第85回:シルエットで鮮やかに表現する椅子の広告

2007.09.01 エッセイ

第85回:シルエットで鮮やかに表現する椅子の広告

日本人の目から見ると新鮮な、海外の広告を紹介している『広告のススメ」。「世界の自動車広告を通して異文化に触れる」シリーズですが、ときにはクルマの広告ではなく、他の様々な広告を紹介しようと思います。
今回は、家具の傑作広告をご紹介します。広告を見て、“世界”をご覧ください。(金子秀之)

プロダクトも広告も美しい

素晴らしい写真だ。椅子の並べ方といい、カーブを利用して夕日をバックにシルエットにした手法といい、実に素晴らしい。
「アリの歩く姿を高レベルでとらえるには、アリの身体の部分をシルエットにしたらいいのでは?」
「アリが歩いたように、椅子の脚を並べるにはどう置いたらいいかな?」
「シルエットにするには、夕日がイイね」
「月もいれたら?」
……などなど、試行錯誤を繰り返すうちに、こうなったのであろうか。想像がふくらむ。
シルエットが、椅子をいろんな角度から見せてくれるので、一脚でフォルムを美しく見せるよりも、デザインのよさを多角的に見せてくれる。ローアングルから撮影したのもいい。夕焼けは、ちょっと“つくった感じ”があるとはいえ、上手な合成(?)で違和感なく仕上げられている。

この椅子は、絞った腰のラインと細長い脚が“アリ”を想像させることから、そのままアリんこ(Ant)の愛称で世界的に親しまれている、アルネ・ヤコブセン1952年の代表作。1984年に「IDクラシック賞」(優秀な工業デザインに贈られる賞、審査がもっとも厳しいといわれる)を受賞した、ダイニッシュ・ファニチュアーである。
フィリッツ・ハンセン社は曲げ木を得意とし、木材が描く、優雅かつシャープな曲線で人々を魅了。多くのデザイナーと提携し、近代的な北欧のデザイン概念を定着させた。
椅子のデザインと同じように、広告のデザインも素晴らしい。

(文=金子秀之/2004年3月13日)

Fritz Hansen“Ant”/Denmark
アートディレクター:Perter Wibroe
コピーライター:Perter Wibroe
エージェンシー:Wibroe、Duckert&Partners/Copenhagen

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。