かしこく・ひろく・たくましく 名は体を表す “スペーシア”の進化と真価 NEW SPACIA CUSTOM DEBUT

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高い経済性と利便性を併せ持ち、幅広いユーザーから支持されている軽ハイトワゴン。
なかでも今注目を集めているのが、この夏に大幅な改良を受けた「スズキ・スペーシア」だ。
上質でスポーティーな「スペーシア カスタム」を街に連れ出し、自ら「軽ハイトワゴンの本命」と豪語するその実力を確かめた。

文=サトータケシ/写真=荒川正幸

INTRODUCTION
ライバルとの切磋琢磨が促す進化

いま、日本の自動車市場で最もホットなカテゴリーが、“軽ハイトワゴン”と呼ばれる背の高い軽自動車だ。販売台数が多いことから自動車メーカー各社の開発競争もし烈で、日進月歩の勢いで性能も向上している。

ユーザーにとっては好ましい環境にあるといえるが、そのなかで注目に値するのが2020年8月にマイナーチェンジを受けたスズキの「スペーシア/スペーシア カスタム/スペーシア ギア」のスペーシア3兄弟。単なる小変更にとどまらず、安全装備や運転支援装置が大幅に進化しているのだ。

今回は「スズキ・スペーシア カスタム ハイブリッドXSターボ」に試乗して、その進化の度合いをチェックした。

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広い車内と細部まで考えられた機能性

運転席に座ってまず感じるのは、天井の高さやフロントガラスの面積の広さに起因する開放感、そして見晴らしのよさだ。これは感覚的なものではなく、ドライバーの斜め前方の柱(いわゆるAピラー)がガラスをはさんだ形状になっていることから、死角が非常に少なくなっているのだ。周囲をしっかり確認できることが大事であるという、クルマの安全性の基本をあらためてかみしめる。

また、ごてごてと飾り立てるのではなく、必要なスイッチ類を適正な場所に配置したクリーンなインテリアの設計にも好感を持つ。高価に見せようとするのではなく、あくまでユーザーの使いやすさに重点を置いたレイアウトでありデザインなのだ。ロジックがすっきりとしているから、ストレスなく操作できる。

続いて、後席に腰掛けてみる。「名は体を表す」を地でいくスペーシア3兄弟は、余裕のある室内スペースに特徴があるからだ。パワースライドドアを開けると、大きな開口部が現れる。乗り込みが容易なのは低床フロアによってステップが低くなっているからで、これならお年寄りや小さなお子さんでも気を使わずに乗り降りができそうだ。

後席の広さは圧倒的で、最大で210mmもスライドするシートを最後部まで下げれば、身長180cmの筆者でも楽に足を組むことができる。天井の高さといい、足もとの広さといい、大人2名がくつろぎながら移動できる後席だ。また、天井を見上げるとスリムサーキュレーターが備わることが確認できる。室内の空気を効率よく循環させることで室温を均一に保つこの装置は、あまり目立たないけれど快適性アップという大きな役割を担っている。

このほかにも、助手席の可倒機構など簡単に操作できるシートアレンジによって、多彩な使い方が可能。フロントまわりにはフタの付いた収納も多く、細部までユーザーの使い勝手を考えてつくり込まれているという印象を受けた。

  • 運転席に座ってまず驚かされるのが、上下左右の視野の広さ。分かりやすいスイッチ類のレイアウトも「スペーシア」の美点だ。
  • 前席はベンチ式で左右のウォークスルーが可能。アームレストのほか、助⼿席のシート下にも収納が備わる。
  • 後席にはゆったり⾜を組めるほどの広さを確保。左右独⽴してのスライド調整も可能で、4名乗⾞しつつ荷室を拡張することもできる。
  • 「スペーシア」の後席は、低いフロア⾼と⼤きく開くスライドドアによる、乗り降りのしやすさも特徴となっている。
  • スリムサーキュレーターや前席シートヒーター、⽇焼けを防ぐUV カットガラスなど、快適性を⾼める装備は充実している。
  • 後席はもちろん、助⼿席も倒せるのが「スペーシア」の特徴。“4 名フル乗⾞”から“1 名乗⾞+⼤荷物”まで、フレキシブルに使えるのだ。
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電気の力で低燃費と力強い走りを実現

