第5戦スペインGP「新2強対決の構図」【F1 09 続報】

2009.05.11 自動車ニュース
ライバル、レッドブルの追い上げで開幕2戦ほどの優位性は持ち合わせていないブラウンGP。だが作戦の妙とレッドブルの不運により、2度目の1-2を達成することができた。チャンピオンシップでも、1位ジェンソン・バトン(41点/写真)、2位ルーベンス・バリケロ(27点)と上位独占。コンストラクターズランキングではレッドブルにおよそ30点の差をつけている。(写真=Brawn GP)
【F1 09 続報】第5戦スペインGP「新2強対決の構図」

【F1 09 続報】第5戦スペインGP「新2強対決の構図」

2009年5月10日、スペインはバルセロナのサーキット・デ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。ヨーロッパラウンド開幕戦、5戦してジェンソン・バトン4勝目、ブラウン2度目の1-2フィニッシュと、結果から見ればブラウンの夢のようなシーズン序盤戦の勢いが続いているが、レッドブルも着実に追い上げてきている。今回、直接対決は見られなかったが、“新2強”の構図が明確になってきた。

ブラウンの対抗馬、レッドブルは、マーク・ウェバー(写真)が3位表彰台を獲得。長い第2スティントを活用し、フェリッペ・マッサ、セバスチャン・ベッテルを出し抜くことに成功した。一方、予選のアタックをまたも決め2位からスタートしたセバスチャン・ベッテルは、終始マッサにアタマをおさえられ、結局4位でレースを終えた。(写真=Red Bull Racing)
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■スペインGPの重要性

バルセロナでのスペインGPは今年で19回目。冬のテストトラックとして各チームが多用するこのカタルーニャでの1戦は、2つの意味で重要なレースといえる。
ひとつはサーキット特性。特にマシンの空力性能が問われるコースであり、各車の素性がはっきり出てしまうのだ。テストで使われる理由もそこにある。
そして、フライアウェイ直後のレースだということも注目される所以である。3月29日の開幕戦オーストラリアから5週で4レース、すべて拠点ヨーロッパから離れた各所での連戦は、マシンの大幅なアップデートを拒んできた。
各チーム、シーズン序盤の問題を洗い出し、ブラッシュアップをかけて臨む第5戦は、まさに“第2の開幕戦”と呼べる。ここでのリザルトは、チャンピオンシップの今後を占う上でのカギとなる。そしてそれは、新しい2つのトップチーム同士の激しい戦いを示唆しているように思えた。

母国GPを5位で終えたルノーのフェルナンド・アロンソ(写真)。8番グリッドからアグレッシブなスタートで6位にジャンプアップ。前のグループには手が届かず、しかし背後からの脅威もなく、終盤のマッサのスローダウンで4点を手に入れた。チームメイトのネルソン・ピケJr.は12位完走。ルノーのポジションはまさにミドフィールドにある。(写真=Renault)
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フェリッペ・マッサ(写真)は予選で4位につけ、フェラーリ「F60」に復調の兆しがみられた。レースではKERSのお陰もあり、マッサがベッテルを抑えポディウムを狙ったものの、給油装置の不具合でゴールまでの燃料が足らないことが発覚。ペースを落として6位でフィニッシュした。キミ・ライコネンは予選Q1で敗退、決勝ではハイドロリックトラブルでリタイア。今年のフェラーリの問題は、マシン、チームオペレーション双方にある。レース後、マッサは今シーズンの敗北を認める発言をした。(写真=Ferrari)
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トヨタにとっては不運な週末だった。ヤルノ・トゥルーリは、スタート直後、コースオフしたニコ・ロズベルグを避けようとしスピンしクラッシュ、0周リタイア。ティモ・グロック(写真)もペースが振るわず10位完走。チームは今シーズン初のノーポイントに終わった。コンストラクターズランキングでは2位レッドブルの12点後方、3位。(写真=Toyota)
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■ブラウンのピット作戦

予選でポールポジションを獲得したのはジェンソン・バトンだった。Q3の最後で叩き出した最速タイムは、しかし若干給油量を抑えた軽めのマシンでもたらされたもので、フロントローを分つセバスチャン・ベッテルや予選3位のルーベンス・バリケロは、よりガソリンを多く積んでグリッドについた。

快晴の決勝日、好スタートを決めたのはブラウンのバリケロ。ポールシッターでチームメイトのバトンをアウト側から抜き、1コーナーをトップで駆け抜けた。バトンは2位、そして今季予選最高位の4位から出たフェリッペ・マッサがベッテルを抜き3位に躍り出た。

スタート直後、ヤルノ・トゥルーリのトヨタ、エイドリアン・スーティルのフォースインディア・メルセデスが接触、クラッシュし、スペインGPではめずらしいセーフティカーが出動。4周のセーフティカーランを終えレースは再スタートする。

1位バリケロ、2位バトンのブラウン勢が3位マッサ以降を引き離しにかかる。36歳の現役最年長、史上最多出走ドライバーのバリケロは、2004年以来遠ざかっている勝利に向けて、力強い走りを披露していた。

ブラウンGPは当初、2人のドライバーともに3ストップ作戦をとるつもりでいた。だが燃料が少ないバトンが、多めのバリケロの後ろにまわってしまったことで、バトンにとっては難しいレース展開となってしまった。バトンは、軽いマシンで飛ばし後続に対するアドバンテージを築かないと、勝利が遠のいてしまうのだ。
そこで、闘将ロス・ブラウン率いるチームは、バトンを2ストップ、バリケロは3ストップのままとする決断を下す。18周を終えピットに飛び込むバトンは、たっぷりとガソリンを積みコースに復帰。バリケロは翌周ピットインを済ませた。

この時点で、バリケロの自身通算10勝目も夢ではなかった。ストップが1回多い分、軽いマシンを駆りハイペースで飛ばすバリケロだったが、12周の第2スティント中にバトンに対するマージンを十分にはつくれず。そして3セット目のタイヤを履くと、バリケロのペースは不可解にも停滞した。

加えて、最終(第3)スティントで、扱いづらいハードタイヤを履くバトンが思いのほか速いラップタイムを刻んできたことも、バリケロにとっては向かい風となってしまった。17年目の大ベテランは、ウィナー、バトンの13秒後方となる2位でフィニッシュした。

マクラーレンにとっても散々な1戦。ルイス・ハミルトン(写真)は予選14位からスタート後の混乱でさらに後方に下がり、9位まで挽回したがそこまで。ディフェンディングチャンピオンは、「(マシンが)いまのままでは希望はない」とこぼした。ヘイキ・コバライネンは予選18位からギアボックストラブルで早々にリタイアした。(写真=Mercedes Benz)
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ウィリアムズは、いつものとおり金曜日のセッションで1-2をとるものの、予選、決勝では上位に食い込めず。ニコ・ロズベルグは9番グリッドから8位で完走し1点を取得。中嶋一貴(写真)は、予選で11位とQ3目前まで迫ったが、レースではスタート後の混乱に巻き込まれ、結局13位でフィニッシュした。(写真=Williams)
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■ベッテルの誤算

フタを開けてみれば、もっともスムーズで安定していたバトンが勝ち、ブラウンが今年2回目の1-2フィニッシュを飾ったが、本来なら、この2台にベッテルが絡み、三つ巴の戦いが繰り広げられてもおかしくはなかった。

ベッテルにとっての誤算は、スタートでマッサに先を越されたことだった。今回4台しか走らなかった新技術「KERS」搭載車(フェラーリとマクラーレン)の1台が前を行くということは、ただでさえ抜くのが難しいカタルーニャでは大きな足枷となる。ベッテルは、マシン的には劣勢のフェラーリが終始前を走るという、フラストレーションのたまるレースを強いられた。

残り3周、マッサは燃料が足らずペースを緩めざるを得ず、ベッテルに4位の座が転がり込んできたが、時既に遅し。バトンに勝負を挑むことを許されなかったばかりか、表彰台も逃してしまった。

レッドブルのもう1台、マーク・ウェバーが予選5位から3位表彰台に終わったことを考えると、レッドブルとブラウンの直接対決が見られなかったのは惜しかった。ウェバーは長い第2スティントをうまく活用し、マッサの影響を極力受けずにポディウムを勝ち取った。

2008年の2強─フェラーリとマクラーレン─が根の深い問題を抱え苦しんでいる一方、2009年の2強であるブラウンとレッドブルは、そのポジションを確実なものにしてきている。新世代のトップ2チームが、今後も台風の目となりシーズンを席巻しそうな予感を得た1戦だった。

次戦は5月24日、モナコGP。難攻不落のストリートコースを制するのは誰か?

(文=bg)

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