F1開幕直前プレビュー(その3)「苦境からの脱出!日本系チーム」【F1 08】

2008.03.13 自動車ニュース

F1開幕直前プレビュー(その3)「苦境からの脱出!日本系チーム」【F1 08】

【F1 08】F1開幕直前プレビュー(その3)「苦境からの脱出!日本系チーム」

3月16日のオーストラリアGPで開幕する2008年のF1。目前に迫った新シーズンの注目ポイントをまとめてみた。
2007年に苦戦をしいられてきた日本系チームにとっては、今年も様々な意味で試練の年となりそうだ。

トヨタは「TF108」で新シーズンを戦う。昨年の失敗から、開発コンセプトを大幅に変更。開発凍結中のエンジンには定評があるのだが……。(写真=Toyota)
トヨタは「TF108」で新シーズンを戦う。昨年の失敗から、開発コンセプトを大幅に変更。開発凍結中のエンジンには定評があるのだが……。(写真=Toyota)
ベテランのヤルノ・トゥルーリ(左)と若手ティモ・グロック(右)がステアリングを握る。(写真=Toyota)
ベテランのヤルノ・トゥルーリ(左)と若手ティモ・グロック(右)がステアリングを握る。(写真=Toyota)

■トヨタ:足りないものは?

トヨタの2007年が落胆のうちに終わったことは、言うまでもない。ブレーキング、そしてターンでの安定性のなさを露呈した「TF107」では、予選・決勝とも最上位6位がやっと。ヤルノ・トゥルーリの一発の速さをもって予選でトップ10内につけても、決勝ではズルズルと後退、ポイント圏外でフィニッシュ、というレースが多くみられた。13点を獲得しランキング6位という戦績に、日本の本社役員たちがいい顔をするはずがない。

2機の風洞施設を使って、空力面で大幅な変更を行った今年の「TF108」には改善がみられ、テスト後半にはある程度のスピードを証明できた。
しかし、2006年にテクニカルディレクターのマイク・ガスコインを解雇して以来、トヨタがポディウムから遠ざかっていることを考えると、必要とされているのはチームの運営・統率能力、あるいは明確なビジョンなのかもしれない。同郷のライバルであるホンダは同じく苦戦中ながら、ロス・ブラウンというグルをつれてきて再構築を図っている。

ドライバーは、ラルフ・シューマッハーが抜け、新たに2007年GP2チャンピオンのティモ・グロックが加わった。これでベテランのトゥルーリが名実ともにチームリーダーとなり、若い力との相乗効果が望めるようになった。
2005年以来3年続いたラルフ&ヤルノのコンビについては、双方が同時に波に乗る、ということが起きない不思議な組み合わせだった。ふたりのドライバーがともに同レベルで競える状況になれば、ポイントも効率よく稼げるようになるのだが。

ホンダ「RA108」。昨年(の唯一!?)の話題、アースカラーはややおとなしめに。(写真=Honda)
ホンダ「RA108」。昨年(の唯一!?)の話題、アースカラーはややおとなしめに。(写真=Honda)
ルーベンス・バリケロ(右)と話すロス・ブラウン。名将を迎え入れたことは英断だったが、チーム建て直しには時間がかかるだろう。(写真=Honda)
ルーベンス・バリケロ(右)と話すロス・ブラウン。名将を迎え入れたことは英断だったが、チーム建て直しには時間がかかるだろう。(写真=Honda)

■ホンダ:“ブラウン効果”は2009年以降?

下から数えて3番目、合計ポイント6点というのが、ホンダの昨シーズンの戦績。その下には、スーパーアグリとスパイカー(現フォース・インディア)、年間予算に雲泥の差があるテールエンダーしかいないという惨憺たる結果だった。

そこでホンダは、ミハエル・シューマッハーとともにフェラーリ黄金期を築いたロス・ブラウンを招聘、チームの代表ポストを任せることにした。技術的な知識はもちろん、戦術やオペレーションまで、高度なレベルでオールマイティにこなせるブラウンのような人物は、F1界においても稀有な存在。常勝チーム請負人獲得にホンダのやる気がうかがえる。

メカニカルグリップの不足による不安定さが顕著だった昨年型「RA107」は、ニューマシン「RA108」にとって代わる。だがブラウンの着任は昨年暮れ近くだったため、事実上彼の息がかかっていないマシンであることは間違いない。実際、テストでも空力バランスに腐心していたばかりか、今年から導入される標準ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)を使いこなせずにいることも報告されている。
名将ブラウンの効果が発揮されるのは、レギュレーションが大幅に変わりそうな2009年以降か?

ステアリングを握るのは、変わらずジェンソン・バトンとルーベンス・バリケロ。テールエンダーになるにはもったいないポテンシャルの持ち主だ。なおバリケロは、鉄人リカルド・パトレーゼの持つ最多出走記録「256戦」を今年更新する見込みである。

開発・テストをストップしなければならないほど、スーパーアグリの懐は極寒状態だった。(写真=Honda)
開発・テストをストップしなければならないほど、スーパーアグリの懐は極寒状態だった。(写真=Honda)
エースの佐藤琢磨。昨年のカナダGP、マクラーレンのフェルナンド・アロンソをぶち抜いたシーンを、今年再び、というのは酷な話かもしれない。(写真=Honda)
エースの佐藤琢磨。昨年のカナダGP、マクラーレンのフェルナンド・アロンソをぶち抜いたシーンを、今年再び、というのは酷な話かもしれない。(写真=Honda)

■スーパーアグリ:深刻な資金難からの脱出

ある意味、冬の間もっとも注目を集めたチームのひとつが、スーパーアグリだろう。ホンダの型落ちシャシーをリファインしてのぞんだ昨シーズン、時として本家ワークスチームを凌駕する速さで、2年目にして初得点を達成するなど活躍したのだが、スポンサーフィーの不払いが相次いだことで深刻な資金難に陥ってしまった。

各チームがオフシーズン中にニューマシンの開発とテストをこなすなか、いずれもままならない状態が続いた。鈴木亜久里チーム代表は、“マザーシップ”ホンダをはじめ投資家をあたり、チーム存続に向けて奔走した。
結果、3月10日に、自動車関連企業マグナ・グループがチームの取得を行うことに合意したことが発表され、とりあえず開幕戦オーストラリアGPには、昨年のホンダ「RA107」ベースのマシン「SA08」がグリッドに並ぶことが決まった。

その発表と同時に、正式なドライバーラインナップも明らかにされ、佐藤琢磨とアンソニー・デイヴィッドソンの残留が確定した。状況をみれば相当な困難が予想されるが、わずか数か月でゼロからF1チームをつくりあげた奇跡的な組織である。ファンはその底力に期待したい。

(文=bg)

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