第15戦シンガポールGP「好調アロンソの幸運と戦略」【F1 08 続報】

2008.09.29 自動車ニュース
今年初めての表彰台が優勝。フェルナンド・アロンソ、1年以上ぶりの勝利に喜びを爆発させた。(写真=Renault)
第15戦シンガポールGP「好調アロンソの幸運と戦略」【F1 08 続報】

【F1 08 続報】第15戦シンガポールGP「好調アロンソの幸運と戦略」

2008年9月28日、F1史上初のナイトレースとして開催されたシンガポールGP。人工の光の下、白熱した戦いが繰り広げられ、フェルナンド・アロンソが久々にポディウムの頂点にのぼった。その勝利の背景には、ぴたりと照準があったマシンと、他チームにはない戦略、そして幸運があった。

F1史上初のナイトレースが行われた第1回シンガポールGP。近代的大都市のなかに、煌々と輝く人工照明に照らされた5kmにおよぶ市街地コースがつくられた。(写真=Renault)
第15戦シンガポールGP「好調アロンソの幸運と戦略」【F1 08 続報】

■初ナイトレースの舞台

小国シンガポールの海岸沿いにつくられた、バレンシアに次ぐ今年2番目の新顔、マリーナ・ベイ。高層ビルや都市高速道路に溶け込んだ全長5.067kmのストリートサーキットには、23ものコーナーが配置され、高温多湿の気候、そして荒れた路面と相まって、ドライバーにはきわめてタフなサーキットとして受け止められたようだ。

このコースの最大のポイントは、レイアウトというよりもコースのすみずみまで照らす人工照明。ナイトレース自体はアメリカなどで既に実績があるが、60年近い歴史を誇るF1では初めてのこと。レースは、一部縁石などに問題があったものの大成功を収め、新しいGPのカタチとしてファンや関係者から多くの支持を受けた。

その成功を支えたのが、セーフティカーがもたらしたスリリングなレース展開、そしてアロンソ会心の勝利だったことはいうまでもない。

スタートでトップに立ったポールシッターのフェリッペ・マッサ(写真手前)。お得意の独走優勝を目指していた矢先、ピットで失態を演じ、その後はスピンやコースオフを繰り返しながら13位完走。タイトルを争う上で極めて重要な1戦を無得点で終えた。(写真=Ferrari)
第15戦シンガポールGP「好調アロンソの幸運と戦略」【F1 08 続報】

■マッサお得意の独走劇?

この週末、アロンソ/ルノーが輝いていたのは何も照明のせいだけではない。金、土曜日の3回のフリー走行のうち2回でトップタイムをマーク。特に最後のセッションでは後続に0.6秒もの差をつけ、チームメイトのネルソン・ピケJrも4位に入り、チームは上り調子で予選にのぞんだ。
しかし、好事魔多し。予選Q2で燃料供給に問題がおき、アロンソのマシンはコース脇にストップ。アロンソ15位、ピケ16位と下位に沈んでしまった。

レースデイは晴天の、夜。ポールシッターのフェリッペ・マッサを先頭に、予選2位のルイス・ハミルトンが追う展開でレースはスタートした。マッサは、ポールから独走というお得意のパターンに持ち込むべく、ギャップを徐々に拡大。3位走行のキミ・ライコネンは、序盤こそ苦戦したものの突如としてペースをあげはじめ、ハミルトンの背中を視線にとらえていた。

フェラーリのクルーが担いでいるのは、給油ホース。マッサはホースをつけた状態で見切り発車し、そのままホースを引きちぎりピットレーンの最後まで走行。セーフティカーラン中ながらポジションを最後尾まで落とし、かつこの行為でペナルティも受けた。(写真=Ferrari)
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ルイス・ハミルトンは、序盤フロントローから2位を走行。セーフティカーの混乱で一時順位を落としたものの、3位まで挽回。しかしそれ以上はあえて望まずそのままゴール。ライバルのマッサらが無得点で終わったのを尻目に6点を追加し、ポイントリーダとしての地位を確かなものにした。(写真=Mercedes Benz)
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■女神はチームメイト

アロンソは、15番グリッドから一気に12位までジャンプアップ、そして11位走行中の12周目に真っ先にピットへと駆け込んだ。
ルノーは、グリッド後方からのスタートであること、そしてセーフティカー(SC)導入の可能があることを考慮し3ストップ作戦をとり、最初のスティントを軽いマシンと、ハードに比べやや劣るソフトタイヤで戦っていた。このピットインではやくも最下位へと転落したのだが、ここで幸運が元チャンピオンのもとに訪れることになる。

