第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】

2012.10.15 自動車ニュース

【F1 2012 続報】第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」

2012年10月14日、韓国の韓国インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第16戦韓国GP。前週の日本GPのリタイアで4点に激減したポイントリーダー、フェルナンド・アロンソのアドバンテージは、セバスチャン・ベッテルの3連勝でついについえた。

■125点を奪い合うプレーオフへ

まれにみる混戦といわれた2012年シーズンも、サマーブレイクが明けた9月の第12戦ベルギーGPから日本GPまでの4戦では、マクラーレン2連勝(ジェンソン・バトン、ルイス・ハミルトン各1勝)、続いてレッドブル2連勝(いずれもセバスチャン・ベッテル)と、2強の活躍が際立ってきていた。

この4レースを終え、ドライバーズチャンピオンシップのトップ2となったのは、フェラーリのフェルナンド・アロンソと、レッドブルのベッテル。おそらく最終局面で今季のタイトル争いに残るであろう2人の過去4戦の戦績を比べてみる。

アロンソはベルギーGPスタートで多重クラッシュに巻き込まれリタイア。一方のベッテルは第9戦イギリスGP以来となる久々の表彰台2位を得た。ベルギーGP前の時点でポイントリーダーのアロンソが持っていたアドバンテージは40点あったが、無得点が響き24点に減った。

続くイタリアGP。フェラーリは地元で好調だったものの予選でアロンソのマシンにトラブルが発生し10番グリッド、しかしレースではみるみる順位を上げ3位でフィニッシュした。ベッテルはマシンの異常を感じゴール目前でストップ、ポイント圏外の22位完走扱いとなった。アロンソの貯金は、今度は37点に増えた。

シンガポールGPでも、2強に劣るマシンを駆りアロンソは予選5位から3位でゴール。ベッテルはルイス・ハミルトンのリタイアに助けられ優勝が転がり込んできた。フェラーリのエースは29点先行。まだ1勝分(25点)以上の開きがあった。

そして先週の日本GP。6番グリッドからスタート直後にキミ・ライコネンと接触、タイヤがパンクしてまたしても数百メートルで戦列を去ったアロンソに対し、ベッテルはポールポジションから圧勝した。いまや首位アロンソと、ランキング2位からトップの座を狙うベッテルとの間には4点の差しかなくなっていた。

日本GP後のポイントテーブル上位はこういう顔ぶれとなった。
1位 フェルナンド・アロンソ 194点
2位 セバスチャン・ベッテル 190点(-4)
3位 キミ・ライコネン 157点(-37)
4位 ルイス・ハミルトン 152点(-42)
5位 マーク・ウェバー 134点(-60)
*カッコ内はトップとの点差

鈴鹿を後にするアロンソが「ミニ・チャンピオンシップ」と称した残り5戦。タイトルにふさわしいものが生き残り、いよいよ頂上決戦を迎える。1勝=25点、最大125点を奪い合うプレーオフの始まりだ。

第8戦ヨーロッパGP終了から首位の座を守るアロンソに必要なのは、特に予選での速さ。過去4戦でグリッド位置は5位、10位、5位、6位。この間2度リタイアを喫したのも、混み合うポジションからスタートを余儀なくされたためとも言える。一方で、アロンソの強みは驚くほどの安定感にある。今年リタイアしたのは上記の2回だけで、あとは表彰台8回(うち優勝3回)を含み、今季完走した全戦でポイントを獲得している。

今年初めて2連勝したドライバーのベッテルは、余勢を駆って3年連続となるチャンピオンを目指したい。ただ、圧巻のポール・トゥ・ウィンを飾った鈴鹿が印象に残るものの、シンガポールでの勝利はいわば“棚ぼた”。さらにヨーロッパGP、イタリアGPで出たルノーエンジンのオルタネータートラブルという、マシンの信頼性に不安も残る。

アジア・ラウンド3戦目は、今年で3回目の開催となる韓国GP。初年度の2010年にはレースをリード中にエンジン故障でリタイア、翌年には優勝した、ベッテルが得意とする霊岩(ヨンアム)が舞台となる。
アロンソは持ち前の安定感とレースペースの良さを武器に携え、1つでも上のグリッドから優勝を狙いたい。そしてワイルドカードとして、韓国で大幅なマシン改良を施してきたロータスのライコネンや、マクラーレン在籍最後の年に有終の美を飾りたいハミルトンも忘れてはならない。

