最終戦アブダビGP「それぞれの2010年に向けて」 【F1 09 続報】

2009.11.02 自動車ニュース
アブダビGP初代ウィナーとなったセバスチャン・ベッテル(右から2番目)。チームメイトのマーク・ウェバー(左)、チーム代表のクリスチャン・ホーナー(その隣)とともに今年4度目のレッドブル1-2フィニッシュに喜ぶ。3位は、第13戦イタリアGP以来の表彰台を獲得した新チャンピオン、ジェンソン・バトン(右)。(写真=Red Bull Racing)
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【F1 09 続報】最終戦アブダビGP「それぞれの2010年に向けて」

2009年11月1日、新設されたヤス・マリーナ・サーキットで行われた初開催のアブダビGP。今年17戦目にして最後のレースで、新2強のブラウンとレッドブル、新チャンピオンのジェンソン・バトンと前年王者ルイス・ハミルトンら、役者たちが揃って輝きを放っていた。

この週末、当初勢いはマクラーレンやブラウンにあるかと思われたが、レッドブル勢はガソリンを十分搭載してのぞんだ予選で2位ベッテル(写真)、3位ウェバーと好位置につけ、決勝ではベッテルが最初のピットストップでルイス・ハミルトンを抜き首位、ハミルトンのリタイアでウェバーが2位にあがり、今季4回目の1-2フィニッシュを達成した。最後の3レースで連覇し、これで今季6勝を記録したレッドブルは、コンストラクターズランキング2位で大躍進のシーズンに幕を下ろした。既にウィナーズサークルの常連のように感じるが、今季第3戦中国GPがチームにとっての初優勝であった。(写真=Red Bull Racing)
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新チャンピオンの覚醒。ジェンソン・バトン(写真)は、プラクティスでハミルトンとトップを争い、予選ではルーベンス・バリケロの後ろ、5番グリッドを獲得。レースではフロントウィングを破損したチームメイトを早々に抜き4位、ハミルトンのリタイアで3位にまで躍進。終盤、まさに目の覚めるようなペースで2位ウェバーを猛追し、王者の面目躍如たる走りっぷりを披露した。バトンは今季最多の6勝をマークし、追突されリタイアしたベルギーGPを除く全戦でポイントを取得。またブラウンはバリケロとともに8勝を記録、見事チーム発足初年度にダブルタイトルを手にした。(写真=Brawn GP)
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■新コースで迎える1年の終わり、一時代の終焉

2009年最終戦の舞台は、オイルマネーで潤うアブダビに建てられたヤス・マリーナ・サーキット。バーレーンに次ぐ中東2カ国目、かのヘルマン・ティルケがデザインした最新コースでのGPは、数々の興味深い特徴を持っていた。

文字通りヤス島のマリーナ沿いに横たわる1周5.5km(ちなみに周回数は55周)のサーキットは反時計回りで、現役GPコース最長となる1.2kmのストレートを持つ。コース前半はヘアピンを含め7つのターンが続き、中間部は2本の直線を中心とした高速セクション、そして後半は市街地コースのように壁が迫る90度コーナーが次々とあらわれる。

ストレートの終わりにあるランオフエリアは観客ひしめくスタンドの真下に潜り込んでおり、コースオフしたマシンはスタンド下に吸い込まれるように消える演出がなさせる。さらにピットロードも個性的で、マシンはコンクリートの壁に挟まれた狭い道を駆け抜け、メインストレート地下のトンネルをくぐり抜けコースへと出ていく。
コースをまたぐ格好でそびえるウルトラモダンなヤス・マリーナ・ホテル、太陽光発電を行う高さ60メートルのサン・タワーを含め、この国のやる気と懐具合があからさまに表現されたサーキットといえる。

2009年シーズン最後のレースであり、そして夕方5時に決勝レースがスタートし、徐々に夜の帳に包まれていくという初の“トワイライト・レース”であるアブダビGP。既にドライバーズ、コンストラクターズ両タイトルは前戦ブラジルで決しているが、決して消化ゲームにはならなかった。
ランキング2位の座を虎視眈々と狙うものが他を圧倒し、とてつもないプレッシャーから解き放たれた新王者は久々に伸び伸びと戦い、前年チャンピオンは苦しかった1年を次への糧にすべく善戦し、サーキットをわかせた。

2009年は、2強と呼ばれたチームが、マクラーレンとフェラーリからブラウンとレッドブルに変わった。まさにジャイアント・キリングとなった1年の終わりは、一時代の終焉とも重なる。

1994年から導入されたレース中の給油が、ここアブダビで見納めとなった。トラクションコントロールやアクティブサスペンションといったハイテク装備の禁止とともに、エンターテイメント性を向上させるために採用されたのがリフューエリング(再給油)だった。だがレース戦略の複雑化が進み、レースそのものがわかりづらくなったということで批判の対象ともなった。それと矛盾するように、給油タイミングが勝敗を大きく左右するようになり、単調なレース展開をもたらすともいわれた。

かつてない大幅なレギュレーション変更が勝負の行方に大きく影響した今シーズンに続き、無給油レースとなる2010年も混戦模様となるのだろうか? 新興チームを加えグリッドが活況を呈するであろう来季は、3月14日のバーレーンGPからはじまる。

