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【スペック】全長×全幅×全高=4907×1953×1379mm/ホイールベース=2990mm/車重=1880kg/駆動方式=4WD/ 6.3リッターV型12気筒DOHC48バルブ(660ps/8000rpm、69.6kgm/6000rpm)/価格=3200万円

フェラーリ・フォー雪上試乗会【試乗記】

“乗れてる”気分に 2012.03.01 試乗記 フェラーリ・フォー(4WD/7AT)
……3200万円

V12を搭載する一方、「4人乗り」で「4WD」という、非現実性と実用性を併せ持つかのような「フェラーリ・フォー」。その実力を、氷上の特設コースで確かめた。

イタリアのシューティングブレーク

「ここは完全にブラックアイスになっていて、すごく滑りやすいですから」と助手席のインストラクターから注意された箇所に近づく。慎重に、慎重に、慎重……アーッ! オシリを振り出してハーフスピン。赤面しながらコースに戻る。もう1周。再び、ゆっくり、慎重に、慎重に、慎……アーッ!!  再びスピンして、すっかり意気消沈。 

「フェラーリ・フォー」で氷上をドライブしている。湖面がすっかり凍結した長野県白樺高原は女神湖で、新しい4WDシステムを搭載した跳ね馬のプレス試乗会が開かれたのだ。フェラーリ・フォーのデビューは、2011年3月のジュネーブショー。「シューティングブレーク」を名乗る2枚ドアのワゴンボディーをもち、フロントには6.3リッター12気筒を搭載する。名前の由来は Four-Four、「4座」プラス「4WD」の意味だ。

シューティングブレークとは、言うまでもなく「狩猟用」とされる超高級ステーションワゴンのこと。ハイエンドスポーツカーを改造したステイタスシンボルの最たるもので、例外はあるけれど、英国特産といってもいい車型である。そのシューティングブレークを、なぜイタリアのスポーツカーメーカーが引っ張り出したのか? もしやカロッツェリア・ツーリングのスワンソング(ランボルギーニ・フライングスターII)に、並々ならぬ思い入れをもつ重役がフェラーリ社内にいたとか??

マラネロの自動車メーカーが、4人乗り高級スポーツカー市場で覇権を握るために取った手段と関係があるのかもしれない。「アストン・マーティン ラゴンダ」「ポルシェ・パナメーラ」といったライバルを、全天候性と万能性で圧倒する! 大型ワゴンという車型からくる物理的な容量の大きを武器にして、実用面で優位に立つ!! そんな身もふたもない戦略を立てたがゆえに、「シューティングブレーク」という単語でユーザーを煙に巻いたのでは……というのは、邪推に過ぎるか。

【Movie】フェラーリ・フォー雪上試乗会

今回、試乗会が行われた女神湖では、冬季期間中に氷上ドライブの申し込みを受け付けており、自車持ち込みで走行できる(要予約)。なお、2012年度の受け付けは2月下旬ですでに終了。
今回、試乗会が行われた女神湖では、冬季期間中に氷上ドライブの申し込みを受け付けており、自車持ち込みで走行できる(要予約)。なお、2012年度の受け付けは2月下旬ですでに終了。 拡大
 
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充実のドライバーサポート

4WDフェラーリのボディーサイズは、全長×全幅×全高=4907×1953×1379mm。路面の専有面積でいうと、「トヨタ・アルファード」(全長×全幅=4865×1840mm)がすっぽり入る大きさだ。2990mmという長いホイールベースを持ち、アルミニウムをメインとした軽合金の骨組みにアルミのシートメタルを貼る。いわゆるスペースフレーム構造である。旧世代のモデルより「重さで10%軽く、ねじれ剛性で6%アップした」という。ただし“旧世代のモデル”が「612スカリエッティ」を指すとするならば、完成車の車両重量はむしろ増加気味の1880kg(カタログ値)。前日、前々日の参加者の活躍により、すっかり磨き上げられた氷の上で、大型12気筒フェラーリがどのような挙動を見せるのか? 不安がなかったと言えばウソになる。

ウソのようだった。現実は。ステアリングホイールに設けられたレバー、「GTマネッティーノ」で走行モード「COMFORT」を選んで走り始めると、なんというか、「マツダ・ロードスター」で氷上ドライビングレッスンに参加したかのよう。スロットルを開けると瞬時にエンジン音が高まってリアタイヤが空転し、低速域ながら時にテールが流れ、反射的にカウンターを当てる。もったいなくも豪華な大型スポーツカーに乗っていることをしばし忘れ、気軽に“ヤッてる”気分でアイス路面を楽しめる! その裏では、エンジン出力、シフトタイミング、サスペンション、トラクションコントロール、VDC(各輪のブレーキ制御)、さらに新しい4WDシステムが一丸となってドライバーを助けてくれていることに、気がつきもせず……。