■レッドブルが最前列グリッド、ポールシッターはウェバー

金曜日と土曜日の3回のフリー走行中2回で最速タイムを記録したのはベッテル。この週末の中心はやはりレッドブルだった。

予選に入ってもその流れは変わらず、Q1、Q2でもベッテルがトップ。そして迎えたトップ10グリッドを決めるQ3になると、今度はチームメイトのウェバーが「ほぼ完璧」と語るほどのアタックでポールポジションを獲得した。
ウェバーにとっては実質今季最初(5月のモナコGPではミハエル・シューマッハーのペナルティーで予選1位を得ている)、エンジンサプライヤーのルノーにとっては記念すべき200回目となる予選P1だ。ベッテルは最初のセクターでタイムを失い2番グリッド。最前列はレッドブル独占となった。

マクラーレンのハミルトンが3番グリッドにつけた。Q1では17位、あと1つ落ちればQ2に進出できないという危ういポジションだったが、最終的にはレッドブルに次ぐスポットを得た。チャンピオンシップリーダーのアロンソは4位。サマーブレイク後の5戦でもっともいい場所からのスタートだ。

ダウンフォース増大を狙った「コアンダ・エキゾースト」を搭載したロータス「E20」を駆り、ライコネンが予選5位、ロメ・グロジャンは7位につけた。前戦日本GPで約2年ぶりの表彰台となる2位入賞を果たしたフェラーリのフェリッペ・マッサは6位。以下、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグ、そしてメルセデスの2台、ニコ・ロズベルグとシューマッハーがトップ10のしんがりをつとめた。

■ベッテル、スタートでトップに

ランキングトップから60点後方のウェバーがポールポジション、わずか4点差のベッテルが路面状況が悪い2番グリッド。レッドブルの2人にチームオーダーが出てもおかしくない位置関係だったが、そんな計略も不要だった。

シグナルが変わりレースがスタートすると、若干のホイールスピンでもたつくウェバーにベッテルが襲いかかり最初のコーナーで1位の座を仕留めた。ウェバーは続く長いストレートで僚友に並びかけるが抜けず。この日真っ先にチェッカードフラッグを受けるドライバーは、この時点で決まってしまったと言っていい。

一番トップに立ってほしくないドライバーが早々に首位に立つ ─ アロンソにとっては出だしから旗色が悪い展開だが、それでもスタートでハミルトンを抜き3位に上がり、レッドブルの2台を追った。

3位から4位に落ちたハミルトンはタイヤの消耗が激しく、55周レースの早くも14周目にスーパーソフトからソフトタイヤに変更。しかしその後も改善せず、21周目にはマッサにも抜かれ、ここでレッドブル1−2、フェラーリ3−4のフォーメーションができあがった。

レース後、ハミルトンのマシンにはリアのアンチロールバーに異常があり、これがタイヤとハンドリングに悪影響を及ぼしていたことが分かった。2ストップがほとんどだった今回、ハミルトンは3ストップで10位完走、1点獲得。ランキング首位から62点離された2008年王者は、タイトル争いにおける敗北宣言を口にした。

■どのチームもなし得なかった1−2フィニッシュ

1位ベッテルは2位ウェバーに最大10秒のマージンを築き、戦況は既にベッテルの支配下にあった。だが、レッドブルにも問題がなかったわけではない。タイヤ、特にフロントをいかにもたせるかという課題である。
ウェバーはレース後、タイヤをマネージしながらの走行であったことを語り、トップ独走のベッテルにも、レース中、無線でタイヤをいたわるようさかんに指示が飛んでいた。

この状況を知ってか、せめてウェバーを食いダメージを最小に抑えたい3位アロンソは終盤必死に猛チャージをかけたが、“跳ね馬”は“猛牛”にかなわず、3位表彰台がやっとだった。
アロンソにとっては4位がライバルではなく、チームメイトのマッサだったことが幸いだった。アロンソの背後に近づくマッサには、ピットから無線で「間隔をあけるように」という“命令”が下っており、フェラーリのエースは前方にのみ集中できたのだ。

いずれにしても、ベッテルはタイヤを最後までもたせ、鮮やかな3連勝、今季4度目の勝利を飾った。ウェバーにとっては優勝した7月の第9戦イギリスGP以来となるポディウム。そしてレッドブルは、今季どのチームもなし得なかった1−2フィニッシュを決めた。

■ともに3度目のタイトル獲得を目指す同士の対決

イタリアGP終了時点、ランキング首位アロンソと4位ベッテルの間には39点もの差があった。それがわずか3戦で帳消しとなったばかりか、6点上回りチャンピオンシップリーダーになったのだから、ベッテルの勢いは本物と言っていい。

韓国GPを終えた選手権ランキングはこうなった。
1位 セバスチャン・ベッテル 215点
2位 フェルナンド・アロンソ 209点(-6)
3位 キミ・ライコネン 167点(-48)
4位 ルイス・ハミルトン 153点(-62)
5位 マーク・ウェバー 152点(-63)
*カッコ内はトップとの点差

2012年のF1は、インド、アブダビ、アメリカ、ブラジルの4戦=100点を残すのみ。世界の頂点に立つのは、ともに3度目のタイトル獲得を目指すベッテルか、アロンソか? それとも2007年の時と同じように、ライコネンが大逆転勝ちを収めるのか?

