第3戦中国GP「奇才と逸材の勝利」【F1 09 続報】

2009.04.20 自動車ニュース
セバスチャン・ベッテル(中央)が今季初優勝。2位マーク・ウェバー(左)とともに、レッドブル初優勝を1-2フィニッシュという最良のカタチで飾った。3位ジェンソン・バトン/ブラウンGPの連勝は「2」でストップ。ブラウンは、長時間の雨のレースで、タイヤに適切な熱を与えられなかったようだ。(写真=Red Bull Racing)
第3戦中国GP「奇才と逸材の勝利」【F1 09 続報】

【F1 09 続報】第3戦中国GP「奇才と逸材の勝利」

2009年4月19日、上海インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第3戦中国GP。突然の雨に足をすくわれるマシン/ドライバーが多いなか、ミスなく真っ先にチェッカードフラッグをくぐり抜けたのは、史上最年少ウィナーの記録をもつセバスチャン・ベッテル。若き逸材にとっての通算2勝目は、オーストリアの飲料メーカーをオーナーとするレッドブルレーシングにとって、初の栄冠だった。

奇才エイドリアン・ニューウィの手がけた「レッドブルRB5」を駆り、ベッテルは初優勝した2008年イタリアGP同様、雨のレースをポールポジションから制した。(写真=Red Bull Racing)
奇才エイドリアン・ニューウィの手がけた「レッドブルRB5」を駆り、ベッテルは初優勝した2008年イタリアGP同様、雨のレースをポールポジションから制した。(写真=Red Bull Racing)
苦戦中の王者、マクラーレンのルイス・ハミルトン(写真)は、トップ争いにかかわることはなかったものの、濡れたコースでオーバーテイク&コースオフを繰り返し、最終的に6位でゴール。チームメイトのヘイキ・コバライネンは大きなミスなく5位に入り、2戦連続0周リタイアという最悪の結果から抜け出した。(写真=Mercedes Benz)
苦戦中の王者、マクラーレンのルイス・ハミルトン(写真)は、トップ争いにかかわることはなかったものの、濡れたコースでオーバーテイク&コースオフを繰り返し、最終的に6位でゴール。チームメイトのヘイキ・コバライネンは大きなミスなく5位に入り、2戦連続0周リタイアという最悪の結果から抜け出した。(写真=Mercedes Benz)

■“ディフューザー・ギャング団”と奇才の意欲作

中国GP直前の4月15日、FIA(国際自動車連盟)のICA(国際控訴裁判所)は、シーズン開幕前からくすぶっていた「ディフューザー問題」に明白な解答を示した。
ブラウン、ウィリアムズ、トヨタのマシン後端にあるディフューザーが、レギュレーションで規定されている高さを逸脱した違法なものであるとするライバルチームに対し、ICAはその訴えを退け合法性を認めたのだ。

ダウンフォースが大幅に削られた今年、重要な空力パーツであるディフューザーについてのこの解釈には各チームが神経を尖らせており、合法という判断にいまだ異論を唱えるものも多い。

レギュレーションの穴を突いたとされる“ディフューザー・ギャング団”は、実際、コース上でも目覚ましい速さをみせ、開幕2戦でブラウンは2連勝、トヨタはコンストラクターズランキング2位、ウィリアムズも度々セッショントップタイムをマークしている。

キナ臭い話題でスタートした2009年のF1だが、3戦目にして“ギャング団”以外のマシンがポディウムの頂点を勝ち取った。

その名は「レッドブルRB5」。空力の奇才と称されるエイドリアン・ニューウィが開発を指揮したこのマシンは、細く高いフロントノーズ、大柄なフラップを備えるフロントウィング、そしてボディ後端がぐっと低く抑えられたフォルムなど、空力性能をとことん追求したグリッド随一のグラマラスなマシンである。
また技術的には、近年例がないプルロッド式のリアサスペンションを採用するなど、奇才が手がけた最新作は、大きなレギュレーション変更をまたとない機会と捉えた意欲作である。

