日産の新技術「ステアバイワイヤ」を試す

2012.11.09 自動車ニュース
ステアバイワイヤ機構を搭載した「インフィニティG37セダン」。
日産の新技術「ステアバイワイヤ」を試す

日産の新技術「ステアバイワイヤ」を試す「先進技術説明会&試乗会 2012」に参加して

毎年恒例の「日産先進技術説明会&試乗会」が、同社追浜工場に隣接するテストコース「グランドライブ」で開かれた。新しいパワートレイン、安全デバイス、インテリア素材など、同社の最新技術が幅広く紹介された。その主だったところを2回に分けて報告する。

次世代ステアリングシステムは、ステアリングホイール裏の「フォースアクチュエーター」、3台のECU、ステアリングギア部の「アングルアクチュエーター」、ステアリングコラム上のクラッチなどで構成される。
次世代ステアリングシステムは、ステアリングホイール裏の「フォースアクチュエーター」、3台のECU、ステアリングギア部の「アングルアクチュエーター」、ステアリングコラム上のクラッチなどで構成される。
ステアリングホイールへの、外乱要因による“余計な”入力を遮断することも可能だ。わだちや段差の存在はドライバーに伝わってこない。
ステアリングホイールへの、外乱要因による“余計な”入力を遮断することも可能だ。わだちや段差の存在はドライバーに伝わってこない。
ルームミラー上に設置されたカメラが車線を認識。細かな操舵を自動で行い、直進を維持する。
ルームミラー上に設置されたカメラが車線を認識。細かな操舵を自動で行い、直進を維持する。

■ステアリングフィールの演出が自由自在

説明会で紹介された先進技術の目玉に、「次世代ステアリング技術」があった。前輪の操舵(そうだ)を機械的なリンクではなく、電気信号とアクチュエーターによって行う技術だ。1年以内にインフィニティ車に採用する予定で、実用化されれば量産車としては世界初の試みとなる。

ステアリングホイールと前輪を機械的につなげることなく、ステアリング操作を電気信号に変換し、それを離れた操舵装置に伝えて前輪をアクチュエーター(モーター)で動かす。いわゆるステアバイワイヤである。市場ではスロットルやブレーキのバイワイヤ化はすでに済んでいるが、ステアバイワイヤは最もデジタル変換が難しいということだろうか、市販車への採用例はまだない。

『11PM』風に質問するなら「効能は?」ということになるが、たくさんある。まず、機械的なリンクよりも反応が素早い。ドライバーの操作は遅れなくタイヤの動きとなるし、逆に路面からの入力もステアリングホイールを通じてドライバーに素早く伝えることができるため、レスポンシブなステアリングフィールとハンドリングが可能となる。
また反対に、荒れた路面などの外乱要因による入力を遮断し、ドライバーに伝えないことも可能だ。従来の方式だと、レスポンシブなハンドリングを目指せば目指すほど、外乱要因も正直に伝わってしまったが、入力を取捨選択し、必要な情報だけ伝えることができる。

さらに、横風があったり道路が傾いていたりして、まっすぐ走りたいのに自然にステアリングを取られるような場合がある。そんな時、通常はしっかりステアリングを握って直進を維持しなくてはならないが、日産が今回披露した技術では、ルームミラー上に設置したカメラが車線を認識し、直進すべきと判断した場合、細かなステアリング操作を自動で行うようになっている。

■その差、明確

試乗では、最初にこの技術が採用されていない現在市販中の「スカイライン」で指定コースを走行した。その後、ステアバイワイヤ・システムを搭載した同型車(左ハンドルの「インフィニティG37セダン」)で同じコースを走った。

会場ではFF車用ハイブリッドシステム搭載車の試乗も行われた。テスト車は日本未導入の「インフィニティJX」。
会場ではFF車用ハイブリッドシステム搭載車の試乗も行われた。テスト車は日本未導入の「インフィニティJX」。
FF車用ハイブリッドシステムも、「日産フーガ」などのFR車用と同様に1モーター2クラッチ方式を採用。クラッチ1はエンジン(4気筒)とモーターの間、クラッチ2はモーターとCVTの間に設置されている。
FF車用ハイブリッドシステムも、「日産フーガ」などのFR車用と同様に1モーター2クラッチ方式を採用。クラッチ1はエンジン(4気筒)とモーターの間、クラッチ2はモーターとCVTの間に設置されている。
こちらはEV用の「非接触充電システム」のデモ。「電磁誘導方式」を採用しており、「地上送電ユニット」(車体の下に見える白い機器)から車体側の「受電ユニット」へ、文字通り非接触で電力を送る。安全性を考慮し、「日産リーフ」ならフル充電に約8時間かけるよう設定されている。
こちらはEV用の「非接触充電システム」のデモ。「電磁誘導方式」を採用しており、「地上送電ユニット」(車体の下に見える白い機器)から車体側の「受電ユニット」へ、文字通り非接触で電力を送る。安全性を考慮し、「日産リーフ」ならフル充電に約8時間かけるよう設定されている。

不整路では、なるほどステアリングホイールを通じた振動はほぼ皆無だ。足まわりとボディーを通じて振動が伝わってくるのに、ステアリングのみ“平和”という点が面白い。
わだちの存在は、非搭載車で走った時にステアリングが取られたから認識できるのであり、搭載車のステアリングからは伝わってこない。試乗コースの長さが短く、正直、これはすごいと実感するほどじっくり乗せてはもらえなかったが、非搭載・搭載の違いはすぐにはっきりとわかった。

「真価を発揮するのは長距離運転で、疲労度が違います」とは開発エンジニアの言葉だが、そうかもしれない。疲労度もさることながら、本当に必要な情報のみをフィードバックし、不要な情報を遮断できれば、この上なく高級なステアリングフィールが実現できるだろう。
また、これまでFF車は前輪がステアと駆動の両方を受け持つという機構上、ステアリングフィールはどうしてもFR車のそれよりも劣っていたが、ことフィールに関してはハンディがなくなるのかもしれない。

ステアリングホイールと前輪がシャフトでつながっていても、BMWやトヨタのように、状況に応じてギア比やアシスト量を変えるシステムはあるが、シャフト経由でなくなれば、より自由自在のはず。近い将来、「スカイライン」や「フーガ」が画期的なダイナミックパフォーマンスを見せてくれるかもしれない。
ハイブリッド、EV、プリクラッシュブレーキなど、近頃乗用車に採用される画期的な技術は効率面、安全面ばかりなので、ぜひとも久々に運動性能面でクルマ好きを驚かせてほしい。

ステアリングという安全上最も重要な機能だけに、複数のECUが相互監視するほか、構造的にステアリングシャフトが念のため残され、普段は切れている(フリーになっている)クラッチをつなげることで、万が一の時にメカニカルな操作ができるようになっている。
とはいえ、それはあくまで保険とのこと。日産は資料の中で、「旅客機のフラップだってそうだ」という例を引き合いに出し、バイワイヤ技術がメカより信頼性が低いわけではないと主張する。

(文=塩見智/写真=小河原認)

このシステムでは、駐車位置ズレの許容範囲は最大10cmとなかなかシビアだ。そこでパーキングアシスト機能を搭載し、適正な駐車位置に誘導する想定となっている。
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