 
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ステアリングホイールに備わるドライブモード選択システム「GTマネッティーノ」では、雪道走行用の「ICE-SNOW」、ウエット路面走行用の「WET」、ドライ路面走行用の「COMFORT」と「SPORT」、システム解除の「ESC OFF」の5つのモードを備える。
ステアリングホイールに備わるドライブモード選択システム「GTマネッティーノ」では、雪道走行用の「ICE-SNOW」、ウエット路面走行用の「WET」、ドライ路面走行用の「COMFORT」と「SPORT」、システム解除の「ESC OFF」の5つのモードを備える。 拡大

でっかいエンジンをフロントミドに

フェラーリ・フォーの長いボンネットの下には、6262ccのキャパシティーを持つV型12気筒が収められる。バンク角は65度。94.0×75.2mmのボア×ストロークから、「599GTO」(670ps)とノーマル「599」(620ps)の中間に位置する最高出力486kW(660ps)/8000rpmと、排気量で劣る両者を圧倒する683Nm(69.6kgm)/6000rpmの最大トルクを発生する。

省燃費とCO2削減が声高に叫ばれるなか、カムヘッドに赤い結晶塗装が施された12気筒も対応に追われた。燃料噴射はシリンダー内への直噴となり、12.3:1という高い圧縮比で内燃機関としての効率向上を図る。アイドリンストップ機能まで付与されたフェラーリ・フォーのカタログ燃費は、欧州基準でリッター6.5kmとされる。

組み合わされるトランスミッションには、最近のフェラーリ車の例に倣い、ロボタイズド式のシングルクラッチを捨て「F1デュアルクラッチボックス」こと2ペダル式7段MTが使われる。ゲトラグ製。フロントヘビーになるのを嫌って、ギアボックスは、一般的なエンジン直後ではなく、リアデフと一体化して車体後部につるされた。トランスアクスル方式である。その結果、前:後=47:53という素晴らしい前後重量配分を得ている。

12気筒の搭載位置は、フロントバルクヘッド(キャビンとの隔壁)にめり込まんばかり。6気筒×2列の大きさがあるユニットだから、ずいぶんと迫力あるフロントミドシップだ。これではホイールベースも長くなるというもの。そしてV12の前方、前輪車軸の上に位置しておかれるのが「PTU(Power Transfer Unit)」で、「4RM」と呼ばれるフェラーリ4WDシステムのキーとなるデバイスである。

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5速以上ではFR

「FF」と書いて「Full time Four wheel drive」と読ませるのは、英国の自動車メーカー、ジェンセンが、1960年代に「インターセプター」の4WD版で使った手。ところが同じFFでも、最新フェラーリのそれは「Full time」どころではない。4輪が駆動される時間がごく限られる、オンデマンド式4WDである。極端な言い方をすると、フェラーリ・フォーは、実質的には後輪駆動車といえる。通常の路面なら、フロントへトルクが伝えられることはまずないという 。

「馬車は馬が前から引くもの」というフェラーリ本来のドライブフィールを損ねることなく、増大する一方のエンジン出力を受けとめ、多様な路面への対応能力を上げなければならない。そのために開発されたのがPTUである。結晶塗装のカバーが立派なので大きく見えるが、本体は全長170mmの小ぶりなデバイスだ。電子制御された湿式多板クラッチを介して、前輪左右それぞれに駆動力を伝える。原理的にはリアの電制ディファレンシャル「E-Diff」と同じ。おもしろいのは、PTUが2段のギアを持つことである。

エンジンのクランクシャフトから取り出された駆動力は、後方へはプロペラシャフト、7段ギアボックスを介してリアデフ、そして左右後輪へと伝わる。通常の(トランスアクスル方式を採用した)FR車と変わらない。一方、前輪への駆動力は、必要に応じてPTUを通じて左右へ振り分けられる。当然、後輪との回転差が生じる。そこで、PTUのカーボンファイバー製多板クラッチを断絶/圧着させることで前後輪(と前輪左右)の差動を吸収する。といっても許容能力には限度があるから、7段デュアルギアボックスの1〜2速をPTUではロー、同3〜4速をPTUのハイがカバーすることになる。5速以上は? 対応しないのだ! 