そしてそのマシンを駆るドライバーは、またとない逸材と称される史上最年少ウィナー、セバスチャン・ベッテルである。

唯一のルーキー、トロロッソのセバスチャン・ブエミは、開幕戦での7位に次ぐ8位入賞。着実に足固めをはかっている20歳のスイス人である。(写真=Toro Rosso)
唯一のルーキー、トロロッソのセバスチャン・ブエミは、開幕戦での7位に次ぐ8位入賞。着実に足固めをはかっている20歳のスイス人である。(写真=Toro Rosso)
フェラーリは開幕3戦でノーポイントという、1981年以来の絶不調に陥った。フェリッペ・マッサ(写真)はメカニカルトラブルでマシンがストップしリタイア。キミ・ライコネンもエンジンのパワーロスに見舞われながら10位完走。近々に復調が見込まれないなら、今年は諦め来年に希望を託す、という声も……。(写真=Ferrari)
フェラーリは開幕3戦でノーポイントという、1981年以来の絶不調に陥った。フェリッペ・マッサ(写真)はメカニカルトラブルでマシンがストップしリタイア。キミ・ライコネンもエンジンのパワーロスに見舞われながら10位完走。近々に復調が見込まれないなら、今年は諦め来年に希望を託す、という声も……。(写真=Ferrari)

■最悪のコンディションで光る“赤い猛牛”

決勝日は突如天候が崩れ、スタート前にウェットレースが宣告された。コースの各所に池や川ができ、アクアプレーン現象も起きる最悪のコンディション。そこでセーフティカーが先導してスタートが切られた。
ポールポジションのベッテルを先頭に、予選2位のフェルナンド・アロンソ、同3位マーク・ウェバー、4位ルーベンス・バリケロ、5位ジェンソン・バトンらは、スタートから8周にわたり徐行運転をしいられた。

これは、軽いマシンでフロントローを手に入れたアロンソにとっては悪いニュースだった。序盤をハイペースで走りマージンを築きたいアロンソはセーフティカーランに出鼻をくじかれたかっこう。ルノーはセーフティカーが戻る直前にピットに駆け込み給油し、この時点ではやくもレッドブル1-2フォーメーションができた。

9周から本格的なレースが開始。レッドブルの2台を追うのは、開幕以来絶好調のブラウンの2台だった。先行するバリケロを10周目にバトンが抜くと、2連勝の勢いをかってバトンの快進撃がみられるか、と思われた。

しかし、この日は違った。スタート時点でブラウンはレッドブルより15kgほど多くガソリンを積んでいたが、先んじてウェバー、ベッテルが1回目のピットに飛び込んだ後、引き続きコースに残るバトンに、過去2戦のパンチ力はなかった。

18周目、ロバート・クビサがヤルノ・トゥルーリのマシンに乗り上げクラッシュ。2度目のセーフティカーランが訪れる。
ペースセッターのベッテルにとって最大にして唯一のピンチは、このセーフティカーラン中に起きた。姉妹チーム、トロロッソのセバスチャン・ブエミが追突してきたのだ。しかし、マシンを壊したのはブエミのみで、ベッテルは奇跡的に無傷。ルーキーのブエミもノーズを交換するだけで済み、2回目の入賞を果たすことになる。

その後、ベッテルの進路を塞ぐものはあらわれず。チームメイトのウェバーも、ピットインのタイミングでバトンとクロスする場面もあったが、一度抜き去るとバトンの視界からすぐに消えてしまった。この日のレッドブルには、明らかな力量の差があったのだ。

トヨタにとって中国GPはアンラッキーなレース。ヤルノ・トゥルーリ(写真)はロバート・クビサに乗り上げられ、ご覧の通りマシン後部を破損しリタイア。ティモ・グロックは雨で困難なコンディションで7位完走、2点を獲得した。(写真=Toyota)
第3戦中国GP「奇才と逸材の勝利」【F1 09 続報】

■「レッドブルに挑むことができなかった」

ベッテルは、初優勝した2008年イタリアGPと同じ、大雨という難しいコンディションでポール・トゥ・ウィンを達成した。
レース後、ポイントリーダーのバトンは「レッドブルに挑むことができなかった」と今回の敗北を認めた。雨の走りに定評のあるバトンにとっても、レッドブルの速さを攻略できなかったのだ。

そのバトンは21点で引き続きドライバーズチャンピオンシップをリード。バリケロ(15点)とともにブラウンは1-2を堅持しているが、今季初得点のベッテルが10点で3位に躍進している。
またコンストラクターズチャンピオンシップは、ブラウン(36点)の首位は変わらないが、トヨタを1点差で抜きレッドブルが2位に浮上した。

旋風を巻き起こした新興チーム、ブラウンに、5年目のレッドブルが待ったをかけた。パドックでの政治はさておき、コース上では新しいヒーローたちが接戦を繰り広げている。ファンが見たいのがどちらであるか、答えははっきりしていると思う。

次戦は1週間後の4月26日。砂漠のサーキットで開かれるバーレーンGPだ。

(文=bg)

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