第69回:Roy Graceを偲ぶ(その7)

2007.09.01 エッセイ

葬式という、ある意味タブーな題材をモチーフにした、フォルクスワーゲン「お葬式」(1970年)。葬式というユニークなモチーフもさることながら、皮肉がきいた内容で、記憶に残る1作だ。

ユニークかつ皮肉

故人の遺言(ナレーション)

私、マーシャル・イーストリーは、以下のように財産をおくることを遺言する。
まず、明日という日がないかのように、お金を浪費する妻、ローズへ。100ドルと1枚のカレンダーを残す。
私の息子たち、ラドニーとビクターは、私が与えた金を最後の10セントまで、クルマと女につぎこんだ。彼らには50ドルを、10セント玉で残す。
仕事上のパートナー、ジュール。彼の唯一のモットーは、“使え、使え、使え”だった。彼に遺産は“出すな、出すな、出すな”だ。1ドルの価値を知らない友人、ならびに親戚には、1ドルをおくる。
最後に、わが甥のハロルドへ。彼は「1銭たまれば1銭のもうけ」さらに「マックスおじさん、フォルクスワーゲンは乗って絶対、損にはならないですよ」が口癖だった。彼に、私は全財産の1000億ドルを残す。

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質素な生活をする者が最後に勝利を得る、という、皮肉のきいたCMである。長い葬列をつくり、故人の葬式に向かう親戚縁者たち。クルマの縁者たちの表情が次々に映し出され、それぞれにオーバーラップして遺言が語られる。浪費家の妻や息子たちには、ほんのわずかの財産しか与えず、豪華なクルマの最後についてくるフォルクスワーゲン「ヴィートル」に乗る甥に、全財産を残すというお話だ。

クルマのCMにお葬式が出てくるのは、このCMだけではないだろうか? だから、1度見たら忘れられない、訴求力が強いCMなのだ。

【Volkswagen“Funeral”】

Volkswagen“Funeral”
アートディレクター:Roy Grace
コピーライター:John Noble
プロダクション:Zieff Films
ディレクター:Howard Zieff
フォトグラファー:Larry Williams
エージェンシー:Doyle Dane Bernbach
(1970 NYADC Gold Medal)

(文=金子秀之/2003年11月)

Volkswagen「Funeral」(1970年)
Volkswagen「Funeral」(1970年)

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。