第6戦モナコGP「バトンにとって格別な勝利」【F1 09 続報】

2009.05.25 自動車ニュース
1929年以来続く伝統のモナコGP。ダウンフォースを大幅に削られた2009年スペックのF1マシンは、ツイスティな市街地コースでいつも以上に大暴れ。週末を通じ、フェリッペ・マッサやルイス・ハミルトンら大物ドライバーもウォールの餌食となった。(写真=Brawn GP)
第6戦モナコGP「バトンにとって格別な勝利」【F1 09 続報】

【F1 09 続報】第6戦モナコGP「バトンにとって格別な勝利」

2009年5月24日、モンテカルロ市街地コースで行われたF1世界選手権第6戦モナコGP。ブラウンとジェンソン・バトンを止めるのは誰か、という答えは、この地中海に面した小さな国でも見つけることができなかった。ブラウンとバトンは、常勝の流れのなかにいる。

ジェンソン・バトンとブラウンGPにとって今年5回目の勝利。バトンはポイントを51点、ブラウンは86点とし、それぞれのチャンピオンシップで堂々の首位につく。 ちなみにエンジンサプライヤーのメルセデスにとっては通算72回目の優勝となり、歴代4位の記録に並んだ。いまこのレコードを分つエンジンはホンダ、つまりブラウンの前身であるというのが何とも皮肉だ。今年中に抜かれるであろうことはほぼ間違いない。(写真=Brawn GP)
第6戦モナコGP「バトンにとって格別な勝利」【F1 09 続報】

■変わったものと変わらないもの

狭く曲がりくねったモンテカルロの街で、これほどF1マシンが滑る光景が見られたのも久しぶりである。レギュレーションが大幅に変えられ、ダウンフォースを大きく削られた今年のマシンは、各所で姿勢を乱し、その度にドライバーにより正しい向きに戻されようとする。そのさまは見るものの目を楽しませ、またドライバーの神経をすり減らす。

しかし結局のところ、モナコでドライバーの腕が試されるということには何ら変わりはない。シーズン序盤、不調に喘いだフェラーリやマクラーレンがここで上位に食い込んできたことも、ハードウェアの向上よりも、ドライバーの力量がものをいった結果なのかもしれない。

そして、ドライバーの力量という点からすると、勝者バトンとそのほかのドライバーとの間には、歴然とした差があった。マシンの優位性は引き続き保たれているものの、優勝の裏には、ミスなく、隙なく、ウルトラスムーズなバトンのドライビングがあった。

初日プラクティスで3位と出だしはまずまずだったマクラーレンのルイス・ハミルトン(写真)。だが予選Q2中、ミラボーコーナーでウォールにヒットしたことですべてが台無しに。ギアボックスを交換したことで最後尾からレースをはじめたが、追い抜きほぼ不可能のモナコでは追い上げ難しく、さらにアンダーステアと格闘したことで12位完走がやっとだった。チームメイトのヘイキ・コバライネンは予選7位からポイント圏内を走行したが、スイミングプールでクラッシュ、戦列を去った。(写真=Mercedes Benz)
初日プラクティスで3位と出だしはまずまずだったマクラーレンのルイス・ハミルトン(写真)。だが予選Q2中、ミラボーコーナーでウォールにヒットしたことですべてが台無しに。ギアボックスを交換したことで最後尾からレースをはじめたが、追い抜きほぼ不可能のモナコでは追い上げ難しく、さらにアンダーステアと格闘したことで12位完走がやっとだった。チームメイトのヘイキ・コバライネンは予選7位からポイント圏内を走行したが、スイミングプールでクラッシュ、戦列を去った。(写真=Mercedes Benz)
ブラウンの好敵手、レッドブルはモナコで苦戦。燃料を積まず軽めのマシンでセバスチャン・ベッテル(写真)は4番グリッドを得たが、最初に履いたソフトタイヤに難儀し走るシケインと化した。タイヤ交換後、マシンをウォールにヒットさせ、中国GPウィナーはリタイアをきっした。チームメイトのマーク・ウェバーは5位完走。(写真=Red Bull Racing)
ブラウンの好敵手、レッドブルはモナコで苦戦。燃料を積まず軽めのマシンでセバスチャン・ベッテル(写真)は4番グリッドを得たが、最初に履いたソフトタイヤに難儀し走るシケインと化した。タイヤ交換後、マシンをウォールにヒットさせ、中国GPウィナーはリタイアをきっした。チームメイトのマーク・ウェバーは5位完走。(写真=Red Bull Racing)

■ソフトタイヤで苦戦

予選で今年4度目のポールポジションを獲得したバトン。ブラウンのフロントロー独占を阻んだのは、これまで散々苦しんできたフェラーリだった。キミ・ライコネンは、グリッド順が何よりも重要なモナコで、ルーベンス・バリケロの前、2番グリッドからレースを組み立てることになった。

だがライコネンにとって、走行ラインではない偶数番グリッドは不利なポジションだった。決勝スタートではポールシッターのバトン、3番グリッドのバリケロが飛び出し、早々にブラウンは1-2フォーメーションを形成。ライコネンは3位から追う展開となった。

