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【スペック】全長×全幅×全高=4810×1935×1780mm/ホイールベース=2855mm/車重=2210kg/駆動方式=4WD/4.4リッターV8DOHC32バルブ(315ps/5850rpm、44.9kgm/3900rpm)/価格=885.0万円(テスト車=926.0万円/リアシートエンターテイメントシステム=32.0万円/冷蔵庫=9.0万円)(K)

ボルボ XC90 V8 TE(4WD/6AT)【試乗記】

帰り道に乗りたくなるタイプ 2008.05.14 試乗記 ボルボXC90 V8 TE(4WD/6AT)
……926.0万円

クルマにはそれぞれ性格がある。SUVはとかく万能な使い勝手が目指される傾向にあるが、それでも乗り味は千差万別。ボルボXC90は、500km程度の移動じゃ疲れない。これも味だろう。

“行き仕様”のクルマと“帰り仕様”のクルマ

なにか緊急の用事で、はるか数百キロ離れたところに一刻も早く行かなければならないとする。たとえば東京から大阪まで。クルマは自由に選んでいい。もしそのような状況になったら、あなたならどの車種を選ぶだろうか。想像するだけだから値段のことは考えなくていい。制限速度もこの際無視。さて、どうするか。

パワフルでリミッターがないポルシェ911か。それとも意のままに操る感覚が味わえるBMWか。選択肢は色々あるが、多くの人はスポーツタイプのクルマを選ぶのではないだろうか。

では次に、無事に任務を終わらせた後、自宅への帰りのアシとなると、どうだろう。もう急ぐ必要はないけれど、もはや体が疲れ切っている。そんな状況ではどうか。高速移動で疲れにくいと定評のあるメルセデス・ベンツか。あるいは乗り心地のよさからプジョーあたりを選ぶか。

往路のようなケースは滅多にないが、帰路に似たケースなら十分にありえる。クルマを自由に選ぶことはできないとしても、たとえば旅行帰りに友人のクルマを運転することになったとか、レンタカーでの旅とか、マイカー以外のクルマで長距離を移動するケースはなにかとあるものだ。

そういう状況で、クルマの諸性能に肌で触れ、いいクルマだと感じたり、そのクルマが欲しくなったり、あるいはもうそれで長距離を走るのはコリゴリだとか感じることがあると思う。

コンフォート・ユーティリティ・ビークル

今回のボルボの長距離試乗は、まさにそんな、帰路のようなシチュエーションだった。奈良まできた取材の帰り道、借りていた広報車を夜9時までに東京・神谷町のボルボ・カーズ・ジャパンに返却しなければならない。もちろんこれは現実の話。ちゃんと予定を立てて動くつもりだったのだけれど、土地勘がない場所での取材ということもあり撮影に手こずった。奈良を出た頃には午後3時をすでにまわっていた。このぶんだと休憩もなしに東京まで一気に戻らなくてはならない。帰りのマシンは、「ボルボXC90 V8 TE」だ。

「V8 TE AWD」は、「3.2 SE AWD」「3.2 SPORT」「V8 TE」と3グレードあるうちの、シリーズ頂点に位置するモデル。搭載エンジンは4.4リッターV8で、最高出力315ps、最大トルク44.9kgmを発生する。

幸い、取材車がV8を積んだ一番パワフルなモデルであることが高速移動をだいぶ楽にしてくれたが、それ以外のさまざまな要素もひっくるめて、XC90は長距離で実に楽チンな乗り物だ。今回のような状況の場合、好きにクルマを選べと言われたら、自分なら高級セダンかスポーツタイプを選んでいただろう。少なくとも実際にその安楽さを肌で感じるまでは、SUVを候補に入れることはなかったと思う。

ところが、今回ボルボXC90で片道500km以上を一気に走り切り、このクルマの見晴らしのよさが、渋滞時や退屈な巡航時の運転負荷を和らげてくれた。その事実を認めないわけにはいかなくなった。
奈良方面から名古屋を通過するまでの名阪で大渋滞にハマってしまったのだが、閉塞感を感じなかったのは、まわりのクルマより頭ひとつ飛び出たXC90ならでは。また、静岡県下の単調な直線を延々巡航するようなシーンで、ガードレールの先の景色がよく見えるのも心地いい。これで日中天気のいい日にドライブでもすれば、きっと楽しいに違いない。SUVやミニバンなど車高が高いクルマは一度乗るともう元に戻れないという。その気持ちがわかる気がした。
だがもちろん、XC90が高速移動にいいと感じたのは、背が高いという、たったそれだけの理由ではない。

