第13戦イタリアGP「復活のブラウン、タイトル獲得に向けて大きく前進」【F1 09 続報】

2009.09.14 自動車ニュース
5月末のモナコGP以来となる1-2フィニッシュを達成したブラウンGP。ウィナーのルーベンス・バリケロ(写真右)にとっては3度目のイタリアGP優勝となる。バリケロは、ポイントリーダーで今回2位に終わったチームメイト、ジェンソン・バトン(同左)とのポイント差を縮め、ギャップは14点に。残り4戦、タイトル争いはこの2人に絞られつつある。(写真=Brawn GP)
【F1 09 続報】第13戦イタリアGP「復活のブラウン、タイトル獲得に向けて大きく前進」

【F1 09 続報】第13戦イタリアGP「復活のブラウン、タイトル獲得に向けて大きく前進」

2009年9月13日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われたF1世界選手権第13戦イタリアGP。超高速コースで、プラス80馬力をポケットにしのばせるKERS勢を上回るにはどうすべきか? 策士ロス・ブラウン率いるブラウンGPが導き出した答えは、ライバルより1回少ない1ストップで行くことだった。この作戦と、取り戻した速さを武器に、ブラウンは久々の1-2フィニッシュを達成。さらにレッドブルの落伍で、タイトル奪取に向けて大きく前進した。

バリケロに14点差まで詰め寄られたバトン(写真)だが、今回縮まったのは2点のみ。しかも相手は状況を把握しやすいチームメイトである。残り4戦、取りこぼしをなくし、かつ上回れなくてもバリケロの直後でゴールし続けさえすれば、初タイトルが一歩ずつ近づいてくることになる。長いスランプを抜け、久々の笑顔でポディウムにのぼった。(写真=Brawn GP)
バリケロに14点差まで詰め寄られたバトン(写真)だが、今回縮まったのは2点のみ。しかも相手は状況を把握しやすいチームメイトである。残り4戦、取りこぼしをなくし、かつ上回れなくてもバリケロの直後でゴールし続けさえすれば、初タイトルが一歩ずつ近づいてくることになる。長いスランプを抜け、久々の笑顔でポディウムにのぼった。(写真=Brawn GP)
ルイス・ハミルトンのリタイアに救われ、3位表彰台を獲得したフェラーリのキミ・ライコネン(写真先頭)。速さではブラウン、メルセデスに敵わなかったが、4戦連続ポディウムフィニッシュでコンストラクターズ選手権3位キープに貢献した。だが来季のシートを巡ってはフェラーリに残留できるか不透明。チームはもっぱら、現在ルノーを駆るフェルナンド・アロンソにご執心のようで、契約を1年残しライコネンを追い出すのではと噂される。
いっぽう、フェリッペ・マッサの代役で、ルカ・バドエルからステアリングを引き継いだジャンカルロ・フィジケラは、イタリア人の夢をイタリアGPで叶えた。だが予選14位、決勝では9位完走と地元ファン、ティフォシの夢は不完全燃焼。(写真=Ferrari)
ルイス・ハミルトンのリタイアに救われ、3位表彰台を獲得したフェラーリのキミ・ライコネン(写真先頭)。速さではブラウン、メルセデスに敵わなかったが、4戦連続ポディウムフィニッシュでコンストラクターズ選手権3位キープに貢献した。だが来季のシートを巡ってはフェラーリに残留できるか不透明。チームはもっぱら、現在ルノーを駆るフェルナンド・アロンソにご執心のようで、契約を1年残しライコネンを追い出すのではと噂される。
いっぽう、フェリッペ・マッサの代役で、ルカ・バドエルからステアリングを引き継いだジャンカルロ・フィジケラは、イタリア人の夢をイタリアGPで叶えた。だが予選14位、決勝では9位完走と地元ファン、ティフォシの夢は不完全燃焼。(写真=Ferrari)

■持つものと持たざるもの

53周のレースは、ファイナルラップを迎えていた。高速複合コーナー、レズモを抜けようとしていたルイス・ハミルトンは、マシンの挙動を乱してスピン、瞬く間にカードレールにヒット。目前まで迫っていた3位の座をあと少しのところで失った。

「毎周にわたって予選アタックをやっているようなものだったから、クラッシュも予期された。我々は勝てるようなペースではなかったから、ギリギリまでプッシュしていたんだ」とは、レース後のハミルトンのコメントである。

