最終戦ブラジルGP「30人目のチャンピオン誕生」【F1 08 続報】

2008.11.03 自動車ニュース
5位入賞で初タイトルを手中に収め、喜びにわくルイス・ハミルトンとマクラーレン・チーム。23歳のイギリス人は、フェルナンド・アロンソの記録を抜き最年少チャンピオンに。史上初の黒人系王者としても歴史に名を残すこととなった。マクラーレンにとっては1999年ミカ・ハッキネン以来12回目となる、久々のドライバーズタイトルを獲得。(写真=Mercedes Benz)
最終戦ブラジルGP「30人目のチャンピオン」【F1 08 続報】

【F1 08 続報】最終戦ブラジルGP「30人目のチャンピオン誕生」

2008年11月2日にアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1最終(18)戦ブラジルGPは、王座決定戦にふさわしい、劇的なフィナーレとなった。

フェリッペ・マッサがポールポジションから真っ先にチェッカードフラッグを受け、チャンピオンシップの行方はポイントリーダーのルイス・ハミルトンの順位次第。残り2周、ハミルトンの前に思わぬ伏兵が立ちふさがり、タイトル獲得条件の5位の座が奪われていた……。

最終戦の最終周、最終コーナーの奇跡。ハミルトンはGPキャリア2年目にして初のタイトルを獲得し、フェルナンド・アロンソが持つ最年少チャンピオン記録を塗り替えた。

喜びをわかちあうハミルトン(左)とチームメイトのヘイキ・コバライネン。(写真=Mercedes Benz)
最終戦ブラジルGP「30人目のチャンピオン誕生」【F1 08 続報】

■1点の重み

ハミルトンに7点差をつけられていたマッサにできる最善のことは優勝のみで、あとはハミルトンに5位より下のポジションでゴールしてもらうしかなかった。つまり、ハミルトンに圧倒的なアドバンテージがあった。

マッサは、予選でポールポジションを獲得し、直前に降った雨にも惑わされず決勝スタートではその座を守り、途中血気盛んなセバスチャン・ベッテルやフェルナンド・アロンソの追撃にも屈することなく、誰よりも先に71周を終えた。誰よりも多い今年6回目の勝利は、まさにパーフェクトな1勝であった。

ゴール目前、サンパウロの空が突如泣き出した。ハミルトンはこの雨に翻弄され、これにより地元のヒーロー、マッサが世界のヒーローになるはずだった。しかし、事実は小説より奇なり。最終戦の最後の最後で、勝利の女神はハミルトンに微笑んだ。

7点のアドバンテージは1点にまで目減りしたが、その1点の重みはこの1年のすべての労力に値する。ふたりのドライバーそれぞれが、その重みをそれぞれの思いで噛みしめているはずだ。

フェリッペ・マッサ(左から2番目)は1点差でタイトルを逃したが、母国レースで最善を尽くし完勝。2位フェルナンド・アロンソ(左)、3位キミ・ライコネン(左から3番目)がポディウムにのぼった。(写真=Ferrari)
フェリッペ・マッサ(左から2番目)は1点差でタイトルを逃したが、母国レースで最善を尽くし完勝。2位フェルナンド・アロンソ(左)、3位キミ・ライコネン(左から3番目)がポディウムにのぼった。(写真=Ferrari)
マッサがゴールラインを越したとき、宿敵ハミルトンは6位。この時点でマッサがチャンピオンであったが、最終戦の最終周の最終コーナーでハミルトンが5位にポジションをあげ、雌雄は決した。
マッサがゴールラインを越したとき、宿敵ハミルトンは6位。この時点でマッサがチャンピオンであったが、最終戦の最終周の最終コーナーでハミルトンが5位にポジションをあげ、雌雄は決した。

■5位堅守という戦法

直前に降った雨によりスタートは10分遅れ、急遽全車スタンダードウェットタイヤを装着してレースは始まった。先頭集団は、1位マッサ、2位ヤルノ・トゥルーリ、3位キミ・ライコネン、4位ハミルトンと順調にコーナーを抜けた。しかし後方ではスピンや接触があり、セーフティカーが導入。この混乱でデイヴィッド・クルタードがマシンを降り、引退レースを残念なカタチで終えることとなった。

再スタート後、路面はすぐに乾きはじめる。9周目、真っ先にピットに駆け込みドライタイヤに交換したのがアロンソとセバスチャン・ベッテルだった。この早めの決断が奏功し、アロンソは5位から2位、ベッテルも6位から3位にポジションをアップした。

いっぽうでハミルトンは決断が遅れてその2周後にタイヤ交換、7位にまで順位を落とした。コース上で前方のジャンカルロ・フィジケラをオーバーテイクし、またトゥルーリがポジションダウンしたことでタイトルに必要な5位に返り咲くが、今日のハミルトンは5位堅守という戦法しか残されていなかった。

