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【スペック】全長×全幅×全高=4915×1855×1435mm/ホイールベース=2845mm/車重=1790kg/駆動方式=4WD/2.8リッターV6DOHC24バルブ(210ps/5500〜6800rpm、28.6kgm/3000〜5000rpm)/価格=628.0万円(テスト車=763.0万円)

アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】

アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT) 2007.11.01 試乗記 ……763.0万円
総合評価……★★★★

アウディのミドルサルーン「A6」に新型の2.8リッターV6直噴エンジンモデルが追加された。新たにバルブコントロール技術を搭載した新エンジンモデルの走りを試す。

アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】

アウディのなせる業

従来の日本での「A6」のラインナップは「2.4」「3.2FSIクワトロ」「4.2FSIクワトロ」の3モデル。そこにさらに「2.8FSIクワトロ」が加わると、ちょっと煩雑すぎるのではという気がする。
しかし、それにはちゃんと理由がある。これまで「A4クワトロ」のオーナーがA6にステップアップしようとしても、2.4リッターは前輪駆動ということで対象にならず、かと言って3.2FSIクワトロでは価格差がありすぎ、結局は断念して他のブランドに流れてしまうということが多々あったのだという。
前輪駆動のアウディがダメなわけではないが、クワトロを味わってしまうと前輪駆動には戻れないというのは理解できる話だ。

2.8FSIクワトロは、まさにそういうユーザーの受け皿となることが期待されている。好調とは言い難いA6の販売を加速させるには、まずアウディの良さを知る人にステップアップしてもらおうというわけである。

しかしこのA6 2.8FSIクワトロ、話をそれだけで済ませてしまうのは惜しいクルマだ。そのエンジンは単なる3.2リッターの縮小版ではなく、新機軸アウディバルブリフトシステムを搭載し、各部のフリクションロスの低減を図るなど燃費向上を大きく意識したもの。
カタログ燃費は驚くほどのものではないが、特に高速道路を中心に走らせた時の経済性の高さは相当なものだ。

しかも、緻密で上質、そしてスポーティな回転フィーリングも素晴らしく気持ちがよい。画期的な新技術を使っているわけではないが、確固たる設計ポリシーや高い生産技術がなければ実現できないこの仕上がりは、まさに「技術による先進」を謳うアウディらしさを表現するものと言えるはずである。

初期のモデルでは難のあった操縦性や乗り心地の面でも進化の度合いは顕著な2.8FSIクワトロ。少なくとも現在A6の購入を考えている人にとってベストな選択となり得る1台であることは断言する。

アウディジャパンには、最初に記したような価格の話だけでなく、ぜひその本質的な部分の奥深い魅力こそを世間に強くアピールしてもらいたいと切に願う。そうしてブランド力を高めていってこそ、販売向上も望めるに違いない。


アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
1997年にデビュー、日本では同年9月に販売がスタートした、アウディのミドルサルーン。2004年7月にフルモデルチェンジされ、日本でのラインナップは3種類。FFが、2.4リッターV6(177ps)の「2.4」。4WDは、すべて直噴「FSI」で3.2リッターV6(255ps)の「3.2 FSIクワトロ」と4.2リッターV8(350ps)の「4.2 FSIクワトロ」というラインナップ。
2007年8月、4WDモデルに2.8リッターV6(210ps)の直噴モデル「2.8 FSIクワトロ」がセダン/アバントに追加され、全4モデルとなった。
トランスミッションは、2.4のみCVTが組み合わされ、その他は6速ティプトロニック仕様となる。

(グレード概要)
追加された2.8リッターに搭載される新エンジンは、従来からのFSIガソリン直噴技術に加え、新たにバルブコントロール技術「アウディバルブリフトシステム」を搭載。210psの出力と、28.6kgm(3000〜5000rpm)のトルクを発揮する。
一方、各パーツの摩擦抵抗軽減も手伝い、以前の2.8リッターV6エンジンと較べて燃費が10%向上したという。タイヤは、245/45R17に15スポークアルミホイールが備わる。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★
クオリティではライバルの追随を許さないA6のインストゥルメントパネルだが、デザインは妙に間延びしていて精緻な印象が薄い。スイッチ類の配置は今ひとつ練れていない。
たとえば、ナビのモニターの脇で目立つ大きなスイッチがグローブボックスのオープナーでしかなかったり、かと思えばハザードのスイッチが目立たなかったりといった具合だ。
自慢の「MMI」もボタンが多すぎて、BMWの「iDrive」やメルセデスの「COMANDシステム」のように画面だけ見ていれば操作できるというものではない。目線を下げて操作しなければいけないぐらいなら、ボタンをすぐ見える位置に置いてくれたほうがよほど使いやすいのではないだろうか。
試乗車は、オプションの「S-line」装着車ということで、ステアリングやシフトノブにディンプルレザーがあしらわれ、ステアリングなどは赤いステッチまで入れられている。ピアノブラックのトリムともども精悍な雰囲気は派手すぎることもなく悪くないと感じた。