この日、ハミルトンにあったのはKERSというパワーブースター。もちろんそこにトータルなマシンの速さがあったからこそ今年2度目のポールポジションを獲得し、序盤レースをリードできたのだが、ハミルトンが示唆するように、この日のブラウンには“勝てるペース”が備わっていた。

ハミルトンとマクラーレンは2ストップ作戦を選択。スタートからKERSパワーを生かし、軽いマシンで逃げ切ろうとしたが、中盤にきてひたひたと迫ってきた1ストップのブラウン勢に先を越されてしまった。
それでも終盤、2位ジェンソン・バトンに食らいつき、クラッシュしたそのラップでも、必死のドライビングでずば抜けて速いセクタータイムを記録していた。

2009年シーズンは、序盤こそKERS搭載車の競争力不足でノンKERS勢が勝利を重ねてきたが、中盤に入りコンペティションが拮抗してくると様相も変わり、KERSという出たばかりのデバイスに翻弄された各チームは、ここにきて戦い方を少しずつ確立してきている。

持つものと持たざるものの知恵と力くらべ。ブラウンはストラテジーでKERSのアドバンテージに挑み、マクラーレンを駆逐することに成功した。ブラウンの速さに屈したハミルトンは、それでも上位を目指し、最後の最後で限界を超え、レースを終えた。

レッドブルにとってイタリアは鬼門だった。マシンパフォーマンスでの劣勢は否めず、セバスチャン・ベッテル(写真)は予選9位から長い間ポイント圏外を走行、ハミルトンのクラッシュのお陰で8位1点を手に入れたが、痛手は大きかった。マーク・ウェバーは10番グリッドからロバート・クビサと絡み0周リタイア。ブラウン勢に大きく水をあけられたレッドブルは、残る4戦でフルマーク=40点を本気で取りにいかない限り、タイトル奪取が難しい状況になってきた。(写真=Red Bull Racing)
レッドブルにとってイタリアは鬼門だった。マシンパフォーマンスでの劣勢は否めず、セバスチャン・ベッテル(写真)は予選9位から長い間ポイント圏外を走行、ハミルトンのクラッシュのお陰で8位1点を手に入れたが、痛手は大きかった。マーク・ウェバーは10番グリッドからロバート・クビサと絡み0周リタイア。ブラウン勢に大きく水をあけられたレッドブルは、残る4戦でフルマーク=40点を本気で取りにいかない限り、タイトル奪取が難しい状況になってきた。(写真=Red Bull Racing)
第10戦ハンガリーGP以来のポール・トゥ・ウィンを目指したルイス・ハミルトン(写真先頭)。レース序盤こそファステストラップでリードを築いたが、最初のピットストップ以降はハイペースに苦戦。ストップが1回多い2ストッパーとして周回を重ねたが、1ストッパーのブラウンには歯が立たず。3位のポジションから必死の追走を試みるも、ファイナルラップの一瞬の隙がクラッシュ、リタイアにつながってしまった。ヘイキ・コバライネンは予選4位から1ストップでレースにのぞんだが、スタートで順位を落とし、6位完走にとどまった。(写真=Mercedes Benz)
第10戦ハンガリーGP以来のポール・トゥ・ウィンを目指したルイス・ハミルトン(写真先頭)。レース序盤こそファステストラップでリードを築いたが、最初のピットストップ以降はハイペースに苦戦。ストップが1回多い2ストッパーとして周回を重ねたが、1ストッパーのブラウンには歯が立たず。3位のポジションから必死の追走を試みるも、ファイナルラップの一瞬の隙がクラッシュ、リタイアにつながってしまった。ヘイキ・コバライネンは予選4位から1ストップでレースにのぞんだが、スタートで順位を落とし、6位完走にとどまった。(写真=Mercedes Benz)

■2ストッパー対1ストッパー

ポールシッターのハミルトンと、グリッド2番手、大躍進を遂げているフォースインディアのエイドリアン・スーティル、3番手に入ったフェラーリのキミ・ライコネンは、いずれも2ストッパー、つまり比較的軽めの燃料搭載量だったが、そのほか大勢は1ストッパーとしてレースにのぞんだ。ブリヂストンがイタリアに持ち込んだ2種類のタイヤ(ミディアムとソフト)に、パフォーマンス上の大きな差が出にくく、それが1ストップという選択を容易なものとしたのだ。

