クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=3900×1695×1490mm/ホイールベース=2490mm/車重=1180kg/駆動方式=FF/交流同期モーター(102ps/5200-12000rpm、15.3kgm/0-2800rpm)/航続距離=200km(JC08モード)/価格=357万7000円(テスト車=387万7000円/100V給電システム=30万円)

マツダ・デミオEV(FF/1AT)【試乗記】

市販しなけりゃもったいない 2012.11.06 試乗記 マツダ・デミオEV(FF/1AT)
……387万7000円

マツダの売れっ子コンパクトカー「デミオ」にEVバージョンが登場。その走りにはどんな特徴があるのか? 一般道と高速道路で試した。

満を持してのEVバージョン

ハイブリッドカーと並ぶエコカーの本命と見られてきた電気自動車(EV)の勢いに、最近、陰りが見えつつあるようだ。

当初は好調な売れ行きを示していた「日産リーフ」は、2012年度については、世界販売目標をクリアできない恐れが出てきた。最大のマーケットである北米での販売が低迷しているようだ。一方日本では、長所のひとつであるCO2排出量の少なさに関して、実はハイブリッドカーと変わらないという主張がある。原子力発電所が止まり、太陽光・風力発電はこれからという中で、火力発電への依存率が急速に高まっているからだ。

そんな中、マツダから「デミオEV」が発表されたというニュースを見て、「どうして?」と思った人も多いだろう。マツダといえば、高効率の内燃機関を主役とした「スカイアクティブ・テクノロジー」で独自の地位を築きつつあるからだ。そこで導入の理由を開発担当者に聞いたら、ちょっと心温まる答えが返ってきた。

現在、EVに最も熱い視線を送るのは、地方自治体や企業だ。移動コストの節約になるし、環境イメージのアピールにもなる。それはマツダが本拠を置く広島県でも同じだ。しかし同県は、これまでEVを積極的に導入しておらず、導入にあたり地元産のEVを使いたいという気持ちから、マツダに開発を要望したのだ。涙が出るような郷土愛である。
マツダは1970年代から、「ファミリア」や「ボンゴ」のEV仕様を数台レベルで製作していて、EVと無縁ではない。しかも環境性能向上のためには、電気エネルギーの活用が不可欠であり、EVの開発が必要であるという結論に至ったそうだ。

マツダの「デミオEV」は、100台限りの電気自動車。2012年10月、中国地方の地方自治体や法人顧客を中心にリース販売が始まった。
マツダの「デミオEV」は、100台限りの電気自動車。2012年10月、中国地方の地方自治体や法人顧客を中心にリース販売が始まった。 拡大
インテリアは、メーターの表示など一部を除き、ガソリン車の「デミオ」と共通のものとなる。
インテリアは、メーターの表示など一部を除き、ガソリン車の「デミオ」と共通のものとなる。 拡大
メーターのアップ。中央のスピードメーターに「EV」のロゴが添えられるほか、左側にはパワーメーターが、右側にはEV独自のマルチインフォメーションディスプレイが与えられる。
メーターのアップ。中央のスピードメーターに「EV」のロゴが添えられるほか、左側にはパワーメーターが、右側にはEV独自のマルチインフォメーションディスプレイが与えられる。 拡大

「Zoom-Zoomな走り」が自慢!?

デミオのEVというと、茨城県つくば市で実証実験を行っている車両を思い出した人がいるかもしれない。しかしあちらは、伊藤忠商事や東京アールアンドデーなどがデミオを改造したもので、マツダ製ではない。
今回のデミオEVは、安川電機と共同開発したモーターや「テスラ・ロードスター」にも使われるパナソニック製リチウムイオン電池など、サプライヤーが関与しているパーツがあるものの、全体設計はマツダ自身が行った。

すでに2012年10月から中国地方の自治体や企業向けに6年間のリース販売を開始しており、合計100台を供給予定。取材時点で20台あまりがデリバリーされていた。価格は357万7000円で、補助金を適用すると262万7000円になるという。

EVとしての基本性能は、満充電での航続距離がJC08モードで200km、充電時間は200Vで約8時間、急速充電では80%まで40分と、リーフと大差ない。スマートフォンで充電やエアコンのタイマー予約が行えたり、AC100Vコンセントが用意(オプション)されたりという点も、EVやハイブリッドカーでおなじみだ。

ではデミオEVならではの特徴は何かと尋ねると、なんと「Zoom-Zoomな走り」だという。自治体や企業向けの車両に「Zoom-Zoom」が必要なのか、不思議な感じもしたけれど、「マツダですから」と言われて納得した。
フロントに搭載して前輪を駆動するモーターは、巻線を2段階切り替え式とすることで、発進の力強さと高速域での伸びを両立した。バッテリーは厚さ25mmの薄型として、15mm高めた床下のホイールベース間に装着することで、低重心を実現するとともに、前後重量配分をガソリン車の65:35から60:40に適正化した。軽量化にも配慮しており、車両重量は190kgアップの1180kgにとどめている。
ここまで走りに言及する電気自動車も珍しいと、試乗前の説明を聞きながら思ったけれど、実際に乗るとたしかに、運転して楽しいEVだった。