皮肉にも、その幸運の女神とは、15周目、チームメイトのピケJrのクラッシュだった。重めのマシンをコントロールしきれず、ピケJrはターン17でスピン、ウォールに激しくヒット。この日1回目のSCが出動した。

SC先導で隊列が整うまで、ピット入り口はクローズ状態となる。このタイミングで給油を予定していたマシンはガス欠か、ペナルティ覚悟でピットインかを迫られる。
後者を選択したのがニコ・ロズベルグとロバート・クビサ。2人はのちに10秒のストップ/ゴーペナルティを受けるのだが、ロズベルグはレース再開後、ペナルティ発令までトップとして必死にリードタイムを稼ぎ、結果2位表彰台を獲得。いっぽうクビサはポイント圏外でゴールと明暗が分かれた。

SC後の順位は、ペナルティ前のロズベルグを先頭に、2位に1ストッパーのヤルノ・トゥルーリ、3位に同じくジャンカルロ・フィジケラ、4位ペナルティ前のクビサ、そして5位には既に最初のピット作業を終えているアロンソ。アロンソはこの時点で実質3位と大きく順位を上げることに成功した。

セーフティカー出動でピットクローズ中に給油を敢行。そのペナルティを受けポジションを落としたニコ・ロズベルグ(右)だが、ペナルティ発令が遅れたことと、その間トップとしてマージンを築けたことが幸いし、最高位2位でゴール。同じウィリアムズの中嶋一貴は今年5回目の入賞、8位でゴールした。(写真=Williams)
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■フェラーリの失態

では、序盤のトップ集団はどうなったのか。
1位マッサは、SC中ピットがオープンになったと同時に給油とタイヤ交換を行ったのだが、給油ホースがついたままマシンを発進させるという失態を演じ最下位へ。ハミルトンは8位にとどまり、マッサの後ろでピット作業を待っていたライコネンは15位へ後退した。

その後、マッサにはピットでの危険行為にドライブスルーペナルティが科された。そして後方集団として周回中の50周目にスピンし、その煽りでエイドリアン・スーティルがクラッシュ。2度目のセーフティカーのきっかけをつくり、結果無得点の13位でレースを終えた。

ライコネンは終盤5位まで挽回するが、残り4周、4位ティモ・グロックを追いかけている最中にマシンをウォールにヒットさせ、4戦連続のノーポイントレースを記録した。

フェラーリは、勝てるレースを台無しにしたばかりか、チャンピオンシップで致命的ともいえる間違いをおかしてしまった。

2007年チャンピオン、キミ・ライコネンは4戦連続のノーポイント。残り3戦で全勝しても30点しか追加できないなか、トップのハミルトンとの差は27点。レース後、今年の敗北を認めた。(写真=Ferrari)
第15戦シンガポールGP「好調アロンソの幸運と戦略」【F1 08 続報】
トヨタ勢は、1ストッパーのヤルノ・トゥルーリがセーフティカーの混乱で一時トップへ。しかし5位走行中にハイドロリックトラブルにより戦列を去った。ティモ・グロック(写真)は、予選7位から4位入賞を果たし、激烈なコンストラクターズ4位争いに貴重なポイントをもたらした。(写真=Toyota)
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■残り3戦、ハミルトン優位

アロンソはあとのスティントに、よりベターなハードタイヤを残していた。レースのほぼ折り返し地点、34周目にトップに立つと後続をみるみる引き離し、2度目のSCでマージンを帳消しにされても、再スタートを見事に決め、今年初の表彰台を優勝というかたちで飾った。

元チャンピオンにとって昨年のイタリアGP以来、ルノーにとっては2006年の日本GP以来となる勝利。アロンソはタイトルを争う立場にいないが、コンストラクターズポイントでトヨタと4位の座を争っているルノーにとってはまたとない10点獲得だ。

ドライバーズタイトル争いは、ポイントリーダーのハミルトンが今回手堅く3位入賞を果たし、ランキング2位のマッサが無得点に終わったことで、レース前1点だけだった両者の差は7点にまで拡大した。
残り3戦、仮にマッサが全勝しても、ハミルトンが2位に入り続ければ、ハミルトンのチャンピオンが決定する。

いっぽうコンストラクターズタイトル争いは、もたつくフェラーリを尻目に、マクラーレンが1点差ながら首位奪取に成功した。

次戦は日本GP。2年目の富士スピードウェイで、10月12日に決勝が行われる。

(文=bg)

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