(前席)……★★★★
S-lineのレザースポーツシートはサイズがたっぷりとしており、また調整範囲が広いため体型を選ばない。それでいてサイドサポートは適度に張り出していて、コーナリングでは身体をきちんとホールドしてくれる。最初は腰のあたりの張りがやや強めとも思えたが、数百キロをともにしても疲れは最小限だったから、要はそういった走らせ方を見越した、徐々に身体に馴染んでくるタイプなのだろう。
ボディが大きいだけにシート配置は適切で自然なドライビングポジションがとれるし、ペダル配置にも不満はない。ただし4WDのトランスファーなのか、左足の下側、センタートンネルからフロアにかけて盛り上がった部分があるのは気になると言えば気になる。右ハンドル化の数少ない弊害である。

(後席)……★★★★セグメント最大級のボディサイズのおかげで、後席も広さは十分。座面は大きいし膝前や頭の周辺などの空間もとても余裕がある。先代と較べると全高が下げられた分、着座位置も低くなっており、その分はホイールベースを伸ばして、乗員は足を前方に投げ出すようにして座るかたちとなっている。個人的にはもう少し身体を起こし気味に、高い位置に座りたいところではある。特に長距離を後席で過ごすならば、そのほうがかえって疲れにくいのではないだろうか。
話の順番が逆になるが、A6の後席でまず好印象を抱かせるのは乗降性の良さである。座面の縁の部分が丸く落とされていて、足を中に入れやすいのだ。座面が低くなった分、どうしても腰を落として座らなければならないのだが、その分を埋め合わせようとアレコレ工夫もされているというわけである。
カップホルダーはアームレスト内蔵。こんなところまでダンパー付きで、使おうとするとゆっくりとせり出してくる。サイドブラインド、さらに試乗車ではシートヒーターまで備わるなど、装備は充実している。

(荷室)……★★★★★
開口部はそれほど大きくはないが、トランクリッドはヒンジが奥にあり急な角度で開いてくれるため、積み込み性は良い。ラゲッジスペース自体も、奥行きがたっぷりとしていて見るからに広大。フロア下にはフルサイズのスペアタイヤが収まっているが、フロアが高過ぎるということもない。しかも、それでも足りなければ、左右分割可倒式の後席を倒して、荷室に充てることもできる。
実用性という観点で言えば、よほどの大荷物を積む機会が日常的にあるのでもない限り、アバントは要らないとすら思えるほどだ。
容量が大きいだけでなく内部は全面カーペット敷きとされ、段差も少ない。右側には小物を入れておけるポケットが備わるなど使い勝手も悪くなさそうである。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
新顔の2.8リッターFSIユニットは、3.2リッターの単なるスケールダウン版ではなく、アウディバルブリフトシステムと呼ばれるバルブリフト量の2段階切り替え機構を備え、さらにクランクピンやメインベアリングの径の縮小、ウォーターポンプの小型化などによって摩擦抵抗の低減を図っているのが特徴である。
その恩恵は乗ればすぐに感じることができる。とにかく回転の上下が滑らかなのだ。おそらくはスロットルの巧みな制御も効いているのであろう出足の良さに対して、3000rpmあたりまでのトルク感はそれほどでもなく、発進加速時には気持ち多めにアクセルを踏みたくなるし、また巡航時も昇り勾配に差し掛かると頻繁にキックダウンが起こる。しかし緻密な回転感覚と、制御の行き届いた6段ATのショックと無縁の変速ぶりのおかげで、それも敢えて観察しなければまったく気にならない。
踏み込んでいくと5000rpmあたりから明確にパワーが盛り上がりはじめ、7000rpm手前のレッドゾーンまで実に爽快に吹け上がる。この上質且つ精緻なフィーリングには、本当に惚れ惚れさせられてしまった。
ものすごく新しいメカニズムが使われているというわけではないが、これもまた高い技術があってこそ実現できた境地。つまりアウディらしさだとは言えないだろうか。

(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
登場当時のA6は軽快感を演出するためかステアリングの操舵力が妙に軽々しく、それでいて挙動としては一瞬覚える軽快感に反してアンダーステアが強く、しかもリアが落ち着かないという、とても扱いにくいクルマだった。しかし、そろそろ熟成が進んできたらしく、試乗車は中立位置からステアリングに適度な重みが感じられ、またそこから切り込んでいく時にも演出めいたキレの良さが形を潜める代わりに応答の正確性が高まり、結果として優れたライントレース性を実感させる、心地よいハンドリングへと変化しつつあるのが確認できた。操舵感の良さには、あるいは太いタイヤを履くS-lineということも良い方向に作用していたのかもしれない。
その代わり、乗り心地はハッキリと硬め。目地段差を超える際などにはゴツンッと突き上げることもある。しかし、ボディやサスペンションなどの高い剛性感に助けられて、さほど不快感はない。特にS-lineを選ぼうという人にとっては、そのフットワークの良さも加味すればなおのこと、十分に許容範囲と言えるだろう。個人的にも、登場当時のA6の、妙に突っ張って路面の起伏に対する感度が高すぎる乗り味よりは、断然こちらを選びたいと感じた。

(写真=高橋信宏)

【テストデータ】

報告者:島下泰久
テスト日:2007年8月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)245/45R17(後)同じ
オプション装備:SEパッケージ=35.0万円/S-lineパッケージ=52.0万円/リアビューカメラ付APS=20.0万円/アダプティブクルーズコントロール=28.0万円)
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:--
使用燃料:--