室内の広さと実用性の高さを確認したところで、試乗をスタートする。

さっそく、最初の交差点で発見があった。信号が青に変わり、ブレーキペダルから足を離すと、するすると前進を始めた。いわゆるクリープ走行の状態だが、エンジンではなくモーターの力で走るEV走行になっていたのだ。

解説すると、スペーシア3兄弟のパワートレインはすべてハイブリッドになっている。ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター=モーター機能付き発電機)を搭載することで、コストを抑えながら省燃費を実現する仕組みで、マイルドハイブリッドと呼ばれるタイプだ。

その仕組みを簡単に説明すると、ISGは減速時にはジェネレーター(発電機)として機能する。たとえば減速時、あるいは坂道でエンジンブレーキを使いながら下るような場面で発電を行い、そこで生まれた電力を大容量のリチウムイオンバッテリーに蓄える。そして発進時や加速時には、その電力でモーターを駆動するのだ。

もちろん、クリープ時に必ずしもEV走行になるわけではない。アイドリングストップからの再発進時、蓄えた電力に余裕がある時のみに限られるのだが、そもそもこのISGを用いたマイルドハイブリッドで大事なのは、EV走行することではない。エンジンとモーターが力を合わせることで効率を上げて省燃費を実現することにあるのだ。

また、ある程度回転を上げないと力を発揮しないエンジンの弱点を、電流が流れた瞬間に最大の力を発生させられるモーターが補うこのシステムは、パワートレインのゆとりにも貢献する。その効果は、力強くて滑らかな発進加速や、高速の合流での余裕ある加速で確認することができた。

ハンドルのスポーク部分に備わる「PWR」のスイッチを押すと、CVTとエンジンの制御がパワフルな設定に移行すると同時に、ISGもより積極的に走りに介入し、エンジンをモーターアシストするようになる。その効果ははっきりと体感できるから、高速道路の登り勾配などで右手の親指がこのスイッチを押す機会が何度かあった。

  • モーターの⼒も借りて、軽やかに⾛る「スペーシア カスタム ハイブリッドXS ターボ」。ストップ&ゴーの多い街なかでも、痛痒(つうよう)はない。
  • マイルドハイブリッド機構は「スベーシア」の全⾞に搭載される。どのグレードのどの駆動⽅式を選んでも、電動パワートレインの恩恵を受けられるのだ。
  • バッテリーに⼗分な電気がたまっている状態なら、「スペーシア」のマイルドハイブリッド機構はモーターのみでクリープ⾛⾏が可能だ。
  • モーターアシストやブレーキエネルギー回⽣機構の作動状態は、メーターパネル下部のディスプレイで確認できる。
  • ⾃然吸気エンジン⾞でも痛痒なく⾛るが、モアパワーを求める向きにはターボがおすすめ。ただし「カスタム」と「ギア」が対象。
  • 「スペーシア」の軽快な⾛りは実燃費にも貢献。アクセルを踏み込む量が減れば、そのぶんガソリンの消費を抑えられるからだ。
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カンタン操作で柔軟に使える
全車速追従機能付きACC

高速道路では、スペーシア3兄弟に新たに採用された全車速追従機能付きのアダプティプクルーズコントロール(ACC)を試した。走行中、フロントガラスのヘッドアップディスプレイに制限速度が表示されて、そういえば3年前にスペーシアがデビューした時に、軽自動車として初めてフロントガラス投影式のヘッドアップディスプレイが採用されたことを思い出す。

このACCの好ましいところは、第一にインターフェイスが優れていることだ。この手のシステムは、上手に機能することと同じくらい、使い勝手のよさが大事になってくる。その点、スペーシアのシステムは積極的に使いたくなるものだった。

例えば、その操作はハンドルのスポーク部分に備わるスイッチを介して右手親指で操作するかたちとなっており、システムの起動、前車追従/一定速走行の開始、上限速度の設定をハンドルから手を離さずに行えるのだ。作動状況はメーターパネルとヘッドアップディスプレイに表示されるから、視線もさほど動かさずに済む。何度か試すうちに、直感で操作できるようになっていた。

追従する時の加減速の滑らかさも、十分に満足できるものだった。隣の車線からの割り込みがあっても、それを早期に察知して柔軟に対応してくれるから、安心して追従走行を続けられる。車線からの逸脱や車両のふらつきを知らせる機能も適切に作動するから、長距離のドライブや長時間の運転を、楽しく、安全にこなすことができると感じた。