レース序盤、ソフトタイヤを履いたマシンのペースがあがらなくなる。特に真っ先にペースを落としたのが4位を走るレッドブルのセバスチャン・ベッテル。先頭集団が1分17秒台で周回を重ねていたのに対し、ベッテルを先頭に、5位フェリッペ・マッサ、6位ニコ・ロズベルグ、7位ヘイキ・コバライネンらの後方集団は21秒台と尋常ならざるスロー走行。10周目、しびれを切らしたマッサ、ロズベルグがベッテルをパスし、ベッテルは直後にピットへと飛び込んだ。ベッテルはタイヤ交換後、数周してコースをはみ出し自滅した。

ソフトを履いてスタートしたブラウンも例外ではなかった。10周してトップのバトンに5秒の差をつけられた2位バリケロは、12周頃からタイムが落ちはじめ、3位ライコネンとテール・トゥ・ノーズ状態となる。

しかし、いっぽうバトンはといえば、タイヤをいたわった走行により、劇的なドロップオフはみられない。後方でバリケロがライコネンにフタをするかっこうとなったのも、バトンにとって追い風となった。

フェラーリに復活の曙光がさしたモナコ。キミ・ライコネン(写真)は今年初となるフロントロー(予選2位)から、3位でフィニッシュし、これまた今年初の表彰台にのぼった。フェリッペ・マッサは5番グリッドから4位でゴールし、2台はダブル入賞。ブラウンに勝負を挑むことはできなかったが、他チームを引き離すことができた1戦だった。(写真=Ferrari)
フェラーリに復活の曙光がさしたモナコ。キミ・ライコネン(写真)は今年初となるフロントロー(予選2位)から、3位でフィニッシュし、これまた今年初の表彰台にのぼった。フェリッペ・マッサは5番グリッドから4位でゴールし、2台はダブル入賞。ブラウンに勝負を挑むことはできなかったが、他チームを引き離すことができた1戦だった。(写真=Ferrari)
この写真を見て、テールエンダー同士の争いとはにわかに信じられまい。シーズン序盤のフライアウェイでの勢いは消え去り、トヨタ(写真手前)はここモナコでテールエンダーに。初日から苦戦し、予選ではQ1すら突破できず、2台ともはるか後方からスタート。ティモ・グロックは1ストップ作戦をとり、57周目までピットインを引っ張る超ロングスティントを走り切り10位完走。ヤルノ・トゥルーリはコンベンショナルな2ストップで14位だった。(写真=Toyota)
この写真を見て、テールエンダー同士の争いとはにわかに信じられまい。シーズン序盤のフライアウェイでの勢いは消え去り、トヨタ(写真手前)はここモナコでテールエンダーに。初日から苦戦し、予選ではQ1すら突破できず、2台ともはるか後方からスタート。ティモ・グロックは1ストップ作戦をとり、57周目までピットインを引っ張る超ロングスティントを走り切り10位完走。ヤルノ・トゥルーリはコンベンショナルな2ストップで14位だった。(写真=Toyota)
ウィリアムズは、ニコ・ロズベルグが予選6位から上位を狙ったが、フェラーリ勢には追いつけず結局6位でゴール。中嶋一貴(写真)は、予選で初めてQ3に進出し、10番グリッドから入賞を目指したが、長いスティントでペースを上げきれず、ゴール目前の10位走行中にクラッシュ、完走扱いの15位だった。(写真=Williams)
ウィリアムズは、ニコ・ロズベルグが予選6位から上位を狙ったが、フェラーリ勢には追いつけず結局6位でゴール。中嶋一貴(写真)は、予選で初めてQ3に進出し、10番グリッドから入賞を目指したが、長いスティントでペースを上げきれず、ゴール目前の10位走行中にクラッシュ、完走扱いの15位だった。(写真=Williams)

■バトンの“唯一のミス”

苦戦するソフトタイヤ勢を尻目に上位を狙いたいハードタイヤのフェラーリだったが、短めの第1スティントが災いし、ピットストップ後もブラウンの牙城を切り崩せず。そして自らにもソフトタイヤを履く番がまわってくると、表彰台の中央はもちろん、2番目にも手が届かなくなり、ブラウン3度目の1-2フィニッシュを許す結果となった。

ブラウン&バトン、6戦目にして5勝。まさに向かうところ敵なしとはこのことである。
ただ、ここでの勝利がほかとは違う格別なものであることは、バトン自身がレース後に語っている。「モナコGPで勝つことは子供の頃からの、そしてレーシングドライバーとしての夢だった。実現してみると、とてつもなくすばらしい気分だ」。

ジェンソン・バトンが、いまもっともチャンピオンに近いドライバーであり、また29歳にして10年目のベテランGPドライバーなのだが、勝利を重ねるようになったのはほんの数カ月前からのこと。彼にとって、1929年から続く伝統の一戦での勝利は、まさに格別なものであったに違いない。

そういえば、最後にバトンはこの週末唯一のミスをおかした。チェッカードフラッグをくぐり抜け、感激のウィニングランを終えたバトンのブラウン・メルセデスは、ピットレーンに停まってしまった。モナコの表彰式は、ロイヤルファミリーが見守る特設表彰ボックスで行われ、3台のマシンはその前に停められることになっている。

マシンを降り、ピットからポディウムへと走るバトン。そのステップは、1時間40分のレースを戦った後とは思えないほど軽く、力強いものだった。常勝の流れのなかに身を投じているドライバーの姿だった。

(文=bg)

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