スバルR1S(FF/CVT)/スバルR2 Refi(FF/CVT)【試乗記】
別れは前向きに 2005.11.30 試乗記 スバルR1S(FF/CVT)/スバルR2 Refi(FF/CVT) ……153万3000円/112万3500円 スバルの軽自動車「R1」「R2」がマイナーチェンジを受けた。兄弟車ではあるが、R2のフロントマスクが変わったことで、性格の違いが際立った。それだけでなく、改良の方向性には明確な差が表れている。もう少し売れてほしい
残念なことに、街で「R1」に出会うことはめったにない。たまに見かけても、だいたいはよく見るとドアが4枚ある。「R2」である。NAVIでR1の長期リポートを担当する身としては、口惜しい限りなのだ。現在の日本車の中でトップレベルのスタイルを持つと思うだけに、なんとかもう少し売れてほしい。
R2にしたって、好調というわけではない。一般的な軽自動車の使われ方からすると、デザインは購入のモチベーションにはなりにくいらしいのだ。相変わらず、スバルの軽自動車は「プレオ」が稼ぎ頭なのである。そんな状況を打開するために、R1/R2のマイナーチェンジが行われた。商品力強化のためにとられた方策は、2台でまったく別のものだった。
「スーパースモール」の名に見合う
R1には、待望のパワーアップ版が追加された。スーパーチャージャーを搭載したR1「S」である。これまでにラインナップされていたのは4気筒NAのDOHCとSOHCで、DOHCでも54psという非力ぶりだった。組み合わされるトランスミッションはCVTだけで、動力性能にはキビシいものがあった。
ようやく過給が施され、軽のハイパワーの限界である64psを得たわけだ。さらに、トランスミッションは7段スポーツシフト付きのCVTが組み合わされる。NAVI長期リポート車のR1とこのR1Sで、静止状態からアクセルをベタ踏みにした加速を比べてみた。NA版ではふわーっとした立ち上がりだが、R1Sでは背中がシートに押し付けられる感じが明らかに強まった。セレクトレバーの脇の「sport」ボタンを押すと、シフトスケジュールが変更されてより高い回転数を使うことができる。
レバーを奥に倒せばマニュアルモードになり、特に減速時には大きなアドバンテージが得られる。ちょっとスポーティに走ろうとすると、NAではアクセルとブレーキを交互に全力で踏み込むしかなかったのが、繊細な操作ができるようになったのは大きい。MTが装備されればもっとうれしいが、無理に付けようとすると床からシフトレバーが生える形になってしまうらしい。まずは、やっと「スーパースモール」の名に見合うようになったことを歓迎しよう。
万人受けしそうな顔
R1が「スペシャルティ」指向を強めたのに対し、R2の戦略は「普通化」である。スバルのアイデンティティとして浸透しつつあった「スプリットウィンググリル」をあっさり捨て、万人受けしそうなクリーンな顔に生まれ変わった。趣味性の強いR1から離れ、平凡であっても安心と静穏が保証される道を選んだのだ。ビジュアルをたびたび変えるのは得策ではないような気もするのだが、販売の現場からすれば期待された変更なのだろうとは思う。
また、新たに特別仕様車として用意されたのが、女性に向けて開発された「Refi」である。専用の外装色やシートという見た目だけでなく、「美容と健康」に配慮したことがウリとなっている。フロントガラスはUVカット仕様で、エアコンからはビタミンCが放出され、シートには肌に優しいタンパク質が含まれる。効果のほどはわからないが、女性に響く要素なのは確かなのだろう。
名前も形も似ているものの、R1とR2は別々の道を歩み始めた。もちろんこれは喧嘩別れではない。方向性の違いがはっきりとしてきた以上、お互いの資質を生かすために必要な、前向きな別離なのである。
(文=NAVI鈴木真人/写真=河野敦樹/2005年11月)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。