アメリカ自動車産業はもうオシマイ!? 〜デトロイトショー2009を通じてわかったこと

2009.01.20 自動車ニュース
一段と寒く感じられる(?)今年のデトロイトショー。会場の前で。
アメリカ自動車産業は終わりだ 〜デトロイトショー2009を通じてわかったこと

アメリカ自動車産業はもうオシマイ!? 〜デトロイトショー2009を通じてわかったこと

世界自動車不況下で開催された、2009年のデトロイトショー。会場の様子や関係者の話からわかってきた自動車業界の今後とは? 現地からのリポート。

今後の発展が注目される、中国「BYD」のブース。
アメリカ自動車産業はもうオシマイ!? 〜デトロイトショー2009を通じてわかったこと

■寒すぎたデトロイト

2009年1月11日の朝8時――米ミシガン州デトロイト市街の気温は、マイナス3度。「North America International Auto Show」 (通称デトロイトショー)、プレスデー初日が幕を開けた。ショー会場「COBOセンター」の周りは例年と違い、自動車メーカーの大きな広告が全く見当たらない。失業率10%を超えるデトロイトに、華やかだった60年代の“モータウン(Motor Town)”の面影は、ない。

8時45分、開場と同時に展示フロアに足を踏み入れた。が、「日産/インフィニティ」「三菱」「スズキ」「ポルシェ」「フェラーリ」の姿が見あたらない。
代わって、昨年まで同会場の地下フロアにいた、中国の「BYD」(Build Your Dreams)がメイン会場へと昇格。ほかにも、米国EVメーカー「TESLA」といった“新参者”の姿がちらほら。それでも空いたスペースは全ては埋まらず、特設のカフェテリアやショー展示部材置き場になっていた。
この日を含めたプレスデーの3日間、現場で各メーカーへの取材を通じて思ったのは「明らかに時代が変わった」ということだ。

GMは、写真の「シボレー・ビート・コンセプト」など、16種類の新車やコンセプトカーを展示した。(写真=GM)
GMは、写真の「シボレー・ビート・コンセプト」など、16種類の新車やコンセプトカーを展示した。(写真=GM)
記者団に揉みくちゃにされる、GMのリック・ワゴナー会長。
記者団に揉みくちゃにされる、GMのリック・ワゴナー会長。
欧州勢は、比較的元気な印象。写真は、アウディのプレミアム5ドアハッチバック「スポーツバックコンセプト」。(写真=アウディ)
欧州勢は、比較的元気な印象。写真は、アウディのプレミアム5ドアハッチバック「スポーツバックコンセプト」。(写真=アウディ)

■中国時代の幕開け!?

崖っぷちに立っている米ビッグ3のプレスブリーフィングで、期待された「明確なる将来の事業計画」は聞かれなかった。各社ともEVビジネスへの本格参入を高らかに謳うが、実用化に向けての具体的な製造施策や製造コスト、さらに具体的な使い勝手や価格などは不明瞭なまま。メディアへの対応も、製品の紹介というより「投資家へのアピール」を優先している印象だった。
メディア数は例年以上の多さだったが、その多くはデトロイトショーを「未曾有の自動車危機」として取り上げる経済関連ニュースの畑である。クルマという商品の楽しさや新技術への憧れがあるわけでもなく、ただただ、米ビッグ3が今後もたらす、雇用や株価への経済的影響が興味の対象なのだ。

対する欧州勢は、なぜだか、元気そうに見えた。「アウディ」を筆頭に、「ダイムラー」「フォルクスワーゲン」「BMW」は例年どおりの華やかな舞台装置で、スポーツカーや高級車を出展した。パワーユニットで見られたのは、時代を考慮した次世代クリーンディーゼルや直噴ガソリンエンジン程度。
とはいえ、日米メーカーの「自粛ムード」とはあまりにも対照的な光景だ。スペイン、イギリス、アイスランド、ハンガリーなどでは国家経済が急速に収縮している欧州。それに比べれば、ドイツ、フランス、イタリアの経済ダメージは小さいということか? 日米の自動車関係者の多くは「欧州勢の多くは、中期事業計画の見直しが遅れている」と指摘しているが……。

そして、各メディア、各メーカーが最も気にしていたのが、中国の「BYD」だ。同社は2003年創業の若い自動車メーカーだが、元々の事業主体がバッテリーメーカー。2008年12月、「トヨタ・プリウス」を差し置いて“世界初のプラグインハイブリッド車”「F3-DM」を中国国内で発売して話題を呼んだ。今回は、同車の北米初お目見えとなり、発表会場は大変なひとだかりだった。
中国は近年中に国策として、EV、ハイブリッド車の技術促進と市場開拓を進めようとしている。BYDの本拠である、香港に近い深圳(しんせん)が「EVモデル都市」を目指す構想もある。

トヨタは、ハイブリッドカーの代名詞「プリウス」の3代目をワールドプレミアした。
トヨタは、ハイブリッドカーの代名詞「プリウス」の3代目をワールドプレミアした。
城砦のようなGM本社を横目に、デトロイトの街を通過。アメリカ自動車産業が立ち直る日は、はたして来るのか?
城砦のようなGM本社を横目に、デトロイトの街を通過。アメリカ自動車産業が立ち直る日は、はたして来るのか?

■自動車不況がもたらすもの

世界各地で起こっている、今回の自動車不況。各国それぞれの社会実情で程度に違いはあるが、どこも共通して、2つの変化に直面している。

ひとつは、世界市場の組み換え。アメリカが主導し、日欧が追随し、最近はBRICs(ブラジル、ロシアなどの新興国)とASEAN(東南アジア諸国連合)がそれを追う図式だった。いま、そこから、アメリカが転がり落ちた。もはや、「GM」「フォード」「クライスラー」は、ビッグ3にあらず。米メディアは3社の世界規模での事業縮小は定常化するとして、これらの米国ローカル化を示す「デトロイト3」という新語を生み出したほどだ。長きに渡りアメリカ市場を頼りにしていた日本自動車産業もまた、根本的に考え方を変えるべき時期になったわけだ。

ふたつめは、自動車そのものの変化。自動車のEV化は今後2〜3年間で急加速するだろう。ひとことでいえば、クルマは、機械製品から電機製品へと立ち位置を変える。コストの面でも、新興国だけでなく欧米でも、「安かろう悪かろう、でもこの価格なら一応OK」という安さ重視の超低価格車が普及する。そういう意味でも、中国の存在感が大きくなるはずだ。

1月14日午前4時、気温はマイナス17度。デトロイト市街でタクシーをひろい、空港に向かった。クルマは、11万マイル(17.6万キロ)をあとにした、アメリカのタクシーの定番「フォード・ヴィクトリア」。ドライブシャフト周辺からガタガタと音を出しながら……。凍結した路面をふらふらと走り去るタクシーの後姿は、まさに息の根の止まりそうなアメリカ自動車産業のようだった。
しかし、世界のなかで立ち位置が見えない日本も、ひとごとではないだろう。――我々はこれから一体、どうすればいい?

(文と写真=桃田健史(IPN))

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