次は2回目の開催となるインドGP。決勝レースは10月28日に行われる。

(文=bg)

韓国GPの表彰台。セバスチャン・ベッテル(左から3番目)はシンガポール、日本に続く3連勝を飾った。2位にはマーク・ウェバー(同2番目)が入り、レッドブルは今季初の1−2フィニッシュを達成。ポディウムに上がったレッドブルのチーフ・テクニカル・オフィサー、エイドリアン・ニューウェイ(一番左)の顔もほころぶ。3位はフェラーリのフェルナンド・アロンソ(一番右)。(Photo=Red Bull Racing)
【F1 2012 続報】第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」
スタートシーン。ポールシッターのウェバー(先頭右側)はホイールスピンが多く出遅れ、代わりに予選2位のベッテル(その左)がトップを奪った。ベッテルの後ろには、4位から3位に上がったアロンソ。(Photo=Red Bull Racing)
第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】
韓国を得意とするベッテルは週末を通じて好調さをキープ。予選で失敗しポールこそ逃したが、レースではスタートで首位に立つと2位ウェバーを従えて好走。今季4度目の勝利を記録し、ついにポイントリーダーのアロンソを抜きランキングでも1位にのぼりつめた。(Photo=Red Bull Racing)
第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】
5月のモナコGPで、ミハエル・シューマッハーのペナルティー降格による予選1位獲得があったが、自身の手によるポールポジションは今季初めて。しかしウェバーはその好位置を生かせず、スタートでベッテルに先行されると、タイヤをいたわりながらの追走に終始した。一時は3位アロンソに1秒台まで迫られたが2位の座を守り切り、優勝した第9戦イギリスGP以来となる表彰台にのぼった。(Photo=Red Bull Racing)
第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】
ベスト・オブ・ザ・レスト ─ レッドブル2台に次いで3位に入ったフェラーリのアロンソ(写真前)は、第8戦ヨーロッパGP終了以来守り続けてきたランキング1位の座をベッテルに明け渡した。それでもレース後は、「今日のわれわれのパフォーマンスには満足すべきだ」とクールなコメント。確かにコース上でもコンストラクターズランキングでもマクラーレンを凌駕(りょうが)し、ここ数戦で一番の力走をみせたスクーデリアだが、残り4戦、跳ね馬より格段に速い猛牛を倒すのは困難を極めそうだ。フェラーリのもう1台、フェリッペ・マッサは日本GPに次ぐ好走で4位、チームはこのブラジル人の来季残留をほぼ決めたようだ。(Photo=Ferrari)
第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】
予選は地獄、レースは天国 ─ トロロッソは下位グリッドからダブル入賞にまで順位を挽回した。ジャン=エリック・ベルニュ(写真前)は16番グリッドから8位、ダニエル・リチャルド(同後ろ)はギアボックス交換で5グリッドダウンの21番グリッドから9位入賞を果たした。今季はなかなかポイントが稼げていないトロロッソは21点で現在コンストラクターズランキング9位。8位のウィリアムズは37点前方、新興3チームのトップである10位マルシャは無得点。(Photo=Toro Rosso)
第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】
予選3位から10位完走1得点。マクラーレンのルイス・ハミルトンは韓国で苦しい戦いを強いられた。その理由はリアのアンチロールバーの不調にあったようで、ほとんどが2ストップを選択した今回、3度タイヤ交換をしなければならなかった。レース終盤には、コース脇のはがれた人工芝をマシンに付けての危うい走行を披露。ランキングトップから62点も差をつけられたハミルトンは、タイトル争いからの脱落を認めざるを得なかった。(Photo=McLaren)
第16戦韓国GP「猛牛を駆るベッテルの猛追」【F1 2012 続報】
日本GPでの3位初表彰台で世界的に注目度が増したザウバーの小林可夢偉。韓国GP前、「来季のシートのためにスポンサーを探さないといけない」とコメントしこれまた話題をさらった。予選ではQ2どまりの13位。決勝ではオープニングラップでニコ・ロズベルグ、ジェンソン・バトンらとサイド・バイ・サイド状態になり、行き場を失ったザウバーは両車と接触してしまった。ロズベルグ、バトンともリタイア、小林にはドライブスルーペナルティーが科され、接触で負ったダメージにより17周でリタイアした。(Photo=Sauber)
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