最新“クリーンディーゼル事情”がわかるセミナー開催

2010.02.19 自動車ニュース

最新“クリーンディーゼル事情”がわかるセミナーが開催

最新“クリーンディーゼル事情”がわかるセミナー開催

クリーンディーゼル連絡会は、2010年2月15日、「進化するディーゼルエンジンの現状」と題したセミナーを開催した。ディーゼル車の現状から今後の可能性まで、さまざまな情報が提供され、改めてディーゼル車の重要性を認識する場となった。

日本で今後登場するディーゼル車は、原則的には排出ガス基準「ポスト新長期規制」(平成22年排出ガス規制)をパスしなくてはならない。この厳しい基準値をクリアするためにかかる開発コストと、それをペイするだけの販売が見込めるかという点を天秤にかけて、日本市場へのディーゼル車投入を躊躇するメーカーが多いのが実情だ。
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■「ポスト新長期規制」の時代に

「世界最高水準の厳しい規制」といわれる日本の2009年ディーゼル車排出ガス規制、いわゆる「ポスト新長期規制」が、2009年10月から順次適用されている。2010年1月現在、この規制をクリアし国内で販売されるのは「日産エクストレイル」のみ。しかし、CO2(二酸化炭素)排出量削減の観点からは、ディーゼル乗用車の普及は不可欠であり、内外の自動車メーカーが日本での販売に動き出そうとしているいま、ディーゼル車の重要性を再確認しようというのが、この会の目的である。

1時間半のセミナーでは、まず前半でクリーンディーゼル連絡会発起人である金谷年展・慶應義塾大学大学院教授と、前経済産業省クリーンディーゼル普及検討会メンバーでモータージャーナリストの清水和夫氏が、ディーゼルエンジンの現状と最新情報を報告。そして後半では、このふたりに、経済産業省製造産業局自動車課係長(環境・技術担当)の三浦一将氏が加わり、パネルディスカッションが行われた。

慶應義塾大学大学院 金谷年展教授
慶應義塾大学大学院 金谷年展教授
ディーゼル車のシェアは世界的に拡大傾向にあるが、日本では90年代半ば頃から減少傾向にある。燃費に優れるディーゼル車の普及は、CO2排出量の低減につながるとされているだけに、その普及が望まれるところ。
ディーゼル車のシェアは世界的に拡大傾向にあるが、日本では90年代半ば頃から減少傾向にある。燃費に優れるディーゼル車の普及は、CO2排出量の低減につながるとされているだけに、その普及が望まれるところ。
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■2010年は"ディーゼル元年"

最初に講演した金谷氏は、「2010年、ディーゼルこそが地球を救う、日本を救う」と、ディーゼル車の重要性を説いた。金谷氏によれば、西ヨーロッパでは、ディーゼル乗用車の新車登録台数が全体の半数以上を占め、ディーゼルに消極的だったアメリカでも、2009年には、ドイツメーカーのSUVやセダンなどでディーゼル比率が高まっているという。

一方、日本のディーゼル乗用車は、全体のわずか0.1%にとどまっている。CO2排出量を削減するにはディーゼル乗用車の普及は不可欠であり、たとえば日本国内でそのシェアが4%になればCO2は80万トン、10%なら200万トン、30%なら635万トンもの削減が可能となる。仮にディーゼル乗用車のシェアが高まったとしても、新長期規制あるいはポスト新長期規制をクリアしたエンジンなら、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)が増えることはないし、ガソリンと軽油の需要バランスを適正化するためにも、ディーゼル乗用車の普及が望ましいという意見が述べられた。

清水氏は、最近ヨーロッパで試乗したラクシュリークラスのディーゼル乗用車を採り上げて、「これは電気自動車か!? と思うほど、静かでトルクがあった。そんなエンジンが、ヨーロッパではあたりまえに出てきている。いまや高級車セグメントではディーゼル乗用車が8割近くまでシェアを伸ばしているのではないか」と語り、また、電気自動車、スポーツカー、そして、ディーゼル乗用車の加速性能を比較し、その高性能ぶりを紹介した。日本人の多くが抱く、ディーゼル車はうるさい、遅いというイメージは過去の話であり、高いCO2削減効果やクリーンな排出ガスを手に入れたクリーンディーゼルこそ、持続可能なモビリティにとっては「上がりの技術」と結論づけた。

そして、ふたりの講師はともに、ドライビングプレジャーを失うことなく、CO2削減を実現できるクリーンディーゼル乗用車が日本で本格的に動き出す2010年を、"ディーゼル元年"と位置づけ、その普及に期待を込めた。

モータージャーナリストの清水和夫氏
モータージャーナリストの清水和夫氏
経済産業省 三浦一将氏
経済産業省 三浦一将氏
政府は平成22年度予算案に、クリーンエネルギー自動車導入促進対策費補助金を設置。予算に制限はあるものの、通常車両との価格差の1/2以下を補助することで、クリーンエネルギー車の購買を促進する方針を打ち出している。
政府は平成22年度予算案に、クリーンエネルギー自動車導入促進対策費補助金を設置。予算に制限はあるものの、通常車両との価格差の1/2以下を補助することで、クリーンエネルギー車の購買を促進する方針を打ち出している。

■ディーゼル車の燃費はまだまだ伸びる

その後のパネルディスカッションでは、ディーゼルを取り巻く環境や課題、そして可能性など、話題が多岐に及んだ。印象に残った発言を拾ってみよう。

まずは清水氏の発言に注目すると、「石原東京都知事がディーゼル車を問題視したことは間違ってはいなかった。おかげで日本は、予定より早く軽油に含まれる硫黄分を10ppmまで引き下げた。一番きれいな軽油が手にはいるのが日本」と、ディーゼル車普及の環境は整ったことに触れ、さらに、「近年のディーゼルエンジンは、NOxとPMを削減するために、燃費が悪化していた。しかし、排ガス規制をクリアするめどが立ったことから、これからディーゼルは燃費向上に向かっていく」と、その効果について大きな期待が持てると話した。

一方、金谷氏は、「ディーゼルはヨーロッパの技術と思われがちだが、日本からの特許は急増している。ディーゼルは、今後の日本の企業活動、経済活動の発展にとって非常に大きな意味を持つ」と社会的な側面からディーゼル車普及のメリットに触れるとともに、「日本が掲げるCO2 25%カットの目標を、経済活動を犠牲にすることなく実現するためにも、新政権はディーゼルに注目してほしい」と訴えた。

そして三浦氏は、「低炭素社会を実現するために、国としては電気自動車やプラグインハイブリッド車、クリーンディーゼル車といった"次世代自動車"の普及に力を入れている。電気自動車やプラグインハイブリッドは新しい技術で、まだ歩き始めたばかり。ディーゼルはこれらに比べると価格的にも有利で、普及の可能性は高い。短期的に見れば、CO2削減に一番貢献できるのがクリーンディーゼル車」との期待を示した。そしてその普及を後押しするため、「クリーンディーゼル車の割高感を払拭すべく、国は2009年度からクリーンディーゼル車購入の際、ガソリン車との価格差の半分を補助。またクリーンディーゼル車は100%エコカー減税の対象」と、国の施策をアピールした。

さて、一日も早い普及が望まれるクリーンディーゼル乗用車だが、そのためには、購入可能なモデルが増える必要があり、また、多くのドライバーがその実力を知る機会が大切だ。日本および海外メーカーには、これまで以上に積極的な展開を願うとともに、われわれメディアも、古いディーゼル車のイメージを払拭し、いまのディーゼル車の真の姿を伝えていく必要性を感じた。

(文=生方聡)

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