第68回:Roy Graceを偲ぶ(その6)

2007.09.01 エッセイ

第68回:Roy Graceを偲ぶ(その6)

CM撮影現場をテーマにしたAlka-Selzer「Mama Miya」(1971年)。最後の“落ち”は、かなり笑えます。

CMづくりを茶化した名作

男優:マンマ・ミーヤ! とっても“スピーシー”な……
ディレクター:カット! “スパイシー・ミートボール”だジャック。
男優:ゴメン

その後、発音にダメ出しをくい、辛すぎでヒーヒーいったりと、食べる気がどんどん失せる男優。セリフもメチャクチャに。ついに59テイク目に突入し……

男優:……(虚空をみつめて惚ける)
ディレクター:ジャック、ジャック!?
ナレーション:時に、私たちは食べ過ぎることがあります。特にピリッと辛みのきいたモノのときはなおさら。そんなとき、このアルカ・セルツァーを飲んでください。アルカ・セルツァーは消化を助け、胃をスッキリさせます。

気を取り直したところで、もう1テイク。
男優:マンマ・ミーヤ! ピリッ辛いミートボール!!

演技もセリフも完璧に決まったのに、セットの一部が壊れて落ちる。

ディレクター:カット! ……OK、昼めしにしよう。

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アルカ・セルツァーがいかに効くか、CM撮影風景をテーマに表現している。主演のジャックは、アクセントなどで59回もリテイクをくらい、やっと上手にできたら、オーブンの蓋が「ガチャン」と落ち、またまたNG。彼はくたくた、お腹もパンパン。CMづくりの“アホらしさ”を茶化しながら、見事なCMとして成り立たせたところが見事である。OKが出てホットした直後のNGと、「OK、飯にしよう」という、ディレクターのあきらめたような、皮肉な言葉がおかしい。

【Alka-Seltzer“Mama Miya”】

Alka-Seltzer“Mama Miya”
アートディレクター:Roy Grace
コピーライター:Evan Stark
プロダクション:Zieff Films
ディレクター:Howard Zieff
エージェンシー:Doyle Dane Bernbach
(1971 NY ADC Gold Medal)

(文=金子秀之/2003年10月)

Alka-Selzer「Mama Miya」(1971年)
第68回:Roy Graceを偲ぶ(その6)

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。