第14戦シンガポールGP「ハミルトンの完勝、バトンの漸進」【F1 09 続報】

2009.09.28 自動車ニュース
ポディウムにあがったウィナー、ルイス・ハミルトン(中央)と、2位ティモ・グロック(左)、3位フェルナンド・アロンソ(右)。(写真=Toyota)
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【F1 09 続報】第14戦シンガポールGP「ハミルトンの完勝、バトンの漸進」

2009年9月27日、アジアの都市国家、シンガポールの市街地にあるマリーナベイ・サーキットで行われたシンガポールGP。人工の光の下で繰り広げられたナイトレースで、ルイス・ハミルトンはチャンピオンの名にふさわしい貫禄の勝利を飾った。そして佳境を迎えたタイトル争奪戦では、予選での失敗を挽回したジェンソン・バトンが、また一歩栄冠に近づいた。

上位の脱落にも助けられ予想外の好成績、2位表彰台を得たトヨタのティモ・グロック(写真)。しかし、予選で7番手につけ、オープニングラップでは4位までジャンプアップし、粘り強く走りきった結果のポディウムだから、一概に漁夫の利とは言えないだろう。ヤルノ・トゥルーリはまったくいいところなく、予選15位、決勝12位。(写真=Toyota)
上位の脱落にも助けられ予想外の好成績、2位表彰台を得たトヨタのティモ・グロック(写真)。しかし、予選で7番手につけ、オープニングラップでは4位までジャンプアップし、粘り強く走りきった結果のポディウムだから、一概に漁夫の利とは言えないだろう。ヤルノ・トゥルーリはまったくいいところなく、予選15位、決勝12位。(写真=Toyota)
GP直前の9月21日、国際自動車連盟(FIA)の世界モータースポーツ評議会が開かれた。前年のシンガポールGP、ルノーはエースのフェルナンド・アロンソを勝たせるため、チームメイトのネルソン・ピケJr.に故意にクラッシュを起こさせたという“クラッシュゲート”問題に対し、同評議会は有罪であると断定。チームに2年間の執行猶予付き出場停止処分、当時の代表で既にチームを去っているフラビオ・ブリアトーレの無期限追放、やはりチームを離れたエンジニアリングディレクター、パット・シモンズの5年間追放を言い渡した。事の発端は、ブリアトーレと揉めてシーズン半ばに更迭されたピケの“チクリ”。スポーツマンシップに明らかに反したルノーの愚行はもちろんだが、免責を条件に全貌を吐露したピケにも批判的な意見が出ており、F1界は醜態をさらすこととなった。レースではアロンソが3位でゴールし、難しい局面で今季初表彰台をもたらしたのはせめてもの救いだろう。(写真=Renault)
GP直前の9月21日、国際自動車連盟(FIA)の世界モータースポーツ評議会が開かれた。前年のシンガポールGP、ルノーはエースのフェルナンド・アロンソを勝たせるため、チームメイトのネルソン・ピケJr.に故意にクラッシュを起こさせたという“クラッシュゲート”問題に対し、同評議会は有罪であると断定。チームに2年間の執行猶予付き出場停止処分、当時の代表で既にチームを去っているフラビオ・ブリアトーレの無期限追放、やはりチームを離れたエンジニアリングディレクター、パット・シモンズの5年間追放を言い渡した。事の発端は、ブリアトーレと揉めてシーズン半ばに更迭されたピケの“チクリ”。スポーツマンシップに明らかに反したルノーの愚行はもちろんだが、免責を条件に全貌を吐露したピケにも批判的な意見が出ており、F1界は醜態をさらすこととなった。レースではアロンソが3位でゴールし、難しい局面で今季初表彰台をもたらしたのはせめてもの救いだろう。(写真=Renault)

■ナイトレースの明と暗

シンガポールの海岸沿いを、千数百もの投光器が煌々と照らす週末が今年もやってきた。カレンダー中唯一のナイトレースは、2時間弱の耐久戦。高温多湿な熱帯気候もさることながら、5kmのコースに23ものコーナーがひしめき合う、ドライバーにとってもマシンにとっても息つく暇もない過酷な戦いとなる。

光の洪水と暗闇の狭間を縫うように駆け抜けるF1マシン。それぞれの思惑を秘めた20人のドライバーの間でも、明暗が分かれたレースだった。

まず文字通りスポットライトを浴びたのは、マクラーレンのハミルトンだった。第10戦ハンガリーGPで今季初優勝を果たしたように、ハイダウンフォースサーキットでマクラーレンが他の追随を許さず完勝。2戦連続3度目のポールポジションからの勝利は、「MP4-24」のパフォーマンスがいよいよ本物であることを示唆していた。

自己最高位の2位に入ったトヨタのティモ・グロックも、“クラッシュゲート”問題(詳細は左写真参照)で極めて難しい状況に追い込まれながら3位表彰台を得たルノーのフェルナンド・アロンソも、シンガポールを笑って去ることができたであろう。

