フォルクスワーゲン、未来のクルマを考えるシンポジウム開催

2009.11.02 自動車ニュース
2013年に発売予定の電気自動車「E-Up!」。
フォルクスワーゲン、未来のクルマを考えるシンポジウムを開催

フォルクスワーゲン、未来のクルマを考えるシンポジウム開催

フォルクスワーゲン グループ ジャパン(以下VGJ)は2009年10月23日、「人はなぜ移動したいか。フォルクスワーゲンが考える未来のクルマとモビリティ」と題したシンポジウムを開催した。

2030年、首都圏の人口はさらに増加すると予測される。このままでは公害・環境問題はさらに深刻化する。
フォルクスワーゲン、未来のクルマを考えるシンポジウムを開催

■フォルクスワーゲンが考えるこれからの20年

2009年5月、VGJは自社の公式インターネットサイトの中で「Volkswagen 2028」を公開した。これは、フォルクスワーゲンが考える約20年後のクルマや交通のあり方を、研究開発部門の専門家のインタビューやコンセプトカーの映像などにより紹介するもので、現在研究開発中の技術と対比させながら、わかりやすく解説しているのが特徴である。

このVolkswagen 2028に登場する研究開発部門の専門家のうち、ウォルフガング・ミュラー-ピエトラッラとウォルフガング・シュタイガーの両氏が来日し、VGJ開催のシンポジウムにおいてプレゼンテーションを行った。

フォルクスワーゲンAGのミュラー-ピエトラッラ氏。
フォルクスワーゲンAGのミュラー-ピエトラッラ氏。
フォルクスワーゲンの次世代のコンセプトカー「ego」。
フォルクスワーゲンの次世代のコンセプトカー「ego」。

■都市への集中がさらに進む

最初にステージに立ったのは、フォルクスワーゲンAGグループ研究部門でフューチャーリサーチおよびトレンド移行部の責任者を務めるミュラー-ピエトラッラ氏。彼のグループでは、10-30年後の未来を予測し、フォルクスワーゲンの将来像を探っている。

ミュラー-ピエトラッラ氏によれば、20年後もガソリンやディーゼルといった化石エネルギーに依存する社会は続くが、原油は不足し価格も高騰。これに対応するため、内燃機関はハイブリッドや、TDIやTSIなどフォルクスワーゲンが得意とするパワートレインのダウンサイジング技術などによって、さらなる効率化を進めていくという。

また、都市への集中や地域化が進む影響で、比較的短い距離の輸送のニーズが高まることが予想され、これにともない「ゼロエミッションカー」や「ニアゼロエミッションカー」の需要が高まると見ている。これに対応すべく、フォルクスワーゲンは、Volkswagen 2028に示す「ego」「ONe」「room」といったクルマで、より少ないスペース、より少ないエミッションを実現。都市型のクルマ市場に大きなビジネスチャンスを見いだそうとしている。

「未来はわれわれに最高のパフォーマンスを要求しています」(ミュラー-ピエトラッラ氏)。高効率だけでなく、高度なコミュニケーション技術や自律運転システムなどによって、さらに快適でさらに安全なクルマを目指すフォルクスワーゲン。そのための準備はすでにスタートしている。

ウォルフガング・シュタイガー氏は、自動車はガソリンやディーゼルのほか、様々なエネルギーを燃料とする時代が来ることを示唆した。
ウォルフガング・シュタイガー氏は、自動車はガソリンやディーゼルのほか、様々なエネルギーを燃料とする時代が来ることを示唆した。
「トゥアレグ」のハイブリッドカーも現在開発が進められている。
「トゥアレグ」のハイブリッドカーも現在開発が進められている。
プラグインハイブリッドは、将来的に「ゴルフ」にも設定されるだろう。
プラグインハイブリッドは、将来的に「ゴルフ」にも設定されるだろう。

