メルセデス・ベンツ、説得力ある展示で圧倒【フランクフルトショー09】

2009.09.20 自動車ニュース
エントランスを飾る、新旧の「SLR」。
メルセデス・ベンツ、説得力のある出展に感心【フランクフルトショー09】

【フランクフルトショー09】メルセデス・ベンツ、説得力ある展示で圧倒

同じ建物を使っていた前回のショーでは5階建てのブースを構えていたことを思えば、今年のメルセデス・ベンツのブースは地味めだったと言うべきだろうか? いやいや、それでも十分に意気込みの感じられる展示に圧倒されたというのが振り返ってみての印象である。

「ブルーゼロE-CELLプラス」
「ブルーゼロE-CELLプラス」
「S500プラグインハイブリッド」
「S500プラグインハイブリッド」

■電化がキーワード

入り口に飾られていたのは往年の名車「300SLR」と、その現代版たるSLRマクラーレンの最終モデル、「スターリングモス」。一方、ブースの真正面で出迎えてくれたのは「ブルーゼロE-CELLプラス」であった。今年のフランクフルトのキーワードはElectorification=電化、そして引き続きCO2低減だ。

実際、社会面で紹介するならばトップはこのE-CELLプラスで決まりだろう。最高出力136psの電気モーターはリチウムイオン電池で駆動され、約100kmの走行が可能。充電は家庭用コンセントや急速充電器で行うことができる。バッテリー残量が少なくなると1リッターターボエンジンが始動して発電機を回して、モーターへの電力供給と充電を行う。これらを組み合わせた走行距離は約600kmに達する。
2010年には市販への動きが……と言われているこのプラグインハイブリッドカー。インフラ依存度が高いピュアEVよりはるかに現実的な選択肢であることは間違いない。

実は初日には「S500プラグインハイブリッド」も展示されていた。しかし展示場所は会場の奥の方で、しかも翌日には姿を消してしまった。フェイスリフト前の外観など、華々しく見せるには準備不足の部分があったため引っ込められてしまったようだが、250km/hの最高速と3.2リッター/100km(約31.3km/リッター)の省燃費を両立したその内容は、十分期待できるものだったはずだ。

「SLS AMG」
「SLS AMG」
「SLS AMG」のパワートレイン。
「SLS AMG」のパワートレイン。

■注目の「SLS AMG」は?

しかしメルセデス・ベンツのブースのスターといえば、いよいよ披露された「SLS AMG」に尽きるだろう。伝説の「300SL」にインスパイアされたガルウイングドアのスポーツカーは、メルセデス・ベンツとAMGが共同で生み出したもの。300SLと同じようにスポーティかつ流麗なボディのフロントフードの下には、最高出力を571psまで向上させたAMG製V型8気筒6.2リッターDOHCユニットが搭載される。7段デュアルクラッチ式ギアボックスは後車軸側に積まれるトランスアクスル式とされ、前後重量配分は47:53を実現しているという。

もうひとつのワールドプレミアが「Eクラス・ステーションワゴン」だ。セダン、クーペに続く第3のモデルは、奇をてらったところの無い堅実なつくり。しかし最大1950リッターの容量を誇る荷室など、正攻法の進化ぶりは、こんな時代でも間違いなく支持されることだろう。また事前予告無しの出展として、会場には「E63AMGステーションワゴン」も展示されていた。こちらも登場は間近のはずである。

一方、実物を見ることができるかも、と期待したSLS AMGのEVバージョンの姿は無かった。最高出力533ps、最大トルク89.7kgmのスペックを誇り、0-100km/hを4秒フラットで駆け抜けるというEVスポーツカー、見てみたかった気がするが、SLS AMG市販仕様のインパクトを削ぎかねないと考えれば仕方の無いところかもしれない。アウディは「R8」をベースに、同じように4輪独立モーターを与えたEVスポーツカーのコンセプト「e-tron」をお披露目していたが、スペック的には断然、「SLS AMG EV」の方が上だっただけに、ちょっと惜しいことをしたという気もしてしまうが。

「E220 CDIステーションワゴン」
「E220 CDIステーションワゴン」
「E63AMGステーションワゴン」
「E63AMGステーションワゴン」

■クルマの楽しさを捨てない

どこのメーカーもこぞってEVやプラグインハイブリッド車のコンセプトモデルを前面にアピールしていた今回のショーだが、ちょうど2年前にはハイブリッド車で同じことが起きていたな……と思うと、各社どこまで本気なのかは正直言って微妙だ。なにしろ今年に至るまで、ヨーロッパから市販ハイブリッド車はほとんど登場していないのだから。

しかしメルセデスは「S400ハイブリッド」(邦名:Sクラスハイブリッド)をすでに発売し、またブルーゼロE-CELLプラスも来年という現実的な日程が明らかになっている。このあたり、やはりさすがと言うほかないし、だからこそSLS AMGのようなモデルにも説得力がある。エコに向かう時代の流れは必然だが、一方でクルマの楽しさを絶対に捨てることはしないという決意。SLS AMGとE-CELLが同じ空間に並んでいて違和感がないのを見て、その揺るぎないブランド力に改めて感心させられたのだった。

(文と写真=島下泰久)

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