スタートでは、案の定KERSマシンが躍進し、ハミルトンはトップを堅守、ライコネンも2位へと躍り出て、スーティルがそれに続いた。
ここで勝敗の分かれ目となったのが、ハミルトンのチームメイト、予選4位のヘイキ・コバライネンだった。このKERS搭載の1ストッパーは、スタートから重いマシンでまったくペースがあがらないでいた。遅いコバライネンを、オープニングラップで予選5位のルーベンス・バリケロが、続いて同6位のジェンソン・バトンが早々にオーバーテイクし、タイムロスなくトップ3を追える体勢をつくれたのが、ブラウンにとって大きかった。

前方に誰もいない軽いマシンのハミルトンは、ファステストラップで2位ライコネン、3位スーティルを突き放し、この時点ではワールドチャンピオンの勝ちパターンか、と思われた。ライコネンとのギャップが7秒、4、5位のブラウン勢とは17秒の差がついた14周で、ハミルトンは最初のピットストップを行った。

言うまでもないが、2ストップのトップ3台は、1回多くストップする分、とにかく速いタイムで周回をこなさなければならない。だが最初のピット作業で重くなったハミルトンのマクラーレンは、ペースを思うようにあげられないでいた。

18周目にスーティル、翌周ライコネンがピットに駆け込むと、ブラウン1-2フォーメーションが完成。2位バトンは29周、トップのバリケロは30周に唯一のピット作業を終えると、2ストッパーを抜くことに成功していた。KERSのライバルを序盤に泳がせ、レース半ば過ぎに捕らえてじっくりと料理する、というブラウンの作戦が見事に結実した。

それでも、ストラテジーとスピードで敵わないとわかっていながら、3位ハミルトンは2位バトンの2秒以内まで迫った。だが迫真の走りのなかで生まれた一瞬の隙で、ワールドチャンピオンは戦列を去ることになった。

トヨタはチームメイト同士の激しい順位争いに注目が集まった……ただし、上位での話ではない。ヤルノ・トゥルーリ(写真手前)は予選11位、ティモ・グロック(同奥)は同16位からレースをはじめたが、スタートでもたつき、やはりモンツァで不調だったウィリアムズの中嶋一貴の背後を長きにわたり周回。中嶋の壁を抜こうと奮起したトゥルーリは中嶋にプレッシャーをかけ、思い余って挙動を乱した。すかさずその後ろからグロックが抜きにかかる。2台の紅白マシンは丁々発止とやり合ったのち、トゥルーリがコースをはずれたことで勝負がついた。グロック11位、トゥルーリ14位、中嶋は10位完走。(写真=Toyota)
【F1 09 続報】第13戦イタリアGP「復活のブラウン、タイトル獲得に向けて大きく前進」

■残るは4戦、40点

予選とレースを通じ、バリケロがバトンをリードするという構図は終始変わらず。2台はハミルトンのクラッシュで導入されたセーフティカーランのなかチェッカードフラッグをくぐり抜けた。
バリケロは第11戦ヨーロッパGPで優勝したものの、2台揃ってのブラウン好走、1-2フィニッシュは5月の第6戦モナコGPまで遡らなければならない。特にポイントリーダーのバトンにとっては、第7戦トルコGPで優勝して以来の表彰台。長い長いトンネルをようやく抜け、久々に笑顔でポディウムにあらわれた。

その喜びは、ライバルのレッドブルが大敗したことで、さらに増幅されることとなった。
マーク・ウェバーは10番グリッドからスタートし、ロバート・クビサと絡みコースアウト、0周リタイアで0点。さらにセバスチャン・ベッテルも9番グリッドから長い間ポイント圏外を走行、ハミルトンのリタイアに救われ8位でゴールし、僅か1点を手に入れただけに終わった。
この日のレッドブルに、疾風怒濤の如く駆け抜け勝利した第8戦イギリス、第9戦ドイツのパフォーマンスはみられなかった。ライバルの追い上げが目覚しいことが不調の要因のひとつ。さらにトラブル頻発で数少なくなった使用可能エンジンとどう付き合うか、という問題も頭をもたげている状況だった。

2009年のチャンピオンシップは、シンガポール、日本、ブラジル、そして初開催の最終戦アブダビと、4戦を残すのみとなった。ドライバーズ選手権トップのバトンは80点、2位でチームメイトのバリケロは66点で、その差は僅かながら2点縮まった。いっぽうランキング3位のベッテルはバトンの26点、4位ウェバーは28.5点それぞれ後方に位置する。これからすべてで優勝しても獲得できるのはひとり40点。タイトル争いは、ブラウンの2人に絞られつつある。

次戦は今年で2回目の開催となるナイトレース、シンガポールGP。決勝は9月27日に行われる。

(文=bg)

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