第3戦マレーシアGP「レッドブル独走という事実と懸念」【F1 2010 続報】

2010.04.05 自動車ニュース
レッドブル、悲願の1-2フィニッシュ。左から、2位マーク・ウェバー、レッドブルのチーフ・テクニカル・オフィサーである奇才エイドリアン・ニューウェイ、ウィナーのセバスチャン・ベッテル、そして新生メルセデス初表彰台となった3位ニコ・ロズベルグ。(写真=Red Bull Racing)
第3戦マレーシアGP「レッドブル独走という事実と懸念」【F1 2010 続報】

【F1 2010 続報】第3戦マレーシアGP「レッドブル独走という事実と懸念」

2010年4月4日、セパン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第3戦マレーシアGP。開幕から2戦、レースをリードしながら信頼性の問題で真価を発揮できなかったレッドブル・ルノーがマレーシアでついに目を覚まし、独走して1-2フィニッシュを飾った。
この週末、常にスコールを心配していたF1パドックは、他の追随を許さなかったレッドブルの真の力量にこそ懸念を抱くべきだったのかもしれない。

スタートシーン。ポールシッターのウェバー(先頭左)は、チームメイトで予選3位のベッテル(同右)に先を越され、レースはこの順位のままフィニッシュ。(写真=Red Bull Racing)
スタートシーン。ポールシッターのウェバー(先頭左)は、チームメイトで予選3位のベッテル(同右)に先を越され、レースはこの順位のままフィニッシュ。(写真=Red Bull Racing)
メルセデスのチーム内で独自の地位を築きつつあるロズベルグ(写真)。初のフロントローからスタートしマシンの力量差もありレッドブルには追いつけなかった。しかし後続は引き離し、3位表彰台を獲得。いっぽうミハエル・シューマッハーは予選8位から序盤6位を走行したが、10周を過ぎてホイールが緩みマシンストップ、リタイア。(写真=Mercedes)
メルセデスのチーム内で独自の地位を築きつつあるロズベルグ(写真)。初のフロントローからスタートしマシンの力量差もありレッドブルには追いつけなかった。しかし後続は引き離し、3位表彰台を獲得。いっぽうミハエル・シューマッハーは予選8位から序盤6位を走行したが、10周を過ぎてホイールが緩みマシンストップ、リタイア。(写真=Mercedes)

■雨で大荒れの予選

エンターテイメント性という観点からすれば、前戦オーストラリア同様、雨の影響がレースをおもしろくした。ただ日曜日のレースデイではなく、前日の予選を襲ったスコールがもたらした演出だった。

全24台のうち後方7台分のグリッドを決める予選Q1の時点で、コースの一部が雨に見舞われていた。天候が好転すると見込んでタイムアタックを遅らせたのがマクラーレン、フェラーリという上位チーム。しかし状況は良くなるどころかひどくなり、セッション早めに記録されたタイムを上まわることは困難となった。

結果、これまで新興3チーム6台の指定席だった後方グリッドに意外な顔ぶれが並んだ。フェラーリのフェリッペ・マッサ21位、フェルナンド・アロンソ19位、マクラーレンのルイス・ハミルトン20位、ジェンソン・バトン17位。バトンは次のQ2進出タイムを記録していたが、Q1でコースアウトしグラベルにつかまったことでQ2に出走できなかった。

予選で失敗するチームがいたいっぽうで、成功するドライバーもいた。もっともうまくいったのはレッドブルのマーク・ウェバー。Q1終了ギリギリのタイミングでQ2進出を決め、Q3まで駒を進めると、ウェバーはタイヤを弱雨用インターミディエイトに替え、賭けに出た。このギャンブルが奏功し、1.3秒ものマージンを築きポールポジションを獲得した。

予選2番手はメルセデスのニコ・ロズベルグで、自身初のフロントロースタート。3番グリッドのベッテルの後ろには、フォースインディアのエイドリアン・スーティルが4位につけ、上位得点を狙えるポジションを得た。
雨の幸運は、ザウバーの小林可夢偉にも訪れた。初めてQ3に進出し、最終的にポイント獲得に期待が持てる9番グリッドを手に入れた。

トップドライバーの一群が後方からスタートするという、いわばリバースグリッド状態は、天候という不確定要素とあわせ、レースの展開を読めないものにしていた。だがフェラーリやマクラーレンがいくら激しい追い上げをみせても、優勝争いは決勝スタート直後の1コーナーで決定的となっていた。

今年、たびたび上位に食い込む活躍をみせるフォースインディア。ここマレーシアでは、エイドリアン・スーティル(写真手前)が、同じメルセデスエンジンを積むマクラーレンのルイス・ハミルトンを抑え切り、5位入賞を果たした。(写真=Force India)
今年、たびたび上位に食い込む活躍をみせるフォースインディア。ここマレーシアでは、エイドリアン・スーティル(写真手前)が、同じメルセデスエンジンを積むマクラーレンのルイス・ハミルトンを抑え切り、5位入賞を果たした。(写真=Force India)
予選で失敗したハミルトン(写真)は、20番グリッドから6位まで挽回(ばんかい)。しかしフォースインディアの壁を切り崩すことはできず。(写真=McLaren)
予選で失敗したハミルトン(写真)は、20番グリッドから6位まで挽回(ばんかい)。しかしフォースインディアの壁を切り崩すことはできず。(写真=McLaren)
今年復活したイギリスの名門ロータスの名前だが、新生チームはマレーシアの血が濃く流れている。過去2戦は新興チーム中のトップランナーだったが、準地元では苦戦し、ヤルノ・トゥルーリが5周遅れの最後尾17位、ヘイキ・コバライネンは完走扱いとならず。(写真=Lotus)
今年復活したイギリスの名門ロータスの名前だが、新生チームはマレーシアの血が濃く流れている。過去2戦は新興チーム中のトップランナーだったが、準地元では苦戦し、ヤルノ・トゥルーリが5周遅れの最後尾17位、ヘイキ・コバライネンは完走扱いとならず。(写真=Lotus)

