第89回:ホイールが主張するブランド(後編)

2007.09.01 エッセイ

第89回:ホイールが主張するブランド(後編)

前回に続き、ドイツのタイヤメーカー「コンチネンタル」社が、シェア率の低いアメリカで展開したシリーズ広告を紹介する。

ドイツ生まれ

「Engineered for Autobahn.」
速度計の針は160マイル(約256km/h)を指している。コンチネンタル「Conti Touring Contact」は、走行性能と乗り心地をバランスさせたという、乗用車向けのオールシーズンタイヤ。ドイツ生まれだけに、いまだ一部で速度無制限のアウトバーンを基準に設計されていると謳う。

「In harmony with the road.」
ハワイ生まれのサーフブランド「タウン&カントリー」のロゴ……と若い人は思うかもしれないが、これは「大極図」と呼ばれる東洋古来のシンボルマーク。白い部分が「陽」、黒い部分は「陰」をあらわす。「道路との調和」を主張するコンチネンタルが、和合や調和のアイコンに用いたワケだ。
曲玉(まがたま)を2つ組み合わせたマークを、ドイツのタイヤメーカーが、しかもアメリカで使うなんて……。


コンチネンタル社は1871年、ドイツ有数の馬の産地ハノーバーで創立。そのことから「跳ね馬」が会社のマークになっている。130年以上の歴史もさることながら、世界初のトレッドパターンを採用した乗用車向けタイヤ(1904年)や、チューブレスタイヤでのパテント取得(1943年)など、技術革新に努めた。
ドイツのトップ、欧州全体でも2位のタイヤメーカーだが、世界市場におけるシェアはミシュラン、ブリヂストン、グッドイヤーに次ぐ4位。アメリカ市場では、ほとんど無名の存在だった。

そこでつくられたのが、このシリーズ広告。4枚ともロゴの下には「They're not just tire. They're Continental tires.」のコピーが添えられる。「ただのタイヤではない。コンチネンタルタイヤである」と主張し、ブランドを訴求した。
その結果、アメリカでの販売本数は、広告を出した前の年と比べて約10%増加したという。

Continental Tires/USA
クリエイティブディレクター:John Boone
フォトグラファー:Steve Bronstein
コピーライター:David Oakley
エージェンシー:Boone Oakley/NC

(文=金子秀之/2004年4月10日)

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。