第14戦イタリアGP「小さなチームの大きな功績」【F1 08 続報】

2008.09.15 自動車ニュース
セバスチャン・ベッテルが初ポールポジションから初優勝。いずれも最年少記録を塗り替える見事なポール・トゥ・ウィンだった。(写真=BMW)
第14戦イタリアGP「小さなチームの大きな功績」【F1 08 続報】

【F1 08 続報】第14戦イタリアGP「小さなチームの大きな功績」

2008年9月14日にモンツァ・サーキットで行われたF1第14戦イタリアGP。
イタリアといえばフェラーリ、ドイツといえばシューマッハー、という等式を覆したのが、長年テールエンダーとして参戦してきたイタリアンチーム、元ミナルディ、現スクーデリア・トロロッソと、“赤い闘牛”を駆る若手ドイツ人、セバスチャン・ベッテルだった。

ロバート・クビサは、11番グリッドから1ストップ作戦で3位入賞。ウェットからインターミディエイトタイヤへの交換時期と、ピットストップのタイミングがうまく合致した。(写真=BMW)
ロバート・クビサは、11番グリッドから1ストップ作戦で3位入賞。ウェットからインターミディエイトタイヤへの交換時期と、ピットストップのタイミングがうまく合致した。(写真=BMW)
キミ・ライコネンの不調は続く。予選をうまく仕上げることができず、なんと14番グリッドと中段からスタート。同じく予選で失敗したルイス・ハミルトンがレース中ポジションを上げていくなか、タイヤを適温までもっていくことができず、ポイント圏外の9位でゴール。チームメイトのフェリッペ・マッサは後続に引っかかりハミルトンのひとつ前、6位完走。(写真=Ferrari)
キミ・ライコネンの不調は続く。予選をうまく仕上げることができず、なんと14番グリッドと中段からスタート。同じく予選で失敗したルイス・ハミルトンがレース中ポジションを上げていくなか、タイヤを適温までもっていくことができず、ポイント圏外の9位でゴール。チームメイトのフェリッペ・マッサは後続に引っかかりハミルトンのひとつ前、6位完走。(写真=Ferrari)
予選ワースト記録となる15番グリッドからスタートしたハミルトン。ウェット路面を味方に2位までポジションを上げ、優勝も夢ではなかったが、最初で最後のピットストップのタイミングと、路面の乾き具合がうまくシンクロせず、予定外の2度目のピットストップを敢行。7位でフィニッシュし2点を獲得、何とかポイントリーダーの座を守った。(写真=Mercedes Benz)
予選ワースト記録となる15番グリッドからスタートしたハミルトン。ウェット路面を味方に2位までポジションを上げ、優勝も夢ではなかったが、最初で最後のピットストップのタイミングと、路面の乾き具合がうまくシンクロせず、予定外の2度目のピットストップを敢行。7位でフィニッシュし2点を獲得、何とかポイントリーダーの座を守った。(写真=Mercedes Benz)

■ベッテル&トロロッソの実力勝ち

自動車メーカーによるワークスチームが数百人規模の巨大ファクトリーを持つのに対し、プライベートチーム、トロロッソの所帯はせいぜい160人程度。国際的飲料メーカー、レッドブルの資金力があるとはいえ、もっとも小さなチームのひとつであることに変わりはない。

雨による荒れ模様のレースでダークホースが優勝することはよくあることだが、この小さなチームと若いドイツ人ドライバーの初優勝は、よくあるトップランナー脱落による“タナボタ優勝”ではない。トロロッソとベッテルは、予選、決勝を通じ実力を出し切り、そして勝ったのだ。

土曜の予選はしのつく雨に見舞われ、グリッドはいつもと違う様相を呈した。ベッテルが22戦目にして初ポールポジションを獲得。いっぽうチャンピオンシップを争うドライバーといえば、フェリッペ・マッサが最上位の6位、あとはQ2どまりで、ロバート・クビサ11位、キミ・ライコネン14位、ルイス・ハミルトン15位と中段からのスタートとなった。

決勝日も雨。フォーメーションラップは行われず、2周のセーフティカーランの後にスタートが切られた。

良好な視界を味方に、ベッテルは序盤から2位ヘイキ・コバライネンを突き放し、10秒以上のマージンを築いてしまう。コバライネンはといえば、第1スティントで4周多く周回できたものの、そのアドバンテージを活かすことができず、ともすれば勝てたレースをフイにしてしまった。