いっぽう、アン(暗)ラッキーの筆頭にあげられるのがウェバーだ。4戦連続無得点でタイトル獲得は完璧についえた。一時はトップのハミルトンに迫ったベッテルも、ピットレーンでのスピード違反でペナルティを受け表彰台圏外に落ち、数字上はチャンピオンの可能性を残すものの大きな痛手を負った。今年好調といわれながら、なかなか上位に顔が出せなかったウィリアムズのニコ・ロズベルグも、2位好走で力強いパフォーマンスを披露したが、勢いに度が過ぎてピットレーン出口で白線を踏みドライブスルーペナルティ、掴みかけたポディウムがフイになった。

幸と不幸の分水嶺、シンガポールで一番の幸運を拾った男は、おそらくはポイントリーダーのジェンソン・バトンであっただろう。予選Q2でまさかの12位。Q3で8位だったBMWのニック・ハイドフェルドがピットスタートとなったことで11番グリッドを得たが、タイトルを争うレッドブル勢(セバスチャン・ベッテル予選2位、マーク・ウェバー同4位)、そして最大のライバルであるチームメイトのルーベンス・バリケロ(同5位)に前を固められてしまった。

バトンを取り巻く環境は不利そのものだったが、61周のレースが終わってみると、ベッテルの直後、バリケロの直前となる5位フィニッシュという結果。ダメージを最小限に抑えたどころか、バリケロとの差は1点多くなり、残り3戦を優位な立場で迎えられることとなった。

ルイス・ハミルトン(写真先頭)がポール・トゥ・ウィンで今季2勝目を掴んだ。前戦イタリアGPでは最終周にクラッシュし、3位の座を逃がしたチャンピオンだったが、シンガポールでは緊張の糸を切らすことなく、2時間弱の長丁場で完勝した。(写真=Mercedes Benz)
ルイス・ハミルトン(写真先頭)がポール・トゥ・ウィンで今季2勝目を掴んだ。前戦イタリアGPでは最終周にクラッシュし、3位の座を逃がしたチャンピオンだったが、シンガポールでは緊張の糸を切らすことなく、2時間弱の長丁場で完勝した。(写真=Mercedes Benz)
またしても自滅するかっこうとなったレッドブル。予選ではセバスチャン・ベッテル(写真)が2位、マーク・ウェバーは4位につけ、中位に沈んだブラウンを尻目に期待をもってレースにのぞんだ。だがベッテルはスタートでニコ・ロズベルグに抜かれ、ピットではスピード違反でペナルティを受け、何とか挽回しての4位ゴール。ウェバーは最終的にブレーキが壊れクラッシュ、リタイア。残り3戦、ベッテルは大逆転へのわずかな希望を胸にブラウンと対決する。3戦全勝しても最高30点。ポイント差は25点もある。(写真=Red Bull Racing)
またしても自滅するかっこうとなったレッドブル。予選ではセバスチャン・ベッテル(写真)が2位、マーク・ウェバーは4位につけ、中位に沈んだブラウンを尻目に期待をもってレースにのぞんだ。だがベッテルはスタートでニコ・ロズベルグに抜かれ、ピットではスピード違反でペナルティを受け、何とか挽回しての4位ゴール。ウェバーは最終的にブレーキが壊れクラッシュ、リタイア。残り3戦、ベッテルは大逆転へのわずかな希望を胸にブラウンと対決する。3戦全勝しても最高30点。ポイント差は25点もある。(写真=Red Bull Racing)

■ハミルトンを追う2人の脱落

スタートでトップを守ったポールシッターのハミルトンに続いたのは、3番グリッドからひとつポジションをあげたロズベルグ。素晴らしい出だしのアロンソを何とか抑え、ベッテルが3位からレースを組み立てにかかった。僚友ウェバーは、ターン7でコースオフしながら前のアロンソを抜いたとして、アロンソとその前を走るグロックにポジションを返上し、6位にドロップ。バリケロは7位、バトンは10位から“ダメージリミテーション”の施策を開始した。

やがて、トップ3と4位グロック以下の間隔が開きはじめる。15周時点で1位ハミルトンと2位ロズベルグのギャップは3.1秒、2位と3位ベッテルでは2秒と僅差が保たれていたが、3位と4位の間には12.4秒もの差が出来上がっていた。

18周を終え、3位ベッテルがピットイン。翌周には2位ロズベルグがピットへ飛び込んだが、ウィリアムズのマシンはタイトなピットレーン出口で曲がり切れず白線をまたぎ、ドライブスルーペナルティを言い渡されてしまった。優勝も夢ではなかったが、ひとつのミスが命取りとなった。

トップのハミルトンがピットインした21周、エイドリアン・スーティルが前車を抜き切れずスピンし、そこにニック・ハイドフェルドが突っ込みクラッシュしたことでセーフティカーが出動。これを機にアロンソ、ヘイキ・コバライネン、バトン、中嶋一貴らが続々とピットに駆け込んだ。