何故か? トップ3(1位マッサ、2位ベッテル、3位アロンソ)の後方では、ライコネンが4位を走行していた。チームメイトのマッサを勝たせ、自分はハミルトンのカベとなり、レースをかく乱させるというストラテジーは、フェラーリにできる数少ない戦法であった。そしてもちろん、無用なトラブルを避けるという、ハミルトン陣営の思惑とも一致していた。

直前に雨が降り、10分遅れでスタート。ポールシッターのマッサを先頭に、ヤルノ・トゥルーリ、ライコネンが1コーナーへ。(写真=Ferrari)
直前に雨が降り、10分遅れでスタート。ポールシッターのマッサを先頭に、ヤルノ・トゥルーリ、ライコネンが1コーナーへ。(写真=Ferrari)
オープニングラップ、ハミルトン(手前中央)は予選と同順位の4位。ほどなくして路面が乾き各車がドライタイヤへと交換しだすと、一時7位まで順位を落とした。その後、必要最低限の5位前後をさまよう、危ういレースを展開した。(写真=Mercedes Benz)
オープニングラップ、ハミルトン(手前中央)は予選と同順位の4位。ほどなくして路面が乾き各車がドライタイヤへと交換しだすと、一時7位まで順位を落とした。その後、必要最低限の5位前後をさまよう、危ういレースを展開した。(写真=Mercedes Benz)

■劇的な幕切れ

レース終盤、トップはかわらずマッサ。2位アロンソ、3位ライコネン、4位ハミルトンというオーダーで、このままいけばハミルトンにタイトルが渡ることになる。だが、予想外の伏兵があらわれ、レースは劇的な幕切れへと突入する。

残り7周で、またも雨が降り出した。各車がタイヤをウェットに交換するなか、トヨタのティモ・グロックは無交換に賭け4位にあがっていた。
ウェット装着のハミルトンは5位。背後からは怖いものなしのベッテルが迫り、なんと残り2周という時点でハミルトンはベッテルに抜かれ6位にポジションダウンした。

俄然盛り上がりをみせたのがマッサ陣営だった。このままいけばマッサがレースを制し、かつドライバーズチャンピオンとなる。トップでチェッカードフラッグを受けたマッサは、奇跡の逆転チャンピオンとして絶頂の気分を味わったに違いない。

だが、ハミルトンがフィニッシュラインを通過すると、6位ではなく5位にランクされていた。ドライタイヤのグロックが失速し、再び“必要最低限”のポジションが転がり込んだのだ。

トヨタのティモ・グロック(右)は、劇的な幕切れを演出したひとり。グロックはレース終盤の雨でドライタイヤを履き続け4位に順位をあげていた。その背後にはハミルトン5位、ベッテル6位。残り2周、勢いづくベッテルがハミルトンを抜き、ハミルトンの手からタイトルがこぼれ落ちそうになったファイナルラップ、濡れた路面に足をすくわれたグロックが失速、ハミルトンが5位の座を取り戻しチャンピオンとなった。(写真=Toyota)
トヨタのティモ・グロック(右)は、劇的な幕切れを演出したひとり。グロックはレース終盤の雨でドライタイヤを履き続け4位に順位をあげていた。その背後にはハミルトン5位、ベッテル6位。残り2周、勢いづくベッテルがハミルトンを抜き、ハミルトンの手からタイトルがこぼれ落ちそうになったファイナルラップ、濡れた路面に足をすくわれたグロックが失速、ハミルトンが5位の座を取り戻しチャンピオンとなった。(写真=Toyota)

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■2年目、23歳、30人目のチャンピオン

2007年に続き、チャンピオン決定戦は波乱の幕切れを迎えた。ハミルトンにとっては、1点差で逃した昨年の雪辱を果たしたことになり、またマクラーレンにとっては1999年以来となるドライバーズタイトル獲得となる。

ルーキーイヤーに9連続表彰台、優勝4回、ポールポジション6回という大きな記録を達成したハミルトンにとって、2年目の今年は真価が問われる1年だった。
開幕戦オーストラリア、モナコ、イギリス、ドイツと4勝を飾るいっぽう、カナダではピットレーンのシグナルを見落とし接触&リタイア、日本ではスタート直後に無用な混乱を招くなど、ドライバーとしての資質やスタイルについて疑問を投げかけられることもあった。

それでも、23歳という年齢と35レースというキャリア、そして事実上初めてリーディングドライバーをつとめたことを考えれば、2年目に完熟を求めることが酷であることも理解できる。ハミルトンは学びの1年で頂点にのぼりつめてしまった、ということなのだ。歴代30人目のチャンピオンのさらなる活躍に、世界が注目していることは言うまでもない。

敗れたマッサも善戦した1年だった。僚友ライコネンの予想外の不調もあったが、5人の勝者が生まれた今シーズンに6回も勝利を重ねたという事実は忘れてはならない。

2009年はレギュレーションが大きく変わり、変革期へと向かうF1。このふたりのトップドライバーが完熟を迎えるとき、どんな戦いが繰り広げられるのであろうか。

(文=bg)

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