ヤマハ製の4.4リッターV8エンジン。高回転まで回すとスポーツカーのようなサウンドを奏でる。ハイペースな走りも得意なエンジンである。
ヤマハ製の4.4リッターV8エンジン。高回転まで回すとスポーツカーのようなサウンドを奏でる。ハイペースな走りも得意なエンジンである。 拡大
XC90 V8 TEは、導入当初は左ハンドル仕様のみだったが、今では右ハンドル仕様も選択可能。
XC90 V8 TEは、導入当初は左ハンドル仕様のみだったが、今では右ハンドル仕様も選択可能。 拡大
アップライトなシートポジションと、ルーミーな車室空間を持つXC90。見晴らしの良さはピカイチ。
アップライトなシートポジションと、ルーミーな車室空間を持つXC90。見晴らしの良さはピカイチ。 拡大

ボルボならではの長距離特性

たっぷりしたシート、しなやかに動くサスペンション、高速巡航に適したハイギアードなギア比。これらも高速走行でドライバーを疲れさせないボルボならではの特徴だ。

サスペンションは、多くの欧州SUVのような引き締まった味付けではない。もしボルボが他のSUVと同じように、スポーツセダンとSUVの乗り味を併せ持つクロスオーバー的なキャラクターを狙っていたなら、きっと別物のクルマに仕上がっていただろう。この心地よいフィーリングは消えてしまったはずだ。だがボルボが狙ったのは、カッ飛び系の味付けではなく、快適に長距離をこなせるクルマ。ここでいう“行き仕様”のクルマではなく、“帰り仕様”のクルマに分類できると思う。

ギア比(トランスミッションとデフの減速比)は、高速道路を低回転でシュルシュルと流すような運転でその効果を発揮する。これは燃費に優れるセッティングともいえる。単にハイギアードなだけでは加速が穏やかという印象で終わってしまうが、6段の多段ATが与えられたXC90はちょっと違う。4段ATだったころのボルボは、アクセルを多めに踏み込んでもあまり頻繁にギアチェンジせず、そのままのギアで粘りながら、トルクで車速を引き上げていくようなキャラクターだったと記憶している。でも最新のボルボは、アクセルをグッと踏み込むとすぐさまギアをひとつ落とし、加速態勢に入る。もう少し強く踏むとギアをふたつ落して臨戦態勢に入る。さらに強く踏み込むとギアが3つ一気に落ちて爆走態勢に入る。キックダウンが頻繁に起こり、踏み具合によって表情をサっと変える。

でも本音をいえば、アクセルを軽く踏んだだけで意図せずシフトダウンが起こるのは、落ち着かないと感じるときもあった。

最初の頃は、オートマチックのあまりの過敏さに「そんなにアクセクするなよ〜」と思いながら、シフトレバーの頭をペチペチ叩いていたのだが、ふとした時にセレクターをマニュアルモードに切り替えて手動でトップギアを選んでみた。するとそこでギアがホールドされ、キックダウンを止められることに気づいた。本来キックダウンスイッチが作動するところまで踏み込んでも、XC90はそのギアで持ちこたえるのだ。
多くのクルマはマニュアルモードで走行中も、強く踏み込めばキックダウンを行う設定になっている。でも大排気量ボルボは違った。ズッシリと構えているかのような穏やかな一面を捨てていない。これなら、アメ車さながらにゆったり走りたい気分のときや、同乗者の睡眠を妨げないように走るにも都合がいい。
6段ATを得たボルボは、ゆったりも走れるし俊敏にもいけるクルマへと進化していたのだ。

車線変更の不安が解消

もうひとつ。XC90 V8 TEの、高速移動でドライバーの疲労を軽減する装備に、「BLIS」という先進装備がある。“安全なクルマ”を標榜するボルボが、他に先駆けて積極的に採り入れたこの装備は、斜め後ろに併走するクルマをレーダーで捉え、その存在をドライバーに伝えてくれるというもの。

斜め後ろに併走車があると、ドアミラーの付け根のランプが赤く光る。ランプが付いていない時は車線変更「OK」で、付いている時は「NG」という具合に、即座に安全が確認できるため、コレが付いているだけで車線変更時の恐怖感はなくなる。特に長距離を走ると、そのありがたさが身にしみるはずだ。

奈良から東京まで、ドライバー交代をせず、ほぼ休憩なしで走り切った。その努力もむなしく、時計の針は24時を回ってしまい、関係者の方にはずいぶん迷惑をかけてしまった。けれども、そんな風にプレッシャーを感じながら長い時間走り続けたにもかかわらず、疲労は思いのほか少なかった。その気になれば、ここからさらに仙台あたりまで走れそうなぐらいの気力が残っていた。

(文=webCG曽宮岳大/写真=亀山ののこ(K)、webCG)

斜め後方に併走車があるとドアミラーのランプが赤く光り、警告する。
斜め後方に併走車があるとドアミラーのランプが赤く光り、警告する。 拡大
レーダーはミラーの下方に内蔵される。(K)
レーダーはミラーの下方に内蔵される。(K) 拡大

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