フロントにおさまるパワーユニットは、巻線切り替え式の永久磁石型三相交流同期モーター。「デミオ13-SKYACTIV」に比べて18psと3.9kgm増しの102ps、15.3kgmを発生する。
フロントにおさまるパワーユニットは、巻線切り替え式の永久磁石型三相交流同期モーター。「デミオ13-SKYACTIV」に比べて18psと3.9kgm増しの102ps、15.3kgmを発生する。 拡大
車体右側のフロントフェンダー部分には、写真の急速充電口が備わる。このほか、200Vの普通充電口が、同じ車体右側のリアドア後方に設けられている。
車体右側のフロントフェンダー部分には、写真の急速充電口が備わる。このほか、200Vの普通充電口が、同じ車体右側のリアドア後方に設けられている。 拡大
荷室の床下に置かれる100Vの給電システム。2年間の車両開発中に発生した東日本大震災が刺激となって生まれたというこのオプション、30万円という高価格にもかかわらず半数のユーザーに選択されている。
荷室の床下に置かれる100Vの給電システム。2年間の車両開発中に発生した東日本大震災が刺激となって生まれたというこのオプション、30万円という高価格にもかかわらず半数のユーザーに選択されている。 拡大

マツダ・デミオEV(FF/1AT)【試乗記】の画像 拡大

ロータリーのような、MT車のような……

ボディーは、バッテリーの設置に伴い全高が15mm高くなった以外、電動車であることを意識させない。素晴らしいのは室内や荷室もベースモデルと共通であること。ガソリン車と同じスペースが確保されているのだ。

メーターは左側のタコメーターがパワーメーターに、右側の「i-DM」表示画面がマルチインフォメーションディスプレイに変更されたものの、デザインは同じ。“イグニッションスイッチ”をひねってセレクターレバーでDレンジを選び、アクセルペダルを踏むという発進操作もガソリン車と何ら変わりない。

でもその後の走りはもちろん違う。街中での加速は静かで強力。この点は他のEVも共通だが、違うのは高速道路に乗ってからも、巻線切り替えのおかげで伸びがまったく鈍らないこと。ロータリーエンジンみたいだ。しかも外国製EVによく見られるように回生が強く効くから、アクセル操作で速度を調節するという、MT車のようなドライビングフィールが堪能できる。

セレクターレバーにはDレンジの他、加速を控えめに、回生を強めにする“Eレンジ”もあり、レバー横にはさらに回生を効かせるチャージスイッチまである。Dレンジ+チャージとEレンジの回生レベルは同じだ。MTライクな走りが味わえるのはEレンジ+チャージのときで、下り坂なら走行可能距離が伸びるという喜びもある。おかげで試乗の大半をこのモードで過ごしてしまった。

街中限定で試したハンドリングは、ノーズの動きはそんなにクイックではないものの、コーナーに入ってからの“低重心感”はけっこう快感。しかも乗り心地は、重量増がプラスに作用して、ガソリン車のデミオより落ち着いている。

すべての内燃機関自動車をEVで置き換えられるとは僕も思っていない。でも自治体や企業のように、一定の地域内で走行し、多くの人間でシェアする使い方には適していると考えている。だからデミオEVの供給方法には納得がいくけれど、ここまで「Zoom-Zoom」なのに一般ユーザーに売らないのはちょっともったいない気もした。

(文=森口将之/写真=峰昌宏)

メーター右側には、平均“電費”や航続可能距離、ギアポジションなどが表示される。写真の「E」はEレンジを、「Ch」はチャージスイッチがオンであることを示す。
メーター右側には、平均“電費”や航続可能距離、ギアポジションなどが表示される。写真の「E」はEレンジを、「Ch」はチャージスイッチがオンであることを示す。 拡大
シフトレバー横のマーキングに注目。Dレンジの手前には、加速を抑えつつ減速回生を強めるEレンジが設けられる。
シフトレバー横のマーキングに注目。Dレンジの手前には、加速を抑えつつ減速回生を強めるEレンジが設けられる。 拡大
「デミオEV」は「デミオ13-SKYACTIV」(13.4秒)よりも短い10.8秒で0-100km/h加速をこなすことができる。
「デミオEV」は「デミオ13-SKYACTIV」(13.4秒)よりも短い10.8秒で0-100km/h加速をこなすことができる。 拡大
ボディーカラーは写真の白に加え、銀、青、黒、赤もラインナップ。側面のデカールは、“大”(写真)と、フロンドドア下方におさまる“小”の二者択一となる。
ボディーカラーは写真の白に加え、銀、青、黒、赤もラインナップ。側面のデカールは、“大”(写真)と、フロンドドア下方におさまる“小”の二者択一となる。 拡大

関連キーワード:
デミオマツダ試乗記

あなたにおすすめの記事