日産ウイングロード15RXエアロ(FF/CVT)/18RXエアロ(FF/CVT)【試乗記】
走るより、使え! 2005.12.06 試乗記 日産ウイングロード15RXエアロ(FF/CVT)/18RXエアロ(FF/CVT) ……230万3700円/250万3200円 2005年11月14日、日産のコンパクトワゴン「ウイングロード」が3代目に進化した。若者が求める使えるワゴンとは?エアロパーツで飾ったスポーティモデルに試乗した。カッコかわいい
新型「ウイングロード」に興味を持った人は、ぜひともカタログを手に入れることをおすすめする。作りがオモシロイからだ。いわゆる両A面で、一方はロジカルに機能を語り、もう一方はビジュアルに楽しさを伝えている。ビジュアルサイドは上半分だけのページもある。パッケージングやユーティリティが凝っている、といったところ。で、それは実車にも当てはまる。
ウイングロードは日産がいうところのBプラットフォームを使う。「マーチ」でデビューしたこのプラットフォームも、ルノーを含めれば7作目。効率がいい。でもワゴンボディはウイングロードが初めてだ。
そのフォルムは、旧世代の人間が思い描くワゴンとはちょっと違う。横から見るとノーズが短く、キャビンは長くて背が高いミニバン風。フロントフェンダーやサイドウインドウのラインは湘南の海のように波打っていて、アクセントをつけている。スタイリッシュとかキュートとかより、“カッコかわいい”とかいうノリに近い。その意味では実に今っぽい。
遊び上手な人が作った
インパネはシンプルなラインにシルバーのアクセントを組み合わせて、クールな雰囲気。それでいて収納スペースはたくさんある。ドライビングポジションは高めで見はらし良好。ステアリングホイールは少し上向きで、パーキングブレーキはペダル式だ。ワゴンとミニバンの中間という感じ。いまの若い人は、こういう部分にはスポーティさを求めないのだろうか?
フロントシートはクッションの傾きがなくて、厚みもいまひとつ。ちょこんと座る感じが「ノート」に似ている。シートバックはハリもサポートもあるが、フルフラットを考えたためか、高さはほどほど。もう少しリラックスして座れるイスが欲しい、というのはオジサンゆえの感想なのかもしれない。
似たような座り心地のリアシートは、左右別々にリクライニングでき、一体でスライドもする。いちばん後ろにセットすると、ひざの前には約20センチものスペースが生まれる。もちろんシートバックは前に倒すことが可能。助手席も水平に畳める。しかもこれらが、ラゲッジスペースの壁にあるレバーで行える。いちいち前に回らなくてもフラットにできるのが便利だ。
ラゲッジスペースは、「エクストレイル」でおなじみのウォッシャブルボード仕上げ。ちょっと上げ底のフロアの下には、深い収納スペースがあるほか、手前を引き上げるとベンチが出現する。いい道具というのは、見ただけでそれを使いこなしているシーンが想像できるものだけれど、ウイングロードのラゲッジスペースは、まさにそれ。遊び上手な人が設計したのだろう。
ノリのよさで勝負
今回乗ったのは15RXエアロと18RXエアロ。ふたつのエンジンは、組み合わせられるCVTを含めて、「ノート」や「ティーダ」などでおなじみだ。無段変速機ならではのなめらかな加速感、人間の感性にあった自然な反応は、同じパワートレインを持つ他の日産車と同じで、とても心地よい。
18RXの余裕はたしかに魅力だけれど、15RXでもアクセルをちゃんと踏めば不満のないダッシュが手に入る。18RXのCVTはマニュアルモードがあるが、切り替えスイッチがインパネ右下にあるので選びにくいし、一度リバースに入れたりするとオートに戻ってしまうのは不便。シフトレバーで切り替えられるようにしてほしい。
サスペンションはエンジンにあわせてチューニングを変えてあり、ホイール径やタイヤの太さも違う。ロングホイールベースにソフトなスプリングとしっとり動くダンパーを組み合わせた15RXの乗り心地は、基本的にはフラットで、ゆったりした揺れをおりまぜた、ノートに近い感触。このクラスの日本車としては異例になごめる。ハンドリングも、鋭すぎない反応で向きを変えたあと、粘り腰でコーナーをクリアしていくあたり、通じる部分がある。
続けて18RXに試乗する。乗り心地は少し硬めになるけれど不快ではなく、身のこなしはグッとすばやくなり、ロールが抑えられるので、自然とペースが上がる。やがてフロントが外へふくらみ始めるけれど、そこでアクセルを離してもリアがズルッとはいかない。安定感と安心感をあわせ持っている。
18RXのほうがウイングロードのコンセプトにあっているとは思ったが、そうはいっても、峠通いをしたくなるようなクルマでないことはたしか。ガンガン走れることよりも、ガンガン使えることのほうがウイングロードのアピールポイントなのだから。デザインもカッコよさよりノリのよさで勝負、みたいなところがあるし。いまの若い人のクルマに対する想いと、そこからかかけ離れていく自分の想いとのギャップを、痛感した1台でもあった。
(文=森口将之/写真=荒川正幸/2005年12月)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車は「シトロエンGS」と「ルノー・アヴァンタイム」。