つまりフェラーリ・フォーは、1〜4速限定のオンデマンド式4WD車である。速度が上がってギアを5速以上に入れられるような状況なら、路面とのグリップが確保されているはず。ならば4輪駆動は必要ない! 全方位的な対応を迫られる実用車メーカーのエンジニアが聞いたらため息をつくような割り切りのよさ。通常のFR走行時には荷物になるばかりの4WDシステムは、能(あた)う限り小型軽量に。レースフィールドを本拠地とするフェラーリ以外の自動車メーカーでは、まず承認されないであろう“乱暴な”解決策である。

「フェラーリ・フォー」の前後重量配分は43:57。そのバランスの良さも、氷上ではアドバンテージになり得る。
フェラーリ・フォー雪上試乗会【短評】

氷上を全開で

運転席に座り、ステアリングホイールに設けられた赤いスターターボタンを押す。右手の内側には、GTマネッティーノの小さなレバー。F1マシンゆずりのダイナミックコントロールシステムで、5種類の走行モードを選べる。サーキット用の「ESC OFF」、「SPORT」、「COMFORT」、そしてフェラーリ・フォーには「WET」と「ICE-SNOW」が用意される。

フェラーリ・フォーの車両価格が3200万円からと知っているので、迷わず「ICE-SNOW」を選ぶ。多少スロットルペダルを踏んでも、エンジンは吹けない。ゆるゆると走る。安全第一。最初の左折箇所のはるか手前でブレーキを踏むと、インストラクターとスタッフを乗せたフェラーリはそのまま滑り続ける。ブレーキはストロークより踏力(とうりょく)でコントロールするタイプらしく、足置き場かと思わせるガッシリした踏み応え。各輪のブレーキを緻密に制御しているのだろう、ノーズがしっかり前を向いたまま速度が落ちていく。

 
フェラーリ・フォー雪上試乗会【短評】

「WET」も「ICE-SNOW」ほどではないが、おとなしい。ステアリングを切って、ヨーが出る前にスロットルを開けるとそのままアンダーステアで外に出て行く。が、それはドライバーのせいである。氷の上でも大過ない。多少なれたところで、ノーマルモードたる「COMFORT」にトライして、すっかり“乗れてる”気分になり、満を持して「SPORT」にしたとたん、冒頭のありさま。VSCほかの安全マージンが削られ、よりドライバーの技量にかかる割合が増やされたからだろう。言い訳に聞こえるかもしれないが、というか言い訳なのだが、「ICE-SNOW」、「WET」、「COMFORT」と3段階の変化と比較して、「SPORT」への段差はいささか大きい気がした。

例えば、12気筒のレスポンスはかみつかんばかり。スロットル操作に対するアウトプットが増して、リアからグイグイ押される。おそらく普通の路面ではこれくらい違いを出さないと、「SPORT」にしたかいがないのだろう。「SPORT」で数周してわかったのは、いかに優秀なダイナミックコントロールでも、ドライバーの学習能力欠如までは補えないということである。

 
フェラーリ・フォー雪上試乗会【短評】

圧巻だったのは、インストラクターに促され、「SPORT」モードでローンチコントロール(レーシングスタート)を試したとき。「LAUNCH」ボタン長押し。ブレーキペダルを踏みつけ、アクセルをベタ踏み。回転数を上げて、ブレーキをリリース! 「ノーズとテールが暴れてドコへ行くやら……」との不安をよそに、フェラーリ・フォーは4輪で激しく氷をかきながらまっすぐ進んでいく。ゴトゴトと床下からの振動を受けながらドライバーはステアリングホイールを握っているだけ。下手にスロットルを戻すと、途端に姿勢が乱れるのではとおびえながら(そんなことはなかった)。

 
フェラーリ・フォー雪上試乗会【短評】

リッチな実用路線

ステアリングホイールをスタッフに渡し、リアシートに座る。着座位置はやや低いが、膝前、頭上とも、まったく実用的な空間が確保される。身長185cmまで、成人の95%をカバーする広さだという。フェラーリのフル4シーターらしく、後席もホールド性に富み、運転者の四苦八苦している姿を余裕で眺められる。

フェラーリ・フォーの後席は分割可倒式になっていて、背もたれを倒して荷室を広げることも、センター部分のみ倒してスキーなどの長尺物を載せることも可能だ。荷室容量は450リッターというから、猟銃と弾薬に加え、そうとう大物を仕留めないといけないな……というのは(半分)冗談で、ゴルフバッグ2個とトローリーケース4つを積めるそうだ。

 
フェラーリ・フォー雪上試乗会【短評】

大柄なボディーに4WDと聞くと、いかにも新興中国市場との相性が良さそうだが、彼の地では「もっぱらV8モデルが人気で、12気筒を購入するほど成熟していない」らしい。一方、ヨーロッパでは、「毎日使える」、「天気が変わっても大丈夫」、「フレキシビリティが高い」と、スイス、イタリア、UKでの評価が高いという。スイスとイタリアは峻険(しゅんけん)なアルプスがあり、UKは雨が多いせいかしらん? 

絶対的な販売台数は公表されていないが、フェラーリ・フォー購入者の7割が新規顧客、つまり他のブランドから奪った富裕層だとか。まずは「スーパーリッチな実用路線」が、功を奏しているようだ。

(文=青木禎之/写真=郡大二郎)

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