■“スター”はひとりだけじゃ足りない

フォルクスワーゲンAGグループ渉外部 新技術統括責任者のシュタイガー氏は、今後のパワートレイン戦略を語った。自動車のエネルギー源には化石、天然ガスといった化石燃料と、風力、水力、太陽光、バイオマスなどの再生可能なエネルギーがあり、それらが燃料、あるいは電力といった“エネルギー担体”としてクルマに搭載され、内燃機関や電気モーターを動かすことでクルマは走る。エネルギー源とエネルギー担体、そしてパワートレインの組み合わせはたくさんあるが、トータルの効率やCO2排出量を考え、何が未来のクルマに適しているか見つめる必要があるとシュタイガー氏は語る。

さしあたり、2015年、そして2020年にヨーロッパで実施されるCO2削減の規制に対しては、フォルクスワーゲンは内燃機関の改善により対応する。その切り札として力を入れているのが「ブルーモーションテクノロジー」だ。1.6リッターTDIを積む最新の「ゴルフブルーモーション」は1km走行あたりのCO2排出量が99gと、2015年規制の120g/kmを大幅に下回るほか、「ポロブルーモーション」では87g/kmと、こちらは2020年規制の95g/kmをクリアする実力の持ち主だ。フォルクスワーゲングループ全体では、33モデルが120g/kmを達成し、140g/km以下なら132モデルもの低燃費車が存在するのだ。これと並行して、フォルクスワーゲンはバイオディーゼルやバイオエタノールといった代替燃料にも注目し、エンジンの開発を進めている。

大型車に関しては、「トゥアレグ」にモーターアシスト機構を組み込んだ、いわゆる“マイルドハイブリッド”を近い将来発売するなどして燃費対策に努める。電気自動車は、フランクフルトショーで発表した「E-Up!」を2013年に市場に投入。台数はそれほど多くはなく、ここから改良を重ねて2020年ごろに本格的な普及を目指す考えのようだ。

ハイブリッドと電気自動車の中間に位置するプラグインハイブリッドは、電気自動車の普及より前に実用化する。プラグインハイブリッドこそ、2010年代の主役としてフォルクスワーゲンが重要視するパワートレインなのだ。「ひとりのスターの登場によって問題が解決できるわけではない」。さまざまな選択肢から、地域や環境にあったエネルギーやパワートレインを選ぶというのが、フォルクスワーゲンの考え方だ。

次世代自動車は、多様化しながら徐々に脱石油化を目指す。
次世代自動車は、多様化しながら徐々に脱石油化を目指す。
左から、ゲラシモス・ドリザス氏(フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン社長)、ミュラー-ピエトラッラ氏、ウォルフガング・シュタイガー氏、佐治晴夫氏、清水和夫氏。
左から、ゲラシモス・ドリザス氏(フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン社長)、ミュラー-ピエトラッラ氏、ウォルフガング・シュタイガー氏、佐治晴夫氏、清水和夫氏。

■クルマは大切なパートナー

プレゼンテーションのあと、理学博士で鈴鹿短期大学学長の佐治晴夫氏と、モータージャーナリストの清水和夫氏が加わり、パネルディスカッションが行われた。パーソナルモビリティ、電気自動車の可能性、バッテリーの進化、水素の課題といった話題が採り上げられ、「近い将来、内燃機関は100%ハイブリッド化され、その後は電気の出番が多いプラグインハイブリッドに進化する。内燃機関は緊急時に使うだけのものになるだろう」(シュタイガー氏)。

「ゼロエミッションの電気自動車も、発電方法によっては内燃機関よりもトータルのCO2排出量が多くなることもある。クルマだけでなく、システムとして考える必要がある」(ミュラー-ピエトラッラ氏)、「炭素とエレクトロン(電子)の数を比べると、圧倒的にエレクトロンのほうが多い。クルマが電気に向かうのは当然のこと」(佐治氏)など、興味深い意見が交わされた。

移動すること、そして、考えることが人間という存在であると佐治氏は述べたが、それだけにわれわれはクルマという移動手段を次の世代にも残したい。そのためにクルマはどう変わるべきなのか。それを見守るわれわれには、どんな意識改革が必要なのか。そんなことを考えさせられるシンポジウムだった。

(文と写真=生方聡)

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