シボレー・コルベットクーペ(4AT)【試乗速報】
デキが良すぎて不安になる 2005.03.10 試乗記 シボレー・コルベットクーペ(4AT) ……715.0万円 アメリカンな味わいはそのまま、“超”がつく高性能と、快適性や使い勝手を両立したという、新しい「シボレー・コルベット」。生まれ変わったアメリカンスポーツの代表格に、『webCG』記者が乗った。アメリカンはそのままに
ものすごい性能(の片鱗)を、誰もが乗ってすぐに体感できるクルマ。通称“C6”と呼ばれる、新型「シボレー・コルベット」をヒトコトでいうと、こんな感じだ。ニューコルベットは、アメリカン・パフォーマンスカーの象徴でありつつ、国際的な競争力をもち、ベーシックモデルでさえ先代のハイパフォーマンス版「Z06」を超える性能を有するというが、その言葉にも嘘はなさそうである。
“アメリカン・パフォーマンスカーの象徴”であることは一目瞭然。リトラクタブルヘッドランプこそないものの、ロングノーズ&ショートデッキフォルム、リアへいくほど厚みをますスタイリング、丸形リアコンビネーションランプなどの象徴的なアイコンをちりばめたその姿は、コルベット以外の何者でもない。
デザイン的にはコルベットでも、パッケージングは大きく変わった。ニューモデルながらボディサイズは先代より小さく、全長が100mm、全幅は10mm狭い。一方、ホイールベースは30mm延ばされた。前後オーバーハングを短縮してキャビンスペースを広く採る、現代的なパッケージングによって、コルベットらしいカタチはそのままに、広い室内や自由度の高いシートポジションを獲得した。インテリアの質感を高めたことも自慢。精緻ではないけれど、アメ車っぽいラフな印象はほとんどない。日本仕様は、電動調節式レザーシート(ヒーター付き)やBOSE製オーディオ、DVDナビゲーションシステムなどを標準で備え、装備品も現代のプレミアムスポーツにふさわしい仕様になっている。
めちゃくちゃ速い
カタチだけでなく、ボディやパワートレインの成り立ちも、コルベットの文法を踏襲する。シャシーは「キャデラックXLR」と同様、ハイドロフォームの鋼管フレームに、複合素材を組み合わせたもので、各部の剛性アップと軽量化が施された。フロントにエンジン、リアにトランスミッションをマウントし、前後重量配分は51:49を実現したという。
パワーソースは、6リッターに排気量を拡大したV型8気筒OHV。軽量コンパクト&低重心で運動性能に寄与するのみならず、ボンネットを低くできるから視界も広い。高回転域は弱いが、もとよりアメリカンスポーツの醍醐味は極太トルク。ATは4段だが、最大55.6kgmに達するトルクをいつでも、素晴らしいレスポンスで引き出せるのだから、コルベットの場合、ギアを落とす作業がバカバカしい。
実際、めちゃくちゃ速い。6段MT仕様の場合、静止から100km/hまでたったの4.2秒という、欧州スーパースポーツと肩を並べる実力は本物。C6コルベットはさらに、その性能を直接的に体感させない、文化的なマナー(?)を身につけていた。高められたボディ剛性や、アクティブサスペンション「マグネティック・セレブ・ライド・コントロール」が車両をフラット&安定に保つおかげか、タイヤが鳴くほどのフル加速でも不安を覚えることはなく、ヘッドアップディスプレイに表示される速度が、ただ猛烈な勢いで伸びていく。低音成分の濃い、腹の底から唸るようなエンジン音はするけれど、ボリュームは小さめ。“適度な演出”にとどまっている。
径の大きいステアリングホイールや、重めのハンドリングに“アメ車”を運転していることを実感したが、それも適度なもの。細腕の女性でも、「コルベットに乗りたい!」モチベーションがあれば、運転の障壁になることはないと思う。
欧州車なら、1000万円超級の性能、普段づかいもこなすマナー、誰が見てもスポーツカーなスタイルと由緒あるブランドをもつC6コルベット。695万円からの価格設定は、かなりのバーゲンプライスだ。一方、ちょっとだけ不満もある。特殊なクルマをのぞけば、戦闘機やレースカーのように、性能だけを前面に押し出したスポーツカーも今は昔。性能に加えて社会性(?)を身につける段階も過ぎ、今はその気にさせる演出が、たぶん大事。もちろん、コルベットもスペシャル感バリバリではあるけれど、1つ2つ突出した演出で、「オレにしか運転できないゼ!」みたいな演出があっても、よかった気がする。
ワガママなんですけど、ね。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2005年3月)
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