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生粋のスポーツセダン「日産スカイライン400R」 生粋のスポーツセダン「日産スカイライン400R」

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走りのよさを身上とする、いまや貴重な国産スポーツセダン「日産スカイライン」。
なかでも熱く支持されているのが、よりパフォーマンスに磨きをかけた「400R」だ。
決してトレンドの真ん中にあるとはいえないこのクルマが
私たちクルマ好きの心をとらえて離さないのはなぜか?
世相におもねらない、日産伝統のスポーツセダンの魅力に迫った。

文=島下泰久/写真=郡大二郎

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時流に飲まれない
人気の秘訣を探る

2019年7月に行われた大規模マイナーチェンジ以降、日産スカイラインは人気を明らかに盛り返した。とりわけ新設定のトップパフォーマンスグレード、最高出力405PSを発生するV型6気筒3リッターターボエンジンを積む400Rの販売比率は想定以上に高く、しかもユーザーの年齢層も若めだというから興味を引く。

正直なところ4ドアセダン、しかもスポーツグレードというのは今、メインストリームにあるジャンルではない。それなのに、しっかりとユーザーのハートをつかんでいるとすれば、そこには確固たる理由があるに違いない。

そんなスカイラインが2020年9月に再度、一部改良を受けた。今回は、その試乗の機会に、あらためて人気の理由を探ってみることにした。

対面したのは朝の都心だった。見慣れたクルマのはずなのに新鮮に感じられたのは、試乗車が今回の一部改良で設定された新色の「スレートグレー」をまとっていたからだ。一見ソリッドかと思いきや、近づいて見るとパールメタリックの密度の濃さゆえにそう見えていたのだと分かる。実際、日が当たるとハイライトが強調され、陰の部分とのコントラストが強く表れて表情がグッと豊かになる。派手過ぎず、けれど埋没しないとてもいい色だ。

しばらく眺めるうちに、そんな新色が際立つのは、美しいボディーラインのおかげだとあらためて気づかされた。セダンは衣服に例えればジャケット、あるいはスーツだというのが私の持論。様式がある程度決まっているからこそセンスが問われるし、立体としての造形力が浮き彫りになる。FRレイアウトならではの躍動的なプロポーションを繊細な美しさでまとめたスカイライン400Rの姿は、まさに大人のためのスポーツセダンとしての魅力を発散しているように思える。

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エンジンと足まわりに
みる高い完成度

車内に乗り込むと、サポート性に優れた本革シートはやはり新設定のホワイトでまとめられていて、以前から使われているダイヤキルティングと相まって上質な雰囲気をつくり上げている。じわり気分がアガッてきたところで、そろそろ走りだすことにしよう。

高速道路でのスカイライン400Rの走りは、やはりエンジン=「VR30DDTT」ユニットの存在感が大きい。「最高出力405PS」「スカイライン史上最強」などと聞くと身構えてしまうが、このエンジンは実際には非常に扱いやすい。大きいのは、発進直後の低回転域からトルクがしっかり出ていてターボラグをまったく感じさせないこと。アクセルペダルの微妙なオン/オフにしっかり追従してくれるから、朝の断続的な渋滞の中でも、速度の微調整がとてもやりやすいのである。

快適性のレベルも高い。ドイツのライバルたちのようにタイヤを路面に強引なまでに押しつけるのとは違って、乗り味はとても軽やかな印象。スタビリティーはしっかりしているのにレスポンスに軽快感があり、乗り心地にも余計な重々しさが感じられないのだ。

スカイライン自慢の「DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)」は、直進時にはしっかりとした中立感を演出し、手のひらに確かな安心感を伝えてくる。目を見張るのが、わだちや路面のうねりでステアリングをとられることがない点で、これが至極快適な、長距離でも疲れ知らずの巡航性能につながっている。

そうやって快適な高速巡航を味わっているうちに、待望のワインディングロードへと到着した。せっかくなので、センターコンソール上のスイッチでドライブモードを「SPORT+」に切り替えて走りだすことにする。

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相反する2つの特性を
実現する技術

アクセルペダルを踏み込んでいくと、VR30DDTTユニットは間髪入れずに反応して即座に回転を高めていく。このレスポンスが本当に小気味よい。そして、さらにそのまま踏み続ければ、パワーカーブをリニアに立ち上げながらトップエンドまで密度濃く、よどみなく一気に回り切るのである。うん、気持ちいい!

通常、ターボエンジンでパワーアップを図るためにはタービン/コンプレッサーを大径化するのが常道だ。しかし、これは回転数が低い領域でのレスポンスとの引き換えとなってしまう。いわゆるターボラグが増大してしまうのだ。

そこでVR30DDTTユニットは、実は最高出力306PSの「GT(V6ターボ)」系のエンジンと同じ、小さめのターボチャージャー/コンプレッサーを用いている。こうすることで過給が速やかに立ち上がり、低速域から高速域までアクセルのオン/オフにリニアに反応するエンジンに仕上げているわけだが、きっとそう書くと、じゃあ一体どうやってパワーを高めているのかといぶかしく思われるかもしれない。

そのカギが新たに装備したターボ回転センサー。これによってターボチャージャーを、マージンを残し過ぎることなく回転限界目いっぱいまで安全に使い切ることが可能になり、結果としてプラス約100PSの高出力を獲得できているのだ。つまり切れ味鋭いレスポンスと、胸のすく高出力化を両立しているのである。

こういう特性だから、動力性能は極めて高いレベルにあるにもかかわらず、決してドライバーを恐れさせるものではなく、むしろ完全に手の内に置ける喜びすらもたらしてくれるのが、VR30DDTTユニットの最大の美点である。まさに、意のままに操れてこそのスポーツセダンというわけだ。

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確かに感じられる
“セダンならばこそ”の魅力

SPORT+モードで適度に手応えを増したステアリングを切り込むと、フットワークもまた高い一体感を示す。レスポンスは軽やかなのだが、決してシャープさばかりを強調しているわけではなく、こちらもまた、まさに「意のままに操れる」という感覚なのは、電子制御ショックアブソーバーを用いた「インテリジェント ダイナミックサスペンション」の恩恵でもあるのだろう。走行状況に応じてリアルタイムに4輪の減衰力を変化させることで、俊敏なレスポンスとしっかりとした安定性を両立させているのである。

さらに言えば、やはりセダンというボディー形態のなせる業でもあるかもしれない。そもそも重心が低く、スカイラインのようにワイドトレッドでもあれば、姿勢変化はおのずと抑制され、4輪の接地性も安定するのは自明のこと。おかげで400PSオーバーのFRというイメージから想像する以上にトラクション性能もスタビリティーも高いレベルにあるから、思い切りアクセルペダルを踏み込む爽快感を心ゆくまで味わえるのだ。

そう、絶対的な動力性能やハンドリング性能などは、今どきSUVなど他のボディー形態でもなんら見劣りするわけではない。けれどセダンには、それを素性のよさによって実現しているからこそ可能になった心地よい走りの世界が、やはり厳然としてある。

スカイライン400Rは、それを土台にこの絶品のエンジンを思い切り楽しませてくれるスポーツセダンだ。走りを愛する人が選んでいるというのも納得。間違いなく今、乗る意味のある一台だと、今回あらためて実感することとなったのだ。