米国トヨタ社長、クライスラー副会長へ電撃移籍!

2007.09.11 自動車ニュース

米国トヨタ社長、クライスラー副会長へ電撃移籍!

米国トヨタ社長、クライスラー副会長へ電撃移籍!

米国自動車業界が激震した。米国トヨタ(Toyota Motor Sales/TMS)とクライスラーは2007年9月6日、ジム・プレスTMS社長の電撃移籍を発表したのだ。

北米トヨタからクライスラーに移籍する、ジム・プレス氏。(写真=クライスラー)
米国トヨタ社長、クライスラー副会長へ電撃移籍!

■自動車界で指折りの存在

ジム・プレス氏(60)は1970年、フォード社から米国トヨタに転職し、販売とマーケティング畑を歩み、トヨタ本社の専務取締役を務めるほどの重要人物だった。細身の体系で、腰が低く、人当たりが良く、米国自動車業界のなかでも好人物で通っている。

また、デトロイトショー、ニューヨークショーなど新車発表の舞台で、司会進行役や商品説明役として度々登場。ユーモアを交えた話術で会場内の雰囲気を和ませるのが常だった。

トヨタの若者向けブランド「サイオン」の発表会では、クラブのようなデコレーションをした会場内に、ノーネクタイで踊りながら登場したプレス氏。その踊り……タコ踊りというか、阿波踊りというか、なんとも滑稽なステップと腕&腰の動き……会場内には当然、大きな笑いが起った。だが、これもプレス氏の計算のうち。「私たちオヤジは、もう古い。サイオンは次世代のトヨタユーザーのために生まれるのです!」と、サイオンブランドを仕切る若手ジェネラルマネージャーを舞台で紹介した。

プレス氏は、ダイムラーのディーター・ツェッチェ会長、ルノーのカルロス・ゴーン会長と並ぶ、自動車業界のエンターティナー経営者なのである。

■不慣れなクライスラー会長をサポート

そのプレス氏が、どうしていま、クライスラーに移籍するのか?

クライスラーといえば、この2007年8月に独ダイムラーから分離独立、アメリカの投資ファンド「サーベラス」への売却手続きが完了したばかりだ。
サーベラスがクライスラーの会長に抜擢したのは、ロバート・ナルデリ氏。彼は全米最大の日曜大工用品チェーン「ホームデポ」社長からの転身である。だが、アメリカ国内では、「ホームデポの業績不振から事実上の更迭では?」とも報じられている。

ナルデリ氏、当然だが自動車業界のことは深くわからない。そのためには、実質的に事業活動するトップが必要だ。生産部門、サプライヤー対応部門では、ダイムラー・クライスラー時代から継続して、トム・ラソーダ氏が担当する。プレス氏は、ラソーダ氏と同格の副会長として、営業部門、マーケティング部門を担当。ラソーダ、プレス、両氏がナルデリ氏にレポートするという体制になった。

■投資ファンド流パフォーマンスか

米国トヨタにとって、他社からこれほど露骨なヘッドハンティングをされたことはない。米国自動車業界にドップリと浸かってきた従来のビッグ3ならば、業界の秩序を守るためにも、こんな手は使わなかったはずだ。

しかし、いま、クライスラーの親玉は投資ファンドである。投資家への利潤追求を第一と考えるのは当然。「儲けるためには、手段選ばず」だ。速攻性のあるクライスラー社立て直しが急務。それならばと、業界きってのエンターティナー、プレス氏の起用になったのではないか。さらに言えば、「これまでの業界常識を破るヘッドハンティング」という話題性を使って、クライスラー社復活のノロシをあげる、一種のパフォーマンスであると思う。

順風満帆な米国トヨタ社長/トヨタ本社専務取締役の座を捨て、クライスラー副会長に転進したプレス氏。この衝撃的行為は、かなりのハイリスク、ハイリターンであるに違いない。
プレス副会長の新しきエンターテイメントに、期待が高まる。

(文=桃田健史(IPN)/写真=トヨタ自動車、クライスラー)

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