第8回:『世界の交通安全キャンペーン その1』

2007.09.01 エッセイ

第8回:『世界の交通安全キャンペーン その1』

交通事故防止のためのキャンペーンは、1970年からいろいろな国で実施されている。スピードの出し過ぎ、車間距離の確保、シートベルトの着用、飲酒運転の禁止など、訴求ポイントを絞って分かりやすくつくられるのが特徴だ。キャンペーンは、その国の交通安全協会などが主催することが多いが、ボルボやメルセデスベンツなど、クルマメーカー自体が行う場合もある。優秀な作品は数多いが、シートベルトの必要性を訴えたイギリスの作品と、交通事故数が世界トップである、ブラジルの作品を紹介する。

Central Office Information “Miss Carol”/UK

これはシートベルトの安全性を訴える、イギリスのキャンペーン広告。ロンドンの福祉関係の番組で司会を務めるジミー・ザビル氏が、実際に交通事故にあった少女が入院する、病院を訪ねてインタビューしたもの。彼女の体験から、シートベルト着用の必要性を訴える。
衝突時、フロントガラスを突き破ってクルマの外に放り出された少女の、いく針も縫った顔は無惨だ。しかし、彼女の傷が痛々しければ痛々しいほど、シートベルト着用の重要性を、ひしひしと感じる。
このキャンペーンが始まってから2年で、イギリスでのシートベルト着用率が、15%から35%に上昇したとのこと。もし、同じCMを日本で放送したら、いったいどんな反響がかえってくるのだろうか、興味深い。

以下はCMの内容

ザビル:人生を学ぶには、2つの方法があります。1つは、人の話をよく聞くこと。もう1つは、自分で経験することです。クルマに乗るときは、ドアをパタンと閉め、シートベルトをカチンと締める習慣を付けましょう。なぜなら、人生には経験しないほうがいいことがあるからです。例えば、クルマのフロントガラスに頭をぶつけることは、楽しいことではありません。私の小さな友達、キャロルさんが、2 〜3日前このような事故にあいました。
キャロルさんは、今15歳。あまりしゃべりたくないそうなので、こちらから質問します。
キャロルさん、事故にあったとき、シートベルトをしていましたか?

キャロル:いいえ
ザビル:着用していなかったのですか。これからは、シートベルトがあるかないか、確かめますか?
キャロル:はい
ザビル:確かめるだけでなく、着用しますか?
キャロル:はい
ザビル:ではこれからあなたは、「パタン、カチン」運動の一員になりますね?
キャロル:はい
ザビル:キャロルさんは、当分の間この病院にお世話になります。みなさんも、クルマに乗るといは、必ずドアをパタン、シートベルトをカチンと締めましょう。

Central Office Information“Miss Carol”/UK
エージェンシー:Young & Rubicam / UK
ディレクター:John Gibson
フォトグラファー:Tony Spratling
プロダクション:Filmfair(1973 Cannes Silver Lion)

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金子 秀之

金子 秀之

早稲田大学商学部卒業。資生堂のアートディレクターとして前田美波里のサマーキャンペーンを担当。1973年博報堂のクリエイティブ・ディレクターとして、サントリーの「ブランディ水で割ったらアメリカン」キャンペーンを手がける。1993年(有)クエスターを設立。広告製作及び海外広告の紹介をして現在にいたる。