第17回:『三菱、シンガポールでの広告』

2007.09.01 エッセイ

第17回:『三菱、シンガポールでの広告』

三菱自動車「VAN-L300」のシンガポールでの広告を紹介します。

バランス感覚の優れた力持ち

テレビのドキュメンタリーなどで、たまに見かける光景だ。筆者もかつて、香港と中国の国境近くで、こんなふうに荷物を運ぶ人を目にしたことがある。自分の体の何倍もある荷物を背負ったり、あるいは自転車に載せたりして、もくもくと運ぶ。どう見ても重そうで、肉体的にもツラいはずだし、倒れないようにバランスをとるのも難しいだろう。筆者はこんな光景を見て、「中国人の伝統芸」が成せる技だと思った。

この広告は、「Mitsubishi VAN-L300」を買いなさい、と訴えている。クルマに載せれば、人が背負うよりずっと簡単に荷物を輸送できる。わかりやすい広告だ。
でも、鶏が入っている籠を見ていただきたい。なかに仕切があって3段にわかれており、1つの籠でなるべく多くの鶏を運べるよう、工夫と技術が凝らされている。これも、中国の文化財といえないだろうか。クルマに載せれば運ぶのはラクだし、本人達もそうありたいと願っているかもしれないが、伝統芸や文化財がなくなるのは、ちょっと寂しいような気もする。

しかし、道行く行商人(?)に目を付けるとは、いい広告だ。クルマを買ってもらって、この人達にもラクをしてもらったほうが、いいか。

Mitsubishi L300 Van/Singapore
アートディレクター:Richard Cooping
コピーライター:Rodd Chant
フォトグラファー:Kar Wai
エージェンシー:BBDO Singapore

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。