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【スペック】全長×全幅×全高=3710×1665×1490mm/ホイールベース=2450mm/車重=870kg/駆動方式=FF/1リッター直3DOHC12バルブ(69ps/6000rpm、8.8kgm/5000rpm)/燃費=27.2km/リッター(JC08モード)/価格=118万8000円(テスト車=同じ)

三菱ミラージュM(FF/CVT)【試乗記】

効率、実用、その次は? 2012.10.31 試乗記 三菱ミラージュM(FF/CVT)
……118万8000円

低燃費と低価格が自慢の新型「ミラージュ」。効率を極めたコンパクトカーが、次に目指すべきはなに? 湘南の海沿いを走りながら考えた。

軽量化はすべてに勝る

「先行販売しているタイでは、大変好調でして……」と、インタビューさせてもらったエンジニアの方は顔をほころばせた。近年、いまひとつ景気のいい話に欠ける三菱自動車にとって、新工場を作ってまで生産を海外に移した新型コンパクトカーの売れ行きは、大いに気になるところだったろう。久方ぶりに車名が復活した「三菱ミラージュ」のことである。

かの地のモータリゼーションは、ちょうど庶民が最初の1台を購入する段階にあるそうで、その熱気たるや、想像に難くない。ちょっとおもしろいのは、ユーザーレベルではまだまだ「環境より走り」のようだが、今後の国内所有台数爆発を見越した政府が、「リーズナブルなコストで提供される燃費のよさ」を強く求めたことだ。「ハイブリッドはまだ早いけど、なんとかエネルギーの消費量を抑えなきゃ」という、国としての切実な事情がある。

そのために三菱がとった手段は、ボディーの軽量化。「エンジンとモーターの併用」「燃費向上のための過給機搭載」「高速巡航時のエンジン休止」……といったさまざまな新機軸を尻目に、「なぁ〜んだ」な回答である。コルトと比較して、ボディーを小型化。イチから設計した骨格には、高張力鋼板が多用された。クルマの性能向上の手段として、「軽量化はすべてに勝る」というわけだ。

さらに興味深いのは、東南アジアを中心とした新興国向けには、1.2リッターエンジンが提供され、日本、欧州といった先進諸国には、アイドリングストップ機能を備えた1リッターモデルが広告塔になるということ。

クルマの本格普及はこれからの国でも、「リッターカーのマニュアルで我慢しろ!」と押しつけるわけにいかず、一方、自動車社会が成熟した国には、「これだけやってます!」と努力をアピールしないといけないわけだ。「環境問題の偽善性」というと角が立つが、今回のミラージュの例は、商品としての自動車の難しさと、クルマという存在のおもしろさを、端的に表していると思う。

グレードは全3種。廉価な方から「E」「M」「G」となる。価格は99万8000円〜128万8000円。
グレードは全3種。廉価な方から「E」「M」「G」となる。価格は99万8000円〜128万8000円。 拡大
インパネの造形はシンプル。ピアノブラック調センターパネルを採用し、上質感を演出する。
インパネの造形はシンプル。ピアノブラック調センターパネルを採用し、上質感を演出する。 拡大
スピードメーターの右側に「ECOドライブアシスト」メーターを配置。“燃費運転”のレベルに応じてランプが点灯する。
スピードメーターの右側に「ECOドライブアシスト」メーターを配置。“燃費運転”のレベルに応じてランプが点灯する。 拡大
スポーティーな大型のルーフスポイラーが目を引く。「M」と「G」グレードで標準装備。
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空力性能を磨く

街に出たミラージュは、ツルリン! とした印象。試乗車は、松竹梅の竹にあたる売れ筋「M」グレードで、素のお値段は118万8000円。同じ3気筒でも、1リッターのミラージュに対し、1.2リッターを積む「日産マーチX」が120万1200円と肉薄する。しかしマーチのカタログ燃費23.0km/リッターと比較して、ミラージュは驚異の27.2km/リッター(いずれもJC08モード)! かつてはパワーや最高速度を比べて口角泡を飛ばしたものだが(やや大げさ)、昨今の、カタログ燃費の競り合いも、その気になればなかなかエキサイティングである。

丸みを帯びたフロントバンパーの角。平らになったリアフェンダー後半。後ろ下がりのルーフラインに、やや絞られたキャビン後部。そして、立派なルーフエンドスポイラー。870kgという軽量ボディーの次にミラージュが繰り出した必殺技が、空気抵抗の軽減である。ミラージュのCd値は、かつてのスーパーカーもビックリの0.27! 「オオォォォ!」と(無理やり)盛り上がりながらドアを開けると、しかしそこにはグレー一色の、少々事務的な内装が待っている。センター上部に設けられた、造形的に凝ったエアコン吹き出し口が、なんだか浮いている。

