第349回:新型「ダイハツ・タント」試乗
 もしやコレ、禁断の果実なのでは……!?

2008.01.23 エッセイ

第349回:新型「ダイハツ・タント」試乗 もしやコレ、禁断の果実なのでは……!?

室内長は「レクサスLS」よりも長い!

見た瞬間、俺は思ってしまった。「ダイハツさん、とうとうやってしまいましたね、ついにイケナイクルマを作ってしまいましたね……」と。だってオキテ破りと言いたくなるほどメチャ広くって快適で安すぎるんだもん、2代目「ダイハツ・タント」!

このクルマは2007年末に発表されたばかりの2代目軽スペースワゴンで、先日、千葉県木更津で試乗会が行われたんだけど、あまりのデキのよさにビックリ。今後しばらく、軽はもちろんナンバー付きのコンパクトカーも含めて、台風の目になるかもしれないと思っちゃいました。

というのもまずは異様なのだその広さが。

そもそも初代タントからして全長3.4m、全幅1.48mという軽自動車枠内では限界と言えるほどの室内スペースを持ち、室内長にいたっては実に2m! これだけでも当時、「トヨタ・クラウン」を凌ぐといわれたほどなのに、今回の2代目は室内長2m16cm! なんと「レクサスGS」を16cmも超え、「LS」を1cmも上まわるという異様な数値なのだ。

事実、前席に普通に人が座った状態で、身長176cmの俺が後席から思いっきり足を伸ばしても、背もたれにすら届かない。これはもはや高級リムジン並みと言ってもいい。もちろん快適性、静粛性はLSの比じゃないんだけどさ。
とはいえ昔の軽商用車と比べたら雲泥の差で、ベースとなった現行「ムーヴ」のプラットフォームがよくできてるから、乗り心地は文句なし。ボディ剛性も高く、オマケにホイールベースがほぼ2.5mと長いから、デコボコ路面での車体のブレも少ない。「まさにこれで十分」と言い切れる。

なまけもの御用達超スペースワゴン!?

エンジンは現行ムーヴが登場した時に新設計された超軽量の660cc直3で、最高出力は58ps。たいして速くはないんだけど、効率のよいCVTと相まって、不満はない。それどころか64psの660ccターボが載った「タント・カスタム」ならば、逆に速いと思えるレベルだ。

唯一、軽自動車だってことを感じさせるのはキャビンが広いわりにサイドウィンドウが迫ってることと、ステアリングフィールが若干甘めなことぐらいで、車高が1.75mと高いわりにロールは少ないし、ステアリングフィールも足まわりが締まったタント・カスタムを選べば全然問題なし!
「まさしく軽!」という記号性を抜きにすれば、現在世界最高レベルの効率を持つ移動手段と思うのだ。

逆に、とある筋によれば「ユーザーさんの中には、室内が広すぎて逆に荷物を散らかしちゃう人も多いみたいです(笑)」とのこと。いわばコタツのある居間状態で、適度な空きスペースに雑多に荷物を置けちゃうから、“ずぼら”を増長するというのだ。うーむ、わかるような気がしますな。“なまけもの御用達超スペースワゴン”という側面。

さらなる驚きは今回のウリでもある左側のリアスライドドア、そう「ミラクルオープンドア」だ。乗り降りで邪魔っけになるBピラーを廃した構造で、開口部の横幅は実に149cm! ついでに高さも十分あり、これまたヤバいくらいの広さです。

ってなわけでもはや“メチャクチャデカい軽”というよりも、“価値観逆転”あるいは“思考停止”を余儀なくさせる超スペースワゴン軽自動車。最近じゃ、一部役所関係からも「ちょっとやり過ぎでは?」の声が出てるとか出てないとか。

そんな感じで、かなりの問題児なんですな、新型タント。クルマ好きなら一度は見にいったほうがいいですよ。

(文と写真=小沢コージ)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』