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【スペック】全長×全幅×全高=4656×1908×1281mm/ホイールベース=2700mm/車重=1825kg/駆動方式=FR/5.5リッターV8SOHC24バルブスーパーチャージャー付き(626ps/6500rpm、79.5kgm/3250-5000rpm)(欧州仕様)

メルセデス・ベンツSLRマクラーレン・ロードスター(FR/5AT)【海外試乗記】

カリスマ性の素 2007.09.21 試乗記 メルセデス・ベンツSLRマクラーレン・ロードスター(FR/5AT)

メルセデス・ベンツとマクラーレンの共同開発により誕生した「SLRマクラーレン・ロードスター」。いとも簡単にオーバー300km/hの世界を体感できるスーパースポーツに、自動車ジャーナリスト河村康彦が試乗した。

626ps、79.6kgm

メーカー希望小売価格「ナナセンマンエン」……そんな価格からして“スーパーカー”の貫禄タップリというモデルに、ドイツはフランクフルトで乗ってきた。「メルセデス・ベンツSLRマクラーレン・ロードスター」。ネーミングから、このクルマがメルセデス・ベンツと、マクラーレンとのコラボレーションの結果であることは明らかだ。2003年に発売され、これまではクーペ・ボディのみがデリバリーされてきた。こちらオープン・バージョンは、クーペの後継モデルとの位置づけ。もちろんクーペ同様、生産を担当するのはイングランドにあるマクラーレンのF1ファクトリーとなる。

300SLで培ったメルセデス・ベンツの経験とF1技術との融合から生みだされた1950年代のレーシングカー「300SLR」を技術的なルーツとするこのモデル。技術の粋を集め、様々なハイスペックとストーリー性によってライバルを圧倒する必要があるスーパースポーツカーだけに、採用された各種テクノロジーは凝りに凝ったものとなる。

車両の骨格を成すボディは、基本部分にF1マシン同様のカーボン・モノコック製を採用。フロントサスペンションが取り付けられるフレームはアルミ製。その先には前突時のエネルギーを自らが破壊されることで吸収するコーンシェイプのカーボンファイバー製クラッシュBOXが取り付けられる。一般の量産モデルではあり得ない造りのボディ。完全なるフロントミドに搭載されるのは、メカニカルスーパーチャージャー付きのAMG製V8エンジン。5.5リッターという排気量にスクリュータイプのスーパーチャージャーで過給を行った結果、最高出力は626psというとてつもない値。最大トルクも79.6kgmとの強大さ。うち61.2kgm以上はすでに1500rpmで発生され、さらに2000rpmに達すれば71.4kgmをマークするというチューニングには、多くの人が乗ることまでを想定した“現代のスーパーカーらしさ”を感じとれる。

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ほとんど後輪付近

ハイテク素材をふんだんに用いた結果の1825kgという車両重量は、「スチールを使った場合に較べて50%軽量」と豪語される。動力性能は凄まじく、0-100km/h加速タイムはわずかに3.8秒(!)、最高速は332km/hというデータが発表された。

クーペバージョンとの最大の相違点、開閉式のルーフシステムには、昨今の量産モデルでポピュラーなリトラクタブルハードトップではなく、あえてプリミティブなソフトトップ方式が選択された。これは「スポーツカーのオープンルーフは、シンプルで軽量なソフトトップに限る」というメッセージも含んでのことであるはずだ。もっとも、超ロングノーズ&ショートデッキというこのモデルのプロポーションにリトラクタブル式ルーフの格納スペースを探し出そうとすれば、それはいかにスーパーなモデルであろうとも(!?)至難の業ではあろう。

そんなメルセデス・ベンツSLRマクラーレン・ロードスターの姿を目の前にすると、むしろクーペよりもオープンバージョンのルックスに、より自然なまとまりが感じられた。ルーフ部分がカットされ、そもそものロングノーズのプロポーションが一層強調された。そしてそんなノーズセクションの反動(?)か、高い位置でまとめられたデッキ部分はごく短く、結果として視覚的な重心位置は「ほとんど後輪付近」という雰囲気。

5段ATを操るセレクターノブ頂点にあるフラップを開き、中に隠されたスタートボタンを親指で押してエンジンに火を入れる。耳に届くV8サウンドがことのほか大きく感じられる。4本の太いテールパイプエンドは、前輪の後部という近い位置からサイド出しされている。8気筒エンジンは静かでスムーズ、そんな常識はこのモデルには通用しない。

クルマからの要求

冒頭紹介のように飛び切り高価なモデルであるにも関わらず、普通に移動をする限り恐れる必要は何もない。ライトやワイパー、さらには空調やトランスミッション関係の操作ロジックは一般のメルセデス・ベンツ車のそれと「まったく同じ」と言っていいデザイン。だから、前述のエンジン始動法さえを知っていれば、まるでAクラスやCクラスのごとく走行させることができる。ただしその場合でも、自らの前方には想像を絶するほどに長いノーズセクションが存在することだけは常に意識すべきではあろう。でないと、F1マシンをイメージしたというシャープなノーズコーンの先端が前車へと異常接近する可能性が多分にある。同様の理由からパーキング・スペースでの前向き駐車も厳禁と肝に命じるべきだ。

かくして、動かすだけであれば誰にでもできるこのモデルも、アクセルペダルに意図的に力を込めようという段階になると一筋縄では行かない。何しろ、ラフなアクセル操作に対しては、たとえドライ路面であろうとも、いとも簡単に駆動輪を空転させる。そんなチャンスをうかがうとてつもないパワーの持ち主である。なかなか厄介だ。もちろん、そうしたときでもトラクションコントロールが即座に介入して“大事”に至ることはないのだが、見方を変えればそうしたハイテク装備なくしてはまともに加速すらできない暴れ馬。それがSLRマクラーレン・ロードスターの正体であるのだ。

ハンドリングは、長いノーズの持ち主という見た目とは裏腹に、予想を覆すほどにシャープ。ときに切り過ぎの感覚にすら襲われるのは、12.6という速いステアリング・ギア比と、ヨー慣性モーメントが小さいフロントミドシップレイアウトを採用する相乗効果であろうか。

いやいやそれにしても、このモデルで「4つのタイヤのグリップ力を、限界までを引き出して」といった本格的なスポーツドライビングに挑戦をするには、まさに現役F1パイロット並のドライヒングスキルを必要としそう。ちょっとやそっとでは到底近づけない常識破りの走りのポテンシャルを備えるということも、カリスマ性を得るために必要不可欠な要素と解釈すべきなのか……。

(文=河村康彦/写真=ダイムラー・クライスラー日本)

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