前王者の矜持。金曜、土曜とタイムシートのトップに顔を出し、予選Q3では後続に0.7秒もの大差をつけ今季4回目のポールポジションを獲得したハミルトン(写真)は、苦しいシーズンを最良のカタチで締めくくりたかった。しかしレースでは早々にブレーキトラブルが発生し、最初のピットストップでベッテルに抜かれ、ほどなくしてガレージへ戻りリタイアをきっした。2008年チャンピオンは、ハンガリー、シンガポールと2勝し、ドライバーズランキングでは5位。マクラーレンはマシンとヘイキ・コバライネンの不調に泣かされたが、コンストラクターズランキングでは僅か1点差でフェラーリを抑え3位となった。(写真=Mercedes Benz)
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ティモ・グロックの代役、という立場以上のパフォーマンスをみせた小林可夢偉(写真)。予選12番手から2ストッパー組を牽引し、ピットストップのタイミングで一時は3位を走行。デビュー2戦目で6位完走、早くも得点し、来季のシートにまた一歩近づいた。チームメイトのヤルノ・トゥルーリは若き日本人ドライバーの影に隠れこのレース7位。トヨタはフェラーリとBMWに挟まれたコンストラクターズランキング5位に終わった。(写真=Toyota)
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■ハミルトンの善戦と苦戦、ベッテルとバトンの好走

アブダビレースウィークの出だしから好調だったのがハミルトンだった。金曜日の最初のプラクティスでトップ、2回目で2位。そして土曜日のプラクティスでも2位につけ、予選ではQ1、Q2、Q3すべてで最速タイムをマークし、最終的に2位に0.7秒もの差をつけ今季4度目のポールポジションを獲得した。

このレース、2008年王者に死角なしかと思われたが、予想に反しマクラーレンのエースは序盤から苦しい戦いをしいられる。スタートで首位の座を守り、同じく好調のレッドブル勢、ベッテルを2位に、ウェバーを3位に従え周回を重ねるが、この2人を引き離すことができないでいた。ハミルトンのマシンは、3周目から右リアのブレーキパッドに問題を抱えはじめていたのだ。

トップ3台は互いにファステストラップを記録し、三つ巴のマッチレースを展開。18周に1位ハミルトン、翌周3位ウェバー、そして20周目に2位ベッテルがそれぞれピットに駆け込むと、ベッテルがトップに立ち、ハミルトンは2位に落ちていた。
そしてほどなくして、マクラーレンはブレーキトラブルの悪化を理由にハミルトンをピットへ呼び戻し、リタイアを決断した。

これで俄然優位となったベッテル。2位ウェバーは数秒後方にいる。バリケロと争っていたチャンピオンシップ2位の座を、若きドイツ人は静かに闘志を燃やし狙っていたのだ。ベッテルはバトンの6勝に次ぐシーズン4回目の勝利を力強く手繰り寄せ、来季の雪辱に向け、この1年を最良のカタチで締めくくった。

その後方では、プレッシャーから解放された新チャンピオン、バトンが好走。スタートでウェバーと接触しフロントウィングを壊していたチームメイトのバリケロを早々に抜くと4位、そしてハミルトンのリタイアで3位にあがると、終盤2位ウェバーに猛然と襲いかかった。
2人の間にあった12秒ものタイム差は、残り6周というところでノーズ・トゥ・テール状態となり、白(ブラウン)が紺(レッドブル)に並びかけるシーンが何度かみられた。最後まで順位逆転はならなかったが、バトンの復活を印象づける最終戦だった。

BMWザウバーは、ニック・ハイドフェルド(写真)の5位入賞でコンストラクターズランキング6位に躍進し、有終の美を飾った。2008年カナダGPで悲願の初優勝を遂げたのも今は昔。シーズン序盤からの苦戦が災いし、ミュンヘンの取締役会は今季終了後に撤退する決断を下した。なおチームは新オーナーのもと、来季出場に向けて準備を進めているが、既に来季グリッドは規定数に達しており、まだ先行きは見えない。(写真=BMW)
最終戦アブダビGP「それぞれの2010年に向けて」 【F1 09 続報】
フェラーリにとって2009年シーズンは苦悩の連続だった。新型「F60」に足を引っ張られ大苦戦、果てにはシーズン半ばに開発を放棄し、結果的にコンストラクターズランキング3位の座を1点の差でマクラーレンに譲ってしまった。さらにハンガリーではフェリッペ・マッサが不慮の事故に遭い、その代役探しにも難儀。エースのキミ・ライコネンとチームの蜜月はとっくに終わっており、ライコネンは契約を1年残しマラネロを離脱することとなった。一筋の光明は、来季ルノーから移籍してくるフェルナンド・アロンソの存在と、回復目覚ましいマッサといったところ。最終戦はライコネン12位(写真)、ジャンカルロ・フィジケラ16位完走。苦境に立たされながらもライコネンが善戦し勝ち取ったベルギーGPでの1勝が唯一の勝利となった。(写真=Ferrari)
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最終戦の舞台となったヤス・マリーナ・サーキット。中東産油国の威厳に満ちた、ウルトラモダンな新世代コースだ。(写真=Toyota)
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■可夢偉、来季のシートに近づく

もちろん、勝者やチャンピオンだけがレースを戦っていたのではない。今季限りでF1を撤退するBMWザウバーにとって、ニック・ハイドフェルドのシュアな走りは最高の置き土産となった。ハイドフェルドは5位でフィニッシュし、チームに4点を献上。BMWはウィリアムズを抜き、コンストラクターズ選手権を6位で終えることができた。

そしてトヨタの小林可夢偉は、デビュー2戦目にして初入賞6位ゴールという快挙を成し遂げた。予選12位から1ストップ作戦でのぞみ、一時は表彰台も狙えた。ピットアウト直後のバトンをブラジルGP同様に困らせ、チャンピオンを見事追い抜くなど、冴えた走りを随所で披露した。出走した2戦の出来映えをみれば、来シーズンのシートもいよいよ確かなものになってきたといっていいだろう。

スタート時に沈みかけていた太陽はすっかり水平線の彼方に姿を隠し、暗闇と人工の光が支配する夜にゴールを迎えた。60年目のF1ワールドチャンピオンシップは、17戦の全スケジュールを終了した。

(文=bg)

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