第269回:デザインがかっこいいだけでは幸せになれない!?

2012.11.02 エッセイ

第269回:デザインがかっこいいだけでは幸せになれない!?

デザインの国に感激

その昔、東京神保町の出版社で働いていた時代の話である。向かいの古書店街で見つけてきたイタリアの工業デザイン写真集を開き、ウルトラモダンな水栓の解説を眺めながら「さすがイタリア。かっこいいですねえ」と職場の先輩に同意を求めた。しかし相手からは冷ややかな答えが返ってきた。

「どう蛇口をひねれば水が出るか、誰が使ってもすぐにわかるデザインでなければダメだ」というではないか。

全くもって頭が固い。「ずっと黒電話でも使ってろ」と暴言を吐こうと思ったが、サラリーマンの身ゆえ、グッとこらえたのを覚えている。

後年イタリアに住んでみると、さまざまな場所でスタイリッシュなデザインのモノに遭遇した。通っていた外国人大学の教室のドアノブや蛍光灯のシェードだけでも感激したものだ。たしかに若干操作がわかりにくい水道の蛇口などもある。でも数秒いじっていれば、すぐに使い方がわかるではないか。
「チャレンジ優先のデザインに間違いなし」と思ったものだ。

近年欧州に増えているデザインホテルのお決まり、四角い洗面台。ベルギー・ブリュッセルにて。
近年欧州に増えているデザインホテルのお決まり、四角い洗面台。ベルギー・ブリュッセルにて。
そのデザインホテルのトイレットペーパー。
そのデザインホテルのトイレットペーパー。

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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住20年という脈絡なき人生を歩んできたものの、それだけにあちこちに顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーター。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストをはじめラジオでも活躍中。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。