第136回:【Movie】大矢アキオと走れ!「モンブラン・トンネル」

2010.04.03 エッセイ

第136回:【Movie】大矢アキオと走れ!「モンブラン・トンネル」

「モンブラン・トンネル」の内部。
第136回:【Movie】大矢アキオと走れ!「モンブラン・トンネル」

高速はフランスに限る

フランスでうれしいのは、イタリアよりパンがうまいことと、オートルート(高速道路)の料金所であいさつがあることだ。料金所の収受員が「ボンジュール(こんにちは)」「ボンジュルネ(よい1日を)」といった言葉を気軽にかけてくれる。若いお姉さんだったりすると、さらに心が和らぐ。おかげで「なんでこんなすぐのところに」と嘆くくらい頻繁に料金所がある区間でも、怒りが帳消しになる。

そんな基本的あいさつがなぜうれしいのか? というと、イタリアとあまりに対照的だからだ。イタリアのアウトストラーダの料金所収受員は、いかんヤツが多い。大抵オヤジであいさつもないばかりか、こちらの目も見ない収受員が多い。同僚との会話に夢中だったり、週末ともなるとカルチョの実況ラジオを聴きながらやっている収受員もいる。くわえタバコだと、その煙がボクのクルマにも入ってきそうで体に悪い。

往復通行券は、43.7ユーロ。帰りまで大切に持っていよう。
往復通行券は、43.7ユーロ。帰りまで大切に持っていよう。
イタリア側に出てきた。
イタリア側に出てきた。
トンネルを見守る聖母像。
トンネルを見守る聖母像。

フランス側とイタリア側の違い

閑話休題。
今回の動画リポートは、フランス−イタリアをつなぐ「モンブラン・トンネル」である。フランスでは「トゥネル・ドゥ・モンブラン」、イタリアでは「トラーフォロ・デル・モンテビアンコ」とそれぞれの言語で呼んでいる。
いちばん近くの村は、フランス側がシャモニー、イタリア側がクールマイユールだ。どちらもウィンターリゾートとして有名である。ちなみにクールマイユールからトリノまでは約151kmだ。

トンネルは第二次大戦後間もなく構想が立ち上がり、1959年に着工。1965年7月に開通した。その間僅か6年。今日のイタリアやフランスでは考えられない早いペースに、経済成長に沸く当時の両国が偲ばれる。長さは11.6kmで、上下とも1車線だ。トンネル入口の標高はフランス側が1274m、イタリア側が1381mである。
国をまたいでいるが、正確にいうと地上の国境線とはズレていて、トンネル内の国境はその全長のほぼ真ん中に設定されている。

トンネルは1999年3月に発生した火災死亡事故をきっかけに一時閉鎖。その間に待避所の構造など防災設備を徹底して増強し、3年後の2002年にふたたび開通して今日に至っている。
それとは別に近年は、周辺の村から環境破壊につながる大型トラックの通行を規制すべきとの議論も浮上している。
こうした問題が起こり、また存在することは事実だが、オーストリアとイタリアを結ぶブレンナー峠などと並び、今も南北欧州を結ぶ重要なルートであることもたしかだ。

参考までに普通車の通行料金は、2010年3月現在、往復割引で43.7ユーロ(約5400円)である。

今回は、フランス側からイタリア側に向かった。収録したのは3月初旬。ビデオをご覧いただければわかるようにフランス側とイタリア側では、気温が4度以上も違った。

それに何より両国では太陽の明るさが違う。(彼らがたどったルートは違うものの)ゲーテやワーグナーがあこがれたイタリアの太陽は、まさにこれだったに違いない。だからボクも、モンブランを抜けて帰ってくるたび「イタリアの太陽のもとに来たゼ」と、歴史的詩人や音楽家の気持ちになって感激してしまうのである。たとえパンの味がまずくても、たとえアウトストラーダの料金所の親父が無愛想でも。

(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

【Movie】「モンブラン・トンネル」を走ろう!(前編)


【Movie】「モンブラン・トンネル」を走ろう!(後編)

(撮影・編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住20年という脈絡なき人生を歩んできたものの、それだけにあちこちに顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーター。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストをはじめラジオでも活躍中。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。