その後方では、15番グリッドのハミルトンが、まさに水を得た魚のように順位を上げてきていた。昨年の日本GP、あるいは今年のイギリスGPで見られたような雨の激走。1ストップ作戦をとり、24周目には2位までのぼりつめ、このまま路面が濡れたままであったら、ハミルトンの劇的な優勝も夢ではなかった。

しかし、ゴールが近づくにつれて路面が乾きだし、ウェットタイヤから浅溝のインターミディエイトへ交換するマシンが出始めた。唯一のピット作業で既にウェットを選んでいたハミルトンは、状況変化に対応するため予定外のピットイン、インターミディエイトにスイッチ。これで7位まで後退し、結局そのポジションでレースを終えた。

1ストップを成功させたのがクビサ。ピットインのタイミングとインターミディエイトへの交換時期が合致し、11番グリッドから3位表彰台を手に入れ、厳しいながらもタイトル獲得に望みをつなげた。

クビサと同様に1ストップ作戦をとったルノーのフェルナンド・アロンソは4位でゴール。(写真=Renault)
クビサと同様に1ストップ作戦をとったルノーのフェルナンド・アロンソは4位でゴール。(写真=Renault)
クビサやアロンソが1ストップで成功するいっぽう、ハミルトンなどタイミングを逃したために順位を落としたドライバーも多かった。トヨタの2人、ヤルノ・トゥルーリとティモ・グロックも同様で、コースが乾きインターミディエイトタイヤへ交換せねばならず、グロック11位、トゥルーリ13位と沈んでしまった。(写真=Toyota)
クビサやアロンソが1ストップで成功するいっぽう、ハミルトンなどタイミングを逃したために順位を落としたドライバーも多かった。トヨタの2人、ヤルノ・トゥルーリとティモ・グロックも同様で、コースが乾きインターミディエイトタイヤへ交換せねばならず、グロック11位、トゥルーリ13位と沈んでしまった。(写真=Toyota)

■レッドブルの“ねじれ”

レース中、トップのベッテルを脅かすドライバーはいなかったといっていい。並み居る強豪を背後に従え、53周のレース中49周をリードするというほとんど独走状態で、真っ先にチェッカードフラッグをくぐりぬけた。

レッドブルのオーナー、ディートリッヒ・マテシッツと、共同チームオーナーの元ドライバー、ゲルハルト・ベルガー、そしてベッテルを含めたチームスタッフと、まわりにいた多くのライバルたちがこの勝利をたたえ、拍手を惜しまなかった。

1987年7月3日生まれ、21歳と73日のドイツ人ベッテル。昨年記録した最年少ポイントスコアラーというレコードに、それまでフェルナンド・アロンソが保持していた最年少ポールシッター&ウィナー記録を追加し、ドライバーズランキングでも9位に躍り出た。

まさに大躍進のベッテル&トロロッソだが、ひとつ奇妙な“ねじれ”が生じている。2009年、ベッテルはレッドブル資本の2チームのなかで昇進、つまりトロロッソから本家レッドブルへシートを移すことになっている。
チームメイトとなるのはベテランのマーク・ウェバー。つまりベッテルは先輩格のウェバーより先に、チームとしても本家より先に勝利を手にしてしまったのだ。今年のコンストラクターズチャンピオンシップでも、レッドブルを抜きトロロッソが6位につけている。

ベッテルのこの勝利は、小さなチームにとって、そしてGPサーカス全体にとって、とても大きな功績なのだ。

■1点差の攻防

ここでヨーロッパラウンドは幕をおろし、残る4戦はすべてフライアウェイとなる。78点のハミルトンはポイントリーダーの座を守ったものの、2位マッサには1点差につめよられた。3位クビサは64点で首位から14点差、そして2010年までフェラーリとの契約を延長したライコネンは57点で4位。ハミルトン対マッサの一騎打ちがリアリティをおびてきた。

コンストラクターズタイトル争いは、1位フェラーリの134点に対し、2位マクラーレンが129点、3位BMWザウバーは117点というオーダー。こちらは2人のドライバーがいかにコンスタントにポイントを稼げるかにより勝負が左右される。つまりフェラーリはライコネン、マクラーレンはコバライネンという、2人のフィンランド人の貢献度が試される。

次は初ナイトレースとなるシンガポールGP。決勝は9月28日だ。

(文=bg)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。