プレーンニットの生地を用いたシートは、小ぶりなうえ座面が平板で、滑りやすい。お尻が落ち着かないのは気になるが、上下に調整できるハンドルと、やはり上下にアジャスト可能なシートの恩恵で、好みの運転姿勢は取りやすい。着座位置は高め。しっかり背筋を伸ばして運転する感じが、堅実な実用コンパクトらしい。

低燃費化を目的に空力性能を徹底的に磨いた。Cd値はコンパクトカーのトップレベルの0.27。
低燃費化を目的に空力性能を徹底的に磨いた。Cd値はコンパクトカーのトップレベルの0.27。 拡大
インテリアカラーは全2パターン。ボディーカラーで自動的に決まり、テスト車のセルリアンブルーマイカではブラックとなる。
インテリアカラーは全2パターン。ボディーカラーで自動的に決まり、テスト車のセルリアンブルーマイカではブラックとなる。 拡大
後席中央席のヘッドレストはオプションを含め設定がない。
後席中央席のヘッドレストはオプションを含め設定がない。 拡大
後席は6:4の分割可倒式。中央席にも3点式シートベルトが備わる。(写真をクリックするとシートの倒れる様子が見られます)
後席は6:4の分割可倒式。中央席にも3点式シートベルトが備わる。(写真をクリックするとシートの倒れる様子が見られます) 拡大

例えば「ミラージュ スポーツ」が欲しい

ミラージュのエンジンは、“まじめ、まじめ、まじめ”の「コルト」で初採用された4気筒「4A90型」ユニットから1気筒を削った3気筒ツインカム。999ccの排気量から、69ps/6000rpmの最高出力と、8.8kgm/5000rpmの最大トルクを発生する。吸気側カムの可変タイミング機構を持つが、燃料噴射はコンベンショナルなポート噴射。コストさえ許せば、技術的にもう一歩進められる“伸びしろ”を持つ。トランスミッションは、ライバルのマーチと同じ、コンパクトな副変速機付きCVTだ。

3気筒エンジンの常で、ミラージュの999ccも、スムーズに回るが力感が伴わない、“のれんに腕押し”的なフィールがつきまとう。実際には、過不足ない動力性能なのだが。

気になったのは、ややスローで軽いステアリングを切ったあと、キャスターアクションことハンドルの戻りが悪いこと。時には意識的に戻してやる必要がある。高速巡航での直進性に不満を感じることはなかったから、ちょっと不思議なセッティングだ。

新型ミラージュに乗って「惜しいなァ」と感じるのは、せっかくの軽量化が“縁の下の力持ち”に徹していて、積極的に評価する対象になりにくいこと。せっかくお客さまに「乗ってミラ〜ジュ!」してもらっても、ドライブフィールが薄味で、購入の後押しをする要因になりにくそう。「これなら軽でも……」と思われたら、元も子もない。

それぞれの国や地域に特徴があるように、日本の市場では、リッターカーが実用面だけで軽自動車を押しのけるのは難しい。「低燃費」「低価格」「コンパクト」だけでなく、例えば足まわりにスタビライザーをおごった3ペダルMTモデルを「ミラージュ スポーツ」と称して投入する。数は出ないかもしれないが、そうした「実用+α」の施策をとる必要があると思う。さもないとミラージュは、早晩、次々と投入される新しい実用車のなかで埋もれてしまうだろう。

(文=青木禎之/写真=荒川正幸)

「M」および「G」グレードはアイドリングストップ機構などを採用し、27.2km/リッター(JC08モード)を達成した。
「M」および「G」グレードはアイドリングストップ機構などを採用し、27.2km/リッター(JC08モード)を達成した。 拡大
1リッター直3エンジンは69psを発生する。ジヤトコの副変速機付きCVTを搭載。
1リッター直3エンジンは69psを発生する。ジヤトコの副変速機付きCVTを搭載。 拡大
タイヤサイズは全グレード共通の165/65R14。試乗車にはブリヂストン・エコピア EP150が装着されていた。
タイヤサイズは全グレード共通の165/65R14。試乗車にはブリヂストン・エコピア EP150が装着されていた。 拡大
試乗距離は約190km。高速道路8割、一般道2割程度の走行パターンで燃費は17.6km/リッターだった(車載燃費計表示による)。
試乗距離は約190km。高速道路8割、一般道2割程度の走行パターンで燃費は17.6km/リッターだった(車載燃費計表示による)。 拡大

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