WEC第7戦 ホームコース富士でトヨタ激闘を制す

2012.10.15 自動車ニュース
No.7 トヨタTS030 ハイブリッド
(写真=トヨタ自動車)
【WEC 2012】第7戦

WEC第7戦 ホームコース富士でトヨタ激闘を制す

今季よりスタートした耐久レースシリーズ、世界耐久選手権(WEC)の第7戦決勝が、2012年10月15日、富士スピードウェイで開催された。

(写真=トヨタ自動車)
(写真=トヨタ自動車)
(写真=アウディ)
(写真=アウディ)
No.1 アウディR18 e-tron クワトロ
(写真=アウディ)
No.1 アウディR18 e-tron クワトロ
(写真=アウディ)

■トヨタとアウディのハイブリッド対決

スポーツカーレースによる世界選手権は1950年代に始まっているが、参加台数の減少から当時のスポーツカー世界選手権(SWC)が1992年に終焉(しゅうえん)を迎えると、スポーツプロトタイプカーが参戦する世界規模のレースはルマン24時間やセブリング12時間などの単発イベントのみとなった。それが、ルマン24時間を取材するACO(フランス西部自動車クラブ)と国際自動車連盟(FIA)が手を結び、ルマン24時間を戦うマシンによる世界選手権を設立。今年はセブリング12時間(アメリカ)、スパ6時間(ベルギー)、ルマン24時間(フランス)、シルバーストーン6時間(イギリス)、サンパウロ6時間(ブラジル)、バーレーン6時間(バーレーン)、富士6時間(日本)、上海6時間(中国)の全8戦が繰り広げられることになった。

レースは、プロトタイプカーによるLMP1とLMP2、そしてGTカーによるLMGTE ProとLMGTE Amの計4クラスで競われるが、注目株はなんといってもその最高峰に位置するLMP1クラス。それも、「アウディR18 e-tron クワトロ」と「トヨタTS030 ハイブリッド」によるハイブリッド対決がファンにとっては最大の関心事となった。
ちなみに、これまでの戦いは4戦3勝でアウディ優勢。トヨタは第5戦ブラジルで初優勝を遂げているが、ホームコースである富士スピードウェイで優勝できれば、一般にあまり知られていない彼らの活動をアピールする絶好のチャンスとなる。TS030を走らせるトヨタレーシングが相当の意気込みをもってこの1戦に臨んだことは間違いないだろう。

そんなアウディとトヨタの戦いをひと言で言い表せば「ウサギとカメ」となる。ウサギ(トヨタ)は速いが、燃費が悪いために6時間レースではアウディよりも1回余計にピットストップを行わなければならない。
いっぽう、カメ(アウディ)のペースはウサギ(トヨタ)に及ばないものの、燃費がいいのでピットストップの回数は少ない。結果として、実力は五分と五分。どちらが勝ってもおかしくない緊迫した戦いとなることが予想された。

(写真=トヨタ自動車)
(写真=トヨタ自動車)
(写真=アウディ)
(写真=アウディ)
No.25 ADRデルタ(オレカ03ニッサン)
(写真=工藤考浩)
No.25 ADRデルタ(オレカ03ニッサン)
(写真=工藤考浩)

予選を制したのはNo.7トヨタ。ただし、2番グリッドを得たNo.1アウディとのタイム差は0.140秒でしかない。しかも、3番手にはNo.2アウディがつけている。ちなみに、2台を走らせるアウディに対してトヨタのエントリーはたったの1台。おまけに、ピットストップによるロスタイムを取り戻すため、レース中はアウディをしのぐペースで走り続けなければならず、そのためには数多くの周回遅れをパスする必要が生じる。これは、少なくない数のアマチュアドライバーが参戦するWECにおいては、非常にリスキーな戦いと言わざるを得ない。
しかも、決勝が始まってみれば、アウディ勢のペースが予想以上に速く、2巡目のピットストップが終わっても首位No.7トヨタと2番手No.1アウディとの差は5秒ほどでしかない。6時間で競われるレースは、この時点で残り4時間あまり。戦況は、トヨタにとって絶望的なものだった。

しかし、ここからトヨタが意地を見せる。セッティングの調整、そして後半を受け持った中嶋一貴の奮闘が功を奏し、じわじわとアウディを引き離しにかかったのである。さらにトヨタにとって幸運だったのは、2番手を走るNo.1アウディがGTE Proの1台と接触したこと。ここでフロントセクションにダメージを負うとともに、アクシデントの責任を問われてストップ&ゴーペナルティーを科せられたのだ。
アウディ陣営とて簡単に勝負を諦めるわけにはいかない。迎えて199周目、残り1時間を切った時点でNo.1アウディが最後のピットストップを行うと、首位No.7トヨタとの差は30.649秒。いっぽう、No.7トヨタはフィニッシュまでにもう1回ピットストップしなければいけない。それでもNo.7トヨタがトップの座を守るには、2番手のNo.1アウディを最低でも40秒突き放す必要がある。ステアリングを握る一貴の双肩に、ずしんとプレッシャーがのしかかった。

そのプレッシャーに、一貴は押しつぶされなかった。No.1アウディとのタイム差は一進一退を繰り返していたものの、206周目に37.222秒までギャップを広げると、その後は徐々にリードを拡大。221周目、最後まで走りきるのに必要となるわずかな燃料を求めてピットに駆け込んだNo.7トヨタは、No.1アウディを5秒リードしてコースに復帰すると、最後はこの差を11.223秒まで広げて233ラップを走りきり、サンパウロ戦に続く2勝目を挙げた。

No.50 シボレー・コルベットC
(写真=WEC)
WEC第7戦富士、サンパウロ戦に続きトヨタ優勝

2位はNo.1アウディ。しかし、GTカーとの接触さえなければ、彼らにも優勝のチャンスは十分にあった。いっぽう、3位となったNo.2アウディのアラン・マクニッシュは「レース中盤以降、マシンにバイブレーションが発生し、ペースを上げられなかった」と語っている。
なお、LMP2クラスでは中野信次もステアリングを握ったNo.25ADRデルタ(オレカ03ニッサン)が優勝。GTE ProクラスではNo.77ポルシェ、そしてGTE AmクラスではNo.50コルベットがそれぞれ栄冠を勝ち取った。

(文=大谷達也)

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