マツダRX-8【試乗記(前編)】
執念の4シーター〜RX-8試乗報告(前編) 2003.04.10 試乗記 マツダRX-8(240.0-275.0万円) “ワールドワイドに待望の(!?)”ロータリースポーツが帰ってきた。「マツダRX-8」。フル4シーターにして、210/250ps。しかも、240.0万円からという魅力的な価格が設定されて……。『webCG』記者が、ツインリンクもてぎで乗った。ふたりの仲を裂かんばかりに
栃木県は「ツインリンクもてぎ」のピットロードには、「マツダRX-8」が並んでいた。さっそくそのうちの1台のドアを開け、後席に座ってみる。
うーん、ちゃんと座れるじゃないか!
新しいロータリーモデルのコンセプトは、「NEW 4 Door Sports for 4 Adults」。大人4人が乗れる4ドアスポーツ、ということは、つまり世のオトウサン(クルマ好き)が、家族に言い訳しないで購入できるスポーツカーということで、豪気なヨメなら弱気なダンナのことなんて考えないで、ポン!とスポーツカーを買ってしまうから関係ないけれど、まあ、なにはともあれ、コンセプトに違わない生産車がラインオフされて、めでたいことである。
ちょっと、疑っていたんですね、ホントは。“フル4シーター”と謳ってはいるけれど、実は“プラス2に毛が生えた”程度なんじゃないか、と。
実車のリアシートは、クッションしっかり、座面がことさら落とし込まれていることもないし、膝前のスペースも十分。足先がすんなり前席の下に入るのもいい。バックレストはやや寝かされているけれど、不自然なほどではない。
……といった実用面とはうらはらに、後席のふたりの仲を裂かんばかりに縦断するセンタートンネルが、すごい。さすがは4シータースポーツ。RX-8、後席だけでもただ者ではない。
コンパクト?
リポーターをひどく疑り深くしていたのが、RX-8のコンパクトなキャビンである。
ニューロータリースポーツ全体のフォルムは、前後のオーバーハング(タイヤより前後にはみだす部分)が切りつめられた、きわめて現代的かつスポーティなものだ。「トヨタ・カローラ」より70mm長いだけの4435mmの全長に、居住スペースを最大限確保すべく「同プレミオ/アリオン」と同じ2700mmのロングホイールベースが与えられた。
一方、サイドのウィンドウグラフィックスが工夫され、特にリアドアの窓面積を小さくすることで、居住部をグッと凝縮して見せる。実際には、太いCピラー、初代コスモスポーツにオマージュを捧げたリアガラスまでがキャビンで、ルーフラインも印象ほどには後ろに向かって下がっていない。十分な容量を得ながら、カッコ悪くなっていない。マツダのデザイナー、頑張ったなぁ。
限られたパイ
後席への乗降性のために大きなドアを設定すると、スタイルが間のびしてしまう。その解決策、RX-8のスタイリングを成立させたキモが、いうまでもなく、センターピラーをもたない観音開きの「フリースタイルドアシステム」である。単に奇をてらったものではない。
剛性確保および側面衝突への対応のため、ボディ側面、開口部まわりにグルリと、また、リアドア内部にもピラー代わりの補強材が入れられた。そのための重量増は、リアドアをアルミ化することで抑えられた。フル4シーターをスポーツカーらしくするのも楽じゃない。
RX-8の後部座席に座っていると、さまざまな考えが湧き上がってくる。太いCピラーゆえ、絶対的なスペースとは関係なく、閉塞感が強いからだ。考えごとに最適。フロントドアを開けないと、後ろのドアは開かない。つまり、自分ひとりでは出られない。子供が勝手に飛び出さなくていい、ともいえるが、それでは“4アダルツ”のコンセプトに反する。もしや、最初のボタンをかけ違えたのでは、と思わないでもないが……。
以前、オペルでカーデザインに従事している児玉英雄氏が、自動車専門誌『NAVI』の連載で、4ドアクーペを標榜した「ランティス」とRX-8を並べて描いて、「マツダのなかには、“4ドアクーペ”というコンセプトにこだわっているヒトがいるのでは……」と書いていらした。たぶん、広島の自動車メーカーには、スポーツカー好きの“含有量”が異例に高いのだろう。ミニバンでもファミリーカーでも、なんとかスポーツカーにしたい。一定のパイ以上にならない趣味性の強いマーケットを、どうにかしてビジネスと結びつけたい。そんなエンジニアの執念が、RX-8に結実したのでは……と考えているうちに、『webCG』の試乗車が戻ってきた。(つづく)
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2003年4月)
・マツダRX-8【短評(中編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013096.html
・マツダRX-8【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013097.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。