第55回:経済性を訴求したクルマの広告(その1)

2007.09.01 エッセイ

第55回:経済性を訴求したクルマの広告(その1)

クルマの広告で“経済性”を訴求したものは非常に少ない。ということは、購買動機として、重要なポイントになっていないようだ。ハイブリッドカーならば別だろうが、クルマは乗ってしまえば力のあるほうが楽だし、気持ちがよいからだろう。
今回は、比較的めずらしい、経済性を謳うクルマの広告を紹介する。

“言い出しっぺ”の勝ち

クルマが1台あるだけ。そして、コピーが1本あるだけ。コピーも「Why gas station sell food.」(ガソリンスタンドで食べ物を売る理由)という、なんともクルマに関係なさそうな内容である。趣旨はなんだろう?

ホンダ「シビック」は燃費がいいので、満タンにすると、次のスタンドまで何時間も走ることができる。すると、ドライバーはお腹がすく。だからスタンドで食べ物を売っているのだという。ここまで聞くと「なるほど」と思う。
ところで、アメリカでは、たいていのガソリンスタンドで食べ物を売っている。軽いスナックだけのところもあれば、しっかり料理を食べさせるところもある。

とすると、なにもシビックのためだけに食べ物を売っているワケではないじゃないか? と言いたくなる。

だが、ここが広告。ホンダが真っ先にこれを取り上げると、ガソリンスタンドの飲食物販売が、まるでホンダのためにあるような印象を与えてしまう。これがこの広告の狙いのようだ。

人は誰もが思っていることでも、最初に口に出せばその人の発言として残る、ということがある。あれに似た巧みな手法である。

(文=金子秀之/2003年7月)

Honda Civic Hatchback/USA

クリエイティブディレクター:Jin Yarbrough
アートディレクター:Mas Yamashita
コピーライター:Tom Dunsmuir
エージェンシー:Rubin Postaer and Associates/Santa Monica

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。