■レッドブルという弾丸

決勝日はドライで迎えた。天気予報と気象レーダーをにらみながら、気まぐれな空模様をあれこれせんさくしてみたものの、結局、スタートからゴールまで空は泣かなかった。

シグナルが変わると、ポールシッターのウェバーがホイールスピンする背後で、チームメイトで3番グリッドのベッテルが勢いよく発進。1コーナー手前で不用意にスペースを空けてしまったウェバーの横を、ベッテルが抜けていった。

そしてこの2台の弾丸は、3位ロズベルグ、4位クビサら後続をあっという間に振り払い、この日の優勝争いを独占した。いや、争いは基本的に起こらず、ミスなく走るベッテルと、スタートの(わずかな)失敗に加え、最初のピットストップでタイヤ交換に若干手間取ったことにより2位が決定的となったウェバーのタンデム走行となった。

“リバースグリッド”となった2強一群のスタートは、ハミルトンが20位から一気に13位まで順位をあげたほか、マッサ14位、バトン15位、アロンソ16位とそれぞれポジションアップに成功。その後のハミルトンの追い上げは目覚ましく、最終的に6位まで挽回(ばんかい)するのだが、目の前を走る5位のマシンを抜きあぐねた──そのマシンとは、マクラーレンと同じメルセデスエンジンを積む、フォースインディアである。

昨年、ベルギーGPでまさかの2位入賞にわいたフォースインディア。高速専用マシンと思われたが、今年は様相がまったく違い、4強(フェラーリ、マクラーレン、レッドブル、メルセデス)に食い込むすばらしいパフォーマンスを随所でみせている。
エイドリアン・スーティルは、ストレートスピードがすこぶる速いマクラーレンをしっかり抑え、背後にピタリとついたハミルトンに隙を与えなかった。マクラーレンは、昨年来の技術提携チームに屈したかたちとなった。

前戦オーストラリアのウィナー、バトンは、17番グリッドから早めのタイヤ交換で得点圏内まで盛り返すも、やはり後方スタート組のマッサを抜けずに8位。マッサは7位に終わったが、アロンソはレース中終始ダウンシフトに問題を抱えており、変則的な走行を余儀なくされ、レース残り2周という時点で余分な負荷のかかったマシンを止めざるを得なかった。

このレースの敢闘賞は、トロロッソのハイメ・アルグエルスアリに。予選14番手からルノーのビタリー・ベトロフ、ウィリアムズのニコ・ヒュルケンベルグら実力が並ぶマシンを相手に奮闘し9位完走、自身初ポイントを獲得した。(写真=Toro Rosso)
このレースの敢闘賞は、トロロッソのハイメ・アルグエルスアリに。予選14番手からルノーのビタリー・ベトロフ、ウィリアムズのニコ・ヒュルケンベルグら実力が並ぶマシンを相手に奮闘し9位完走、自身初ポイントを獲得した。(写真=Toro Rosso)
ザウバーの小林可夢偉(写真)は、雨で荒れた予選で9位と好位置につけたが、チームメイトのペドロ・デ・ラ・ロサ同様にフェラーリエンジンの問題でリタイアをきっした。(写真=Sauber)
ザウバーの小林可夢偉(写真)は、雨で荒れた予選で9位と好位置につけたが、チームメイトのペドロ・デ・ラ・ロサ同様にフェラーリエンジンの問題でリタイアをきっした。(写真=Sauber)

■上位8人が15点差の攻防

開幕戦バーレーンではポールポジションからレースをリードし、中盤エンジントラブルで後退、優勝を逃した。2戦目のオーストラリアでもトップ走行中にブレーキが壊れスピン、リタイア──レッドブルとベッテルは、この2戦で2勝分=50点を獲得できたはずだった。
もしトラブルが起きなかったとしたら、昨年ブラウン(現メルセデス)とバトンが成し遂げたことと同じように、ベッテルが開幕から連勝していたかもしれない。それほど、レッドブルの速さは今のところ他を圧倒している。

チャンピオンシップでは、トップのマッサと8位ウェバーとの点差が15点。ポイント制度が変わった今年、1勝につき25点が加算されることを考えると、数字上は僅差の戦いとなっているが……。
信頼性を手に入れたレッドブルが、この先のシーズンで独走状態を築いてしまうと、開幕戦で持ち上がった「今年のF1はつまらない」という議論に追い打ちをかけかねないのではないか──そんな懸念は、マレーシアの天候と同様、取り越し苦労に終わってほしいもの。ライバルの追い上げに期待したい。

次はフライアウェイの最後、第4戦中国GP。決勝は4月18日に行われる。

(文=bg)

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