もうひとつ、スペーシアのACCの特徴は、全車速対応であることだ。ある速度より低くなるとACCが機能しなくなる車種もあるけれど、スペーシアは0km/h(停止)までしっかりと追従。停止してから2秒は、ブレーキを踏まずとも止まった状態をキープしてくれる。だから渋滞でのノロノロ運転といった場面でも使いやすい。

加えて高速道路でありがたかったのが、ハイビームアシストだった。対向車や先行車両を認識するとロービームになり、周囲が暗くなるとハイビームに戻る。照明の少ない暗い高速道路では、この仕組みのおかげで安心して走ることができた。

  • ACCは車両の加減速を自動でシステムがコントロールし、一定速ないし前走車に追従して走行する機能。長距離ドライブでの疲労を大きく軽減してくれる。
  • 「スペーシア」はステアリングホイールの右スポークにコントローラーをレイアウト。親指ひとつで、ハンドルから手を離さずに操作できる。
  • ACCの作動状態はメーターパネル内の右側のディスプレイに表示される。
  • オプションのヘッドアップディスプレイを装着すれば、フロントウィンドウでもシステムの作動状態を確認できる。
  • ACCは「スペーシア カスタム/ギア」では全車標準装備。標準車の「スペーシア」では「ハイブリッドX」にオプションで用意される。
  • 「スペーシア」にはハイビームアシストが標準装備されており、ハイビームでの走行中に対向車や先行車を検知すると、自動でロービームに切り替わる。
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ユーザー層の広い軽乗用車だからこそ

ACCと並ぶ安全・運転支援装置のトピックは、スペーシアの全車に夜間の歩行者も認識するデュアルカメラブレーキサポートが標準装備されることだ。

危険を察知すると、まずは音とメーターパネルの表示で注意を促す。さらに危険が迫ると、自動で軽いブレーキ、ブレーキ踏力をアシスト、そして自動緊急ブレーキという順序で危険を回避する。万が一衝突を回避できなくても、速度を下げることで被害を低減できる仕組みだ。

アクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる急発進を回避する機能も備わる。スペーシア3兄弟で特筆すべきは、後方、つまりバックする時の安全確保にも注力していることだ。リアのバンパーには4つの超音波センサーが備わり、これが後方の障害物との距離を計測する。そして障害物に接近すると、4段階のブザー音で知らせてくれると同時に、衝突が避けられないと判断すると自動でブレーキが作動する。

また、後方に障害物があるにもかかわらずシフトを「R(リバース)」に入れてアクセルペダルを強く踏み込むと、エンジン出力を自動的に抑えて急な後退を避ける、後方誤発進抑制機能も備わる。

軽自動車は、運転免許取り立てのビギナーからベテランまで、幅広い年齢層、さまざまな運転スキルの方が運転する可能性がある乗り物である。これだけの安全・運転支援装置が備わるのは、ユーザー本人だけでなくご家族にとっても安心の要素になるはずだ。

ISGによる省燃費性能や力強い動力性能に加えて、進んだ安全・運転支援装置が備わったことで、スペーシア3兄弟の競争力は大幅にアップしたと言っていいだろう。

  • 予防安全装置や運転支援システムのセンサーを担う、フロントウィンドウのデュアルカメラ。夜間の歩行者も検知可能な性能を持つ。
  • 自動緊急ブレーキや車線逸脱警報など、さまざまな機能が装備された「スペーシア」。シフトミスによる暴走を防ぐ誤発進抑制制御は後進時にも作動する。
  • クルマの周辺状況を確認できる、360°カメラの機能も充実。立体表示の「3Dビュー」機能を使えば、小さな障害物の有無も直感的に理解できる。
  • オプションで、交通標識の情報をヘッドアップディスプレイに表示する「標識認識機能」も用意。標識を見落としがちな、初めて行く道などで重宝する。
  • 幅広いユーザーを満足させるという意味では、豊富なカラーバリエーションも「スペーシア」の美点。「カスタム」にも全7色11パターンの外装色が用意される。
  • 広く機能的な車内空間と、省燃費なパワートレイン、充実した予防安全装備を備えた「スペーシア」は、幅広いユーザーにすすめられる軽ハイトワゴンだった。

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