26周目にレースが再開すると、トップのハミルトンと2位ベッテルとの間で僅差の戦いが繰り広げられた。ベッテルは、残る4戦でバトンを負かしチャンピオンになるためには、26点ものギャップを埋めなければならない。何としても1位10点がほしいレッドブルの若き挑戦者は、しかし給油量からハミルトンより先に2度目のピット作業を行わなければならず、現実的には2位キープがやっとだった。

その2位の座も、不可解なピットレーンでのスピード超過で失ってしまった。これでハミルトンには余裕が生まれ、グロックとアロンソには上位2台の脱落で表彰台が舞い降りてきた。

予選Q2で敗退、ジェンソン・バトン(写真先頭)のレースは、中段グリッドから何点獲得できるかという“ダメージリミテーション”が目的となった。それでも中盤までに7位まで追い上げ、最後のピット作業で5位走行中のルーベンス・バリケロの前を行くことに成功。5位4点加算は御の字の結果といえる。バリケロは予選Q3でクラッシュを演じ、不安があるギアボックスを交換したことで5グリッド降格の10番手からスタート。最後にバトンを抑え切れなかったが、15点先行するチームメイトを最後まで追いかけるなど、タイトルを諦めていない様子だ。(写真=Brawn GP)
予選Q2で敗退、ジェンソン・バトン(写真先頭)のレースは、中段グリッドから何点獲得できるかという“ダメージリミテーション”が目的となった。それでも中盤までに7位まで追い上げ、最後のピット作業で5位走行中のルーベンス・バリケロの前を行くことに成功。5位4点加算は御の字の結果といえる。バリケロは予選Q3でクラッシュを演じ、不安があるギアボックスを交換したことで5グリッド降格の10番手からスタート。最後にバトンを抑え切れなかったが、15点先行するチームメイトを最後まで追いかけるなど、タイトルを諦めていない様子だ。(写真=Brawn GP)
シーズン序盤はブラウン、レッドブル、トヨタと並びフロントランナーの一員と目されていたウィリアムズ。しかしなかなか上位リザルトを掴むことができずに終盤まできてしまった。今回、前年のシンガポールで2位表彰台のニコ・ロズベルグが奮起し、トップのハミルトンに迫る勢いで2位につけていたが、最初のピット作業を終えてコースに戻る途中、勢い余って白線を踏んだことでドライブスルーペナルティを受け、千載一遇の機会をフイにしてしまった。中嶋一貴は最後の1点に届かず、9位完走。(写真=Williams)
シーズン序盤はブラウン、レッドブル、トヨタと並びフロントランナーの一員と目されていたウィリアムズ。しかしなかなか上位リザルトを掴むことができずに終盤まできてしまった。今回、前年のシンガポールで2位表彰台のニコ・ロズベルグが奮起し、トップのハミルトンに迫る勢いで2位につけていたが、最初のピット作業を終えてコースに戻る途中、勢い余って白線を踏んだことでドライブスルーペナルティを受け、千載一遇の機会をフイにしてしまった。中嶋一貴は最後の1点に届かず、9位完走。(写真=Williams)

■バリケロとバトン、順位逆転

ストリートコースにセーフティカーはつきもの。ゴールまで15周という時点で、ブレーキが音をあげたウェバーがスピンしウォールにヒット。2度目のセーフティカー導入かと、ピット作業が未完のチーム、ドライバーは色めき立った。

5位走行中のバリケロは、すぐさまピットに入り最後の給油・タイヤ交換を完了。しかし彼が待ったフルコースイエローは訪れなかった。これがバリケロの後ろを走る7位バトンにとっては好機となり、コースにとどまり軽いマシンで飛ばし続けた結果、ブラウンの2台は順位が逆転した。チャンピオンシップで一番の好敵手を追い抜き、その次の対抗者であるベッテルが目の前のバトンにとって、5位4点は十分なリザルトだった。

最後の勝利から4ヶ月近くも経ったバトンだが、ランキングトップの座を譲ることなくシーズン終盤までこぎ着けた。最大26点まで拡大したバトンとライバルとのポイント差は、残り3戦となって15点にまで減ったが、クラッシュに巻き込まれリタイアに終わったベルギーGP以外、これまで全戦でポイントを獲得。初の栄冠に向けて着々と点を積み上げている。今回のように、ライバルが自滅してくれるレースが多かったのも、バトンを助けている。

2009年終盤のアジア2連戦、次は3年ぶりに鈴鹿サーキットで開かれる日本GP。過去の偉大なドライバーでさえ、初タイトルを前にすると信じられないミスをおかす。想像以上のプレッシャーとも戦わなければならない29歳のイギリス人は、15点の貯金を守り切るのか、使い切るのか。日本GP決勝日は、10月4日だ。

(文=bg)

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