クルマ好きは二度おいしい

『ニュー・シネマ・パラダイス』の成功には及ばないが、ランチアといえば、もうひとつ印象的な映画があった。2003年の『Rocordati di me』である。日本語なら「覚えてる? 私のこと」といった意味だ。

倦怠(けんたい)期に入った夫婦の物語で、女優になる夢を諦めて結婚した妻ジュリアが、勤務先の高校との往復に使う通勤車は、シルバーの初代「フォード・フォーカス」である。いっぽう、若い頃小説家を目指していた夫カルロの前に突如現れる昔のガールフレンドは、作品発表の1年前に発表されたばかりのランチアのミニバン「フェドラ」に乗っている。この役はかのモニカ・ベルッチが演じている。

生活感漂うフォーカスと、たとえミニバンでもどこか妖艶(ようえん)な香りのするランチアというコントラストが絶妙だった。かくもクルマ好きは、たとえ外国映画であっても、その内容を2倍楽しめる。

同時に、iPhoneを見ればわかるように、社会階層による所有物の差がなくなりつつある今日において、スクリーンの中のクルマの役割が、どのように変化してゆくのかも、ボクとしては目が離せない。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

初代「フォード・フォーカス」
(写真=フォード)
初代「フォード・フォーカス」
(写真=フォード) 拡大
「ランチア・フェドラ」
(写真=フィアット)
「ランチア・フェドラ」
(写真=フィアット) 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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