(写真)。予選4位から、レース序盤はドライタイヤに賭けトップとして周回を重ね、雨脚が強くなりコースオフしバトンにその座を奪われたが、力強い走りでポディウムの一角を勝ち取った。チャンピオンシップではバトンに次ぐ2位。(写真=Mercedes Benz)
マレーシアに続き3位でゴールしたメルセデスのニコ・ロズベルグ(写真)。予選4位から、レース序盤はドライタイヤに賭けトップとして周回を重ね、雨脚が強くなりコースオフしバトンにその座を奪われたが、力強い走りでポディウムの一角を勝ち取った。チャンピオンシップではバトンに次ぐ2位。(写真=Mercedes Benz)

■最速は必ずしも勝利につながらない

バーレーン、オーストラリアと開幕2戦を信頼性不足で棒に振ったレッドブルが、第3戦マレーシアで念願の1-2フィニッシュを達成。2010年の最速マシンの呼び声高い「RB6」が、続く中国でもその速さを顕示し、予選ではセバスチャン・ベッテルが4戦目にして3度目のポールポジションを獲得。マレーシアのポールシッター、マーク・ウェバーとともにレッドブルが最前列を占拠した。

だが、昨年の中国GPのようにレースでもレッドブルが1-2フィニッシュ、とはならなかった。予報の通りスタート前に降りはじめた雨により勢力図は大きく書き換えられ、予選で引き離され5位、6位に終わったマクラーレンの1-2という予想外の結果をもたらした。

弱くなったかと思えば強さを増す雨はコースコンディションを読みづらいものとし、チェッカードフラッグ後に笑うものとそうでないものを切り分けた。笑ったものはいうまでもなくウィナーのジェンソン・バトン、2戦連続3位と波に乗るニコ・ロズベルグ、入賞を果たしたルノーの2人といった面々だった。
濡れた路面でもスタートからのドライタイヤを履き続けた彼らは、ほかのドライバーたちが浅溝のインターミディエイトタイヤに履き替えるという(結果的に時期尚早だった)ギャンブルに出たいっぽうで、順位を上げることに成功した。

もちろん、これだけが勝敗を分けたわけではない。特にバトンは持ち前のタイヤをいたわるウルトラスムーズな走行をゴールまで貫き、序盤同じドライに賭けトップを走行していたロズベルグがコースオフした一瞬を逃さず首位を奪い、終盤アグレッシブな走りで追い上げてきたチームメイトのルイス・ハミルトンを従え、1時間46分のレースをトラブルとは無縁で走り切った。

そのレース運びは、マクラーレンで初優勝を飾った第2戦オーストラリアと同様、荒れたコンディションの先を読み早々にタイヤ交換を決断し、その後タイヤのライフを長持ちさせながら戦いをコントロールするというものだった。

レッドブルの2台は、崩れた天候に手を焼き、ペースはあがらず、ベッテル6位、ウェバー8位と下位に沈んだ。
絶対的なスピードは、必ずしも勝利を約束してくれるものではない。フライアウェイ4戦をまとめると、こう言えるだろう。

バトンやロズベルグ同様、ドライ組として上位に食い込んだルノーのロバート・クビサ(写真手前)。3位から後退し結果5位に終わったが、僚友ビタリー・ペトロフとともにチームにポイントを献上した。ロシア人ドライバーのペトロフは7位入賞で自身初得点。チームはコンストラクターズランキング5位につける。(写真=Renault)
バトンやロズベルグ同様、ドライ組として上位に食い込んだルノーのロバート・クビサ(写真手前)。3位から後退し結果5位に終わったが、僚友ビタリー・ペトロフとともにチームにポイントを献上した。ロシア人ドライバーのペトロフは7位入賞で自身初得点。チームはコンストラクターズランキング5位につける。(写真=Renault)
予選でフロントローを独占したレッドブルはドライでは他を寄せつけない速さで駆け抜けた。しかし雨の決勝では一転苦戦。4戦3度目のポールポジションからスタートしたベッテル(右)は6位、マーク・ウェバー(左)は8位に終わった。(写真=Red Bull Racing)
予選でフロントローを独占したレッドブルはドライでは他を寄せつけない速さで駆け抜けた。しかし雨の決勝では一転苦戦。4戦3度目のポールポジションからスタートしたベッテル(右)は6位、マーク・ウェバー(左)は8位に終わった。(写真=Red Bull Racing)
目の覚めるような飛び出しでトップを奪ったかにみえたが、ジャンプスタートでドライブスルーペナルティ。しかし最終的に4位まで挽回しゴールするのだから、フェルナンド・アロンソ(写真)の底力は侮れない。フェラーリのもう1台、フェリッペ・マッサは、地味なレースで9位完走。ポイントリーダーから6位に落ちた。(写真=Ferrari)
目の覚めるような飛び出しでトップを奪ったかにみえたが、ジャンプスタートでドライブスルーペナルティ。しかし最終的に4位まで挽回しゴールするのだから、フェルナンド・アロンソ(写真)の底力は侮れない。フェラーリのもう1台、フェリッペ・マッサは、地味なレースで9位完走。ポイントリーダーから6位に落ちた。(写真=Ferrari)

■マクラーレン、久々の1-2

軽い雨が降りはじめた頃、レースは3番グリッドのフェルナンド・アロンソのジャンプスタートで幕を開けた。シグナルが変わる直前に動き出したフェラーリは、レッドブルの2台をすぐさま追い抜き大きなリードを築いて1コーナーに飛び込むのだが、やがてドライブスルーペナルティが科されて順位を落とすことになる。

オープニングラップ中、後方グループのビタントニオ・リウッツィがスピンし、セバスチャン・ブエミと小林可夢偉が巻き込まれる多重クラッシュが発生。この日1回目のセーフティカーが出動した。

ほとんどのマシンがドライタイヤでスタートしたのだが、徐行走行で2周を終えると、レッドブル、フェラーリ、ハミルトンやミハエル・シューマッハーは雨用インターミディエイトに交換するためピットへと飛び込む。

4周目にレースが再開すると、ロズベルグが首位、2位バトン、3位ロバート・クビサ、4位ビタリー・ペトロフと、ピットに入らずドライを履いたままのマシンが上位に名を連ねた。再開後のコンディションは2周もするとスリック組に加勢したことがわかり、インターミディエイト組はそそくさと再びピットへと駆け込みドライのスリックに履き直した。これで上位4台は後続に対し大きなマージンを築くことに成功した。

このインター→ドライへの交換の際、13位ハミルトンと14位ベッテルはピットロード入り口、そして作業後のピットアウト時にもサイド・バイ・サイドの激しいつば迫り合いを演じ、これが危険行為ととらえられレース後審議の対象となった(結果2人はおとがめだけでペナルティを免れた)。

トップを快走するメルセデスのエース、ロズベルグだったが、雨脚が強くなると、一瞬足下をすくわれコースオフ。これをチャンピオンが見逃すわけはなく、19周目にバトンが首位の座を奪った。ここがドライタイヤの限界点となり、1位バトンをはじめ各車がインターミディエイトへチェンジした。

この時点で1位バトン、2位ロズベルグ、3位クビサ、4位ペトロフのリードが脅かされることはなかったのだが、この上位陣の心拍数が一気に上がる出来事が起きる。21周目、ハイメ・アルグエルスアリとブルーノ・セナの軽い接触で部品がコースに飛び散り、2回目のセーフティカーが登場。バトンをはじめ上位陣が築いたマージンは蒸発してなくなってしまった。

だがバトンはこのピンチも落ち着いてしのぎ、再開後もレースをリード。この落ち着きこそ現チャンピオンの勝因となった。

このレースの盛り上げ役は、落ち着いたバトンではなく、順位の浮き沈みが激しかったチームメイトのハミルトンが担うことになった。
ベッテルとはピットの外でも丁々発止とやり合ったほか、2度目のセーフティカー後にはしぶとく抵抗する5位ミハエル・シューマッハーをオーバーテイクし、程なくして4位ペトロフを料理し、3位クビサを蹴散らし、残り20周というあたりでロズベルクをも抜き2位へ躍り出てゴールを迎えた。

2007年シーズンの第13戦イタリアGP以来となる久々のマクラーレン1-2フィニッシュは、静のバトン、動のハミルトンにより達成された。ドライビングキャラクターもストラテジーも違う同じチームのドライバーは、ともに荒天をバネにトップ2を勝ち取った。

冬のテストで好調が伝えられたザウバーは、序盤4戦いいところなしに終わった。ペドロ・デ・ラ・ロサ(写真手前)は予選17位からメカニカルトラブルでリタイア、小林可夢偉は同15位からクラッシュに巻き込まれ0周で戦列を去った。新興3チームと比べても低い信頼性に、ドライバー2人もなすすべがない。(写真=Sauber)
第4戦中国GP「静のバトン、動のハミルトン」【F1 2010 続報】

■天は雨(と灰)を降らせた

バーレーンでアロンソ、オーストラリアでバトン、マレーシアでベッテル、そして中国でバトンと、4戦で勝者は3人誕生し、1-2フィニッシュは3回を数えた。マクラーレン、フェラーリ、レッドブル、メルセデスの4強がトップ争いを繰り広げるすぐ後ろで、ルノーやフォースインディアというダークホースが第2グループで競り合っている。

2010年のスタートは、追い抜きほぼ皆無の開幕戦で持ち上がった“つまらないレース・シーズン”騒動が嘘のように、激しいコンペティションではじまったようにみえる。しかし、オーストラリアと中国は雨が追い抜き多きレースを演出し、マレーシアでも予選のスコールがグリッドの様相を変え、レースをおもしろいものにした。だがドライ状況でオーバーテイクがしづらいことは変わっていないだろうし、無給油レースでタイヤの寿命が長いと、1ストップの単調な展開になりやすいことも否定できない。序盤戦、天は雨をもってF1を救ってくれたのかもしれない。

その天は、今度は灰を降らせてF1パドックを悩ませている。アイスランドの火山が、欧州の空の交通を完全に麻痺させ、関係者はヨーロッパへ戻るめどが立っていないという。

次戦のヨーロッパ開幕戦、5月9日のスペインGPに悪い影響が出ないことを祈